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藤嶋昭 掲示板 ノーベル化学賞

5藤嶋昭 掲示板:2012/10/09(火) 20:44:30
表面科学
Vol. 24 (2003) No. 1 P 1

巻頭言 静かに考える時間を持とう
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsssj/24/1/24_1_1/_pdf

藤嶋昭 東京大学大学院工学系研究科
公開日 2009/01/11

最近,世の中一般があわただしい雰囲気に包まれている。時間に追われている感じがする。
携帯電話をほとんどの人が持っているし,メールを読み,打つためにパソコンの前に座ってい
る時間がいかに長いことだろう。
筆者が司馬遼太郎の本を読んで感動したことの一つに,若い日の吉田松陰の古い書物に対す る熱情があった。長州から徒歩で九州の各地の先達を訪ね,所有する書物を一夜借りてきて, 旅館でその夜のうちに書き写してしまう熱意である。江戸末期でなく,つい 50 年ほど前の研 究者はどうであったのだろうか。Fax もなければコピー機もない。貴重な本はすべて書き写し ていたわけである。筆者自身のことを考えても,昭和 40 年代初めの大学院生のとき,まだま だゼロックスは貴重で図書館にしかなく,そこにいる専門の方にお願いして,2~3 日後に受 け取る制度であった。だから文献を自分でコピーする時は図書室から雑誌や本を借りてきて研 究室の暗室で写真を撮り,焼き付けていた。これをもとにジアゾコピーでコピーし,輪講のと きの資料にした。当時と比べて現在は,資料を作るのが確かに速くなり,便利になり,しかも きれいになった。しかし便利になった分だけ,以前よりも報告内容が充実しているのであろう か。
今,一番必要なことは,静かに,ゆっくりと考える時間を持つことではないかと思う。一昔
前の先生方に比べて,今の研究者は比較的多くのオリジナル論文を書いているのではないかと
思う。しかし,インパクトのある,重みのある論文がどの程度の割合を占めているのであろう
か。今の時代に生きている我々は,便利さだけを利用するのではなく,ゆっくりと落ち着いて
考える時間を優先させる必要があろう。
大学院重点化などで大学院生の数も増してきた。それに伴い大学院教育の充実の必要性が叫 ばれている。20 代の 2 年から 5 年間という一番大事な時をぜひ実りある時としてほしいもの である。特に一つのことだけに没頭できるこの時こそ,ゆっくりと,しかも時に深く考えても らいたい。
定年前のたそがれ人生の筆者にも,一番好きな時はいつですかと聞く人がいる。アメリカや
ヨーロッパに行くときの飛行機の中や現地で時差のため眠れない時です,と答える。ゆっくり
と静かに考えることができる時を探すのも大変である。


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