別冊☆大阪百科☆ニュース6 - 1370094026

1645：名無しさん：2019/06/04(火) 08:11:14 ID:qyBlkDVA0: 大阪からコアラいなくなる？　高すぎるエサ代、予算圧迫
2019年6月3日
https://digital.asahi.com/articles/ASM5R4H82M5RPTIL017.html?rm=771

　大阪の動物園で、コアラを見られなくなるかもしれない。府内で唯一飼育する天王寺動物園（大阪市天王寺区）が、１２歳のオスの「アーク」を最後に飼育をやめるためだ。えさ代が高く、繁殖も難しく、各地の動物園でもコアラが減り続けている。

　５月２８日午前９時過ぎ。開園に合わせ、飼育員がコアラ館の屋外展示場への扉を開けた。「おはよう」。声をかけると、室内の木の上で休んでいたアークは、上を向いて何度も鳴き声をあげた。「オーッ、オーッ」。耳を広げ、周囲に危険がないかを確認しながら木を下り、ユーカリが茂る屋外へ歩いていった。

　昼間は木の上でほぼ動かず、寝てばかり。でも、走ったり、木から木に飛び移ったりすることも。コアラ館は園内でも人が絶えない人気スポットだ。飼育員は「風が強い日も揺れる木の上で平然と寝ています。そんな姿を実際に見れば、忘れられないでしょう」。

　天王寺動物園でコアラの飼育が始まったのは１９８９年。オーストラリアに生息するコアラは体が大きい「南方系」と、体が小さめの「北方系」の２系統あり、大阪市の姉妹都市であるメルボルンから「南方系」の３頭が贈られたのがきっかけだ。繁殖にも成功し、９５～９９年のピーク時は９頭を飼育していた。

　だが、２０１０年に「スピカ」（４歳）が死ぬと若いメスがいなくなり、繁殖協力で国内外への貸し出しや病死が相次いだ。同園で生まれ、繁殖が期待された「タラオ」が１３年に３歳で病死すると、１５年には２２歳の「クミ」と２３歳の「ミク」が、１６年には１９歳の「アルン」も死に、アークだけが残った。

　開園１００周年を迎えた１５年８月、園を管理する大阪市建設局は今後の方向性を示した基本構想の中で、コアラについては維持困難と判断し、自然減による撤退を決めた。撤退の引き金となったのは、えさ代の高さと繁殖の難しさだ。

　コアラはユーカリしか食べない。偏食や悪天候を考慮し、複数の栽培地を確保する必要があり、園は大阪府内、和歌山、鹿児島県の３府県の企業や造園業者などに委託し、約２０種類を栽培している。園の動物全体のエサ代は年間約１億２千万円（昨年度）。そのうちコアラのエサ代は３割の約３６００万円に上る。

　「北方系」と「南方系」のコアラで食べるユーカリの種類も異なり、一緒に飼育するのは困難で、同系統との交配が望ましいとされる。同じ「南方系」を飼育する淡路ファームパーク（兵庫県南あわじ市）や香港の動物園などとコアラを貸し借りしてきたが、年齢や環境、相性もあり、天王寺動物園では０９年を最後に繁殖に成功していない。今後もうまくいくとは限らず、繁殖は目指さず、アークが最後のコアラとなる見通しだ。

　園の基本構想を検討した有識者会議で座長を務めた元園長の宮下実さん（６９）は、コアラの飼育を始めた当初、豪州との交渉や飼育の体制づくりを担った。コアラの撤退について、宮下さんは「残念だが、えさ代や繁殖の問題を一時的に切り抜けても飼い続けるのは難しい。撤退するのも一つの決着だ」と話す。

　一方、園にはコアラの飼育をやめないでと求める声も寄せられている。２カ月に１度はアークを見に来るという横浜市の会社員都築英哲（ひでのり）さん（４９）は「たとえ雨の日でも、屋外で姿を見られるのは天王寺ぐらい。お金がかかるから飼育をやめるなんて納得できない。考え直してくれないでしょうか」と話す。

　今のところアークに衰えはないが、コアラの平均寿命とされる１５歳前後が近づく。飼育に携わってきた獣医師の西岡真（しん）さん（５０）は「長生きして訪れる人を癒やし、動物の暮らしや環境問題に関心を持つきっかけを与えてほしい」と願っている。（富岡万葉）

２０年でほぼ半減
　コアラは豪州にのみ生息する。夜行性で生まれたばかりの子どもを母親のおなかにある袋で育てる。日本では１９８４年、多摩動物公園（東京都）など３園がコアラの飼育を始めた。日本動物園水族館協会によると、国内の飼育頭数が最多だった９７年には９園で９５頭を飼育していたが、昨年１２月現在で８園の５０頭にほぼ半減している。

　沖縄こどもの国（沖縄県）は２０１０年１１月に１６歳のメスが死んだのを最後に撤退。ユーカリは外部調達せずに園が自前で栽培し、管理が大きな負担となっていたという。担当者は「コアラと接するよりユーカリの管理に時間を取られていた」と振り返る。

　野生のコアラは、豪州全土で減少。国際自然保護連合（ＩＵＣＮ）は、コアラを絶滅危惧Ⅱ類（絶滅の危険が増大している種）として、レッドリストに指定している。