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世界の終わりは明後日の方向へ
1
:
きんけ
:2009/01/01(木) 23:20:09
何てことのない元旦。
僕は自分の部屋で、布団に寝転がりながら小説を読んでいた。窓から差し込む陽光はとても優しくて、暖房を使っていないこの部屋を過ごしやすい環境にしている。
パラリと頁を進めて僕はふと時計を見る。今まさに短針が頂上へと登り詰めようとしていた。特に感情を抱くこともなく読書を再開するために頭を下げた。
一年の始まりの日は、まるでその日だけ別次元にいるかのように静かだ。ここ一時間、家の前の道路を通過する車は一台もなかった。
交通量の確認を耳で確認してしまうほどに僕は読書に集中していなかったのだ。慣れない静寂は意味もなく色々な物事について気にしてしまう。
やや釣り上った赤のフレームの眼鏡を顔から外すと、疲労した眼をぎゅっと瞑って顔を枕に埋めた。ほんのりとシャンプーの匂いがした。
しばらく、そのまま眼を休めていると暗闇の僕の世界に入り込んできた電子音。町役場から流されているそれは町内の各所に設置されているスピーカーから聞こえている。
もうお昼の時間なんだなあ。と僕は思った。
正午のサイレンには魔法がかかっていると僕は本気で信じている。あのサイレンを聞くと腹の音が鳴り出してくる。
ほんの三十分前には煎餅の一枚も口に入れたくなかったのに、今やラーメンを一杯食べても物足りなさを感じてしまうかもしれない。
腹は減ったが昼を用意するのは面倒だ。このまま寝てしまおうかなあと思考していると、再び僕の暗闇の世界に割り込んできた電子音。玄関から誰かがインターホンを押したのだ。
無視してしまおうかと考えたが、年始からそれは相手にも悪いのでおもむろに立ち上がると眼鏡もかけないで玄関へと歩いた。
サンダルを履くのに手間取っている間にも、相手がインターホンを押している。急かされているようでいい気にならず、はいはいと不機嫌に呟きながら解錠して扉を開けた。
扉が開くと、ぶわぁと強風が家の中に侵入。目を細めながら玄関先を見たが、そこには誰もいなかった。
足もとにポツリと置かれた長方形の箱。静寂の中、世界の存在は僕と箱だけになった。
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