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怖い話Part2

1名無しさん:2013/04/11(木) 20:47:22 ID:kJlroZZA0
霊的な怖い話を集めてみましょう

前スレ
http://jbbs.livedoor.jp/study/9405/storage/1209619007.html

290枯れ木も山の賑わい:2013/06/27(木) 01:04:49 ID:kIfH4iNs0
藍さん、新作乙です。

291枯れ木も山の賑わい:2013/06/27(木) 01:43:37 ID:kIfH4iNs0
掌編とは「短いお話」というほどの意味でしょうか?でも、凄く興味深いお話です。
ハートのAの4カード、当然R君自身が有り得ない役だと気付いていますね。
しかし、SさんがハートのQをめくって完成したハートのロイヤルストレートフラッシュが
Sさんの術によるものなら、この術は最初から2重構造。

呪物だった力の残滓を利用しながら、このトランプを祝福されたアンティークへと変化させる。
どんな人も物も、決して雑に扱うことのない、いかにも、Sさんらしい術。本当に素敵ですねぇ。

292名無しさん:2013/06/27(木) 02:52:22 ID:k/bWlXv60
藍さん
お忙しい中、投稿ありがとうございます。
知人さん
毎回、話に引き込まれています。
今後も、無理をしない範囲で、よろしくお願いしますm(_ _)m

293名無しさん:2013/06/29(土) 11:15:01 ID:U0qBlWKUO
昔の術師はトランプでなく花札でこれをやってたんでしょうね。梅に鶯のフォーカードとか…。

294名無しさん:2013/06/30(日) 12:04:16 ID:7Nd6kNRs0
精神干渉の力が強かったKさん

Sさんの今回の術は、本来のRさんとKさんの戦いだった可能性を示唆している

記憶や感情を入れ替えることが出来る攻撃の可能性もあったのだ。

RさんどんだけイケメンなのよWWW

295名無しさん:2013/06/30(日) 23:27:35 ID:7HSyv42Q0
 「出会い(下)」、Kさんの最後の干渉と、Rさんの対応は印象的な場面です。
記憶や感情を入れ替える攻撃を予想し、Sさんは反撃の準備をして罠を掛けていた。
しかし、Kさんは術士としてでなく、ただ、1人の女性としてRさんに会いたかった。
だから、Sさんには反撃の方法が無かった。

 もし、Rさんが「行くよ、一緒に。」と言わなかったとしたら、結末は変わったでしょうか?
Rさんなら、必ずそう言ったと思うし、それがRさんが「心の」イケメンである所以でしょう。
でも、読み返す度に、そう考えてしまうのです。もしも、と。

 さて、この一族が「生きている存在」に対して使う術は、ほとんど精神に干渉する系統ですね。
その術の詳細が一部明らかになったと言う点で「呪物」は私にとって重要な作品です。
藍さん、知人さん。次回作、心から期待しています。

296黒い瞳:2013/07/01(月) 00:12:18 ID:.LmJ2Sko0
不思議な体験をした
オチはない
たまに思い出すので文章にして
曖昧な記憶を確定して残したいから
書かせて下さい

創作じゃなく実体験です

社会人になって結婚して
5年ほどたった頃

妻と近所の家電量販店に出かけた
163号線の近くで
駅で言えば京阪線の古川橋駅

妻が商品を物色している間
私は特に見る物も無く手持無沙汰に
突っ立っていた

私の目の前には電池が並んでいて
棚の一番下の段には
安い電池が無造作にカゴに入っていた

私の足元でそのカゴを覗きこんでいる女の子がいた
見た感じ小学校1年生くらいかな
歳で言えば7歳くらいの女の子

その子が急に顔を上げて
私を覗きこむように見上げて
ニッコリと笑った
本当に楽しそうな顔で私に笑顔を見せた

私は大人なので
笑顔を返してやるべきだったんだけど
それが出来なかった
その事は今となっても後悔している

297黒い瞳:2013/07/01(月) 00:14:54 ID:.LmJ2Sko0
その子は障害持っているようだった
ご両親と一緒に来ていたんだけど
言葉をちゃんと話せていない

本当に可愛らしい顔をしていた
でも
笑顔を向けられた時
私は気持ちの悪い物を見たという
驚きのような嫌な表情で
その子を見てしまった
本当に後悔している

その子の目はとても大きくて
白目がなかった
大きな目の全てが黒い瞳だった
ドキっとして
咄嗟にそんな表情を返してしまった

それから3年ほどたった頃

298黒い瞳:2013/07/01(月) 00:15:53 ID:.LmJ2Sko0
私は梅田駅ビルの前の国道を挟んで
向かい側のビルで働いていた

たぶん春だったと思う
大雨が降っていた
私は階段に出てその雨を眺めていた
すると一人の女性が目に入った
服装から見て20代くらいなのかな
大雨が降っているのにもかかわらず
傘をささずに濡れていた

ありえないと思った
5mも移動すれば駅ビルの下の
雨にかからない場所に移動できるのに
濡れて突っ立っていた

不思議に思ってしばらく見ていたのだけど
どんな人か見たくなって
傘をさして見に行った
横を素通りする時に
足を止めずに少し顔を見てやろう

299黒い瞳:2013/07/01(月) 00:17:00 ID:.LmJ2Sko0
そう思って近付いて行った
身長は160cmくらいかな

そして通り過ぎる瞬間その女性の顔を見た
その女性も私の顔を見た
とても嫌な表情で私を見た
大きな白目のない黒い瞳で私を見た

3年前に出会った7歳くらいの女の子
見た感じは20歳くらい
顔の雰囲気もその面影があった
間違いないと思った

私はびっくりして
そのまま通り過ぎたのだけど・・

謝れば良かった

3年前
優しく微笑んで返してやればよかったな

常識で考えたら偶然の出来事なんだろうけど
そうは思えなくてね・・^^;

300名無しさん:2013/07/01(月) 20:48:13 ID:FrsYbEU.0
テスト中

301名無しさん:2013/07/01(月) 20:48:54 ID:ameq0zS60
テスト待ち中

302 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/01(月) 20:49:56 ID:FrsYbEU.0
 皆様、こんばんは。藍です。
折角コメントを頂きながら、多忙のため反応できず申し訳ありません。

>>296
 最近アメリカの都市伝説として多くの目撃談があるという
『Black Eyed Kids』は日本にもいるのでしょうか?
3年前だとすると2010年、本家アメリカより12年ほど遅れて
日本でも目撃されたことになりますね。
3年で10歳分くらい成長するという記述は初見で興味深いです。
もし、他にも不思議な話がありましたら書いて下さいね。

>>コメントを頂いた皆様
 多様なコメント、心から感謝致します。
個別のコメントを控えざるを得ないと判断したのは、皆様の考察が
物語の深い部分に達しており、個別のコメントをすることが、むしろ
皆様の楽しみを阻害すると思うからです。

 ただ、一言、「2011年末」の作品について。この作品は
皆様の考察通り、これらの作品が「備忘録」の体裁で書き始められた
理由を説明するものであるとともに、これらの作品の完結編です。
事実に基づくという設定上、物語の年代が現在に追いつく筈はありません。
ちょっと寂しい気もしますが、必ず『終わり』があります。
ただ、私は『呪物』以降、『完結編』に至る作品は未だ読んでいません。
今後の作品を楽しみにする気持ちは皆様と同じです。

303名無しさん:2013/07/01(月) 20:52:19 ID:ameq0zS60
さあ・・始めようか。記憶と感情の真実の物語を

304 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/01(月) 21:09:09 ID:FrsYbEU.0
>>301
 本当に驚きました。術者の方ですか?

 さて、長文失礼致します。
これまで知人の説得と相談を重ねて来ました。
物語の今後を期待して下さる方々がいると伝えてきた甲斐があったのか、
取り敢えず新作の掌編を送付してくれることになりました。引き続き
どうしても公開できない障りのある作品と現在未完成の作品を除き、
投稿できるよう説得を続ける予定です。
新作の投稿時期は未定ですが、
原稿が届き次第なるべく早く投稿出来るよう頑張ります。
暫くお待ち下さい。

305名無しさん:2013/07/02(火) 00:24:02 ID:0eglPcaw0
知人さん藍さん
楽しみにして待ってます。
無理をなさらず、また面白い物語を読ませてください。

306名無しさん:2013/07/02(火) 06:27:01 ID:WXj7hwEQ0
知人さん藍さん有難う〜(TT)

307名無しさん:2013/07/02(火) 09:47:57 ID:PMMotL7g0
終わるのは寂しいけど無理矢理引き延ばすと幻滅しそうだしなぁ

308名無しさん:2013/07/02(火) 12:52:23 ID:WXj7hwEQ0
>>304

いえいえ、たまたまF5で読み込みしなおしただけです。普通に毎日ここをチェックしてます

少し待って、物語の投稿が続かないようだったので「テスト待ち中」と投下してみました。

これは縁=偶然です。

どうですか?私のこの物語への「ファン力」WW

309名無しさん:2013/07/02(火) 19:43:03 ID:a43YguJU0
そいそい

310 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/03(水) 20:53:51 ID:Fvja4KC.0
 皆様、今晩は。藍です。

 本日原稿を受け取りました。相変わらず季節外れですが
私にとっては印象に残る、大切な作品になりそうです。
今日は仕事が休みだったので作業も思いの外捗りました。
週末までの投稿を目指しております。今暫くお待ち下さい。

311名無しさん:2013/07/03(水) 23:15:23 ID:Zf3xsq4o0
wktk

312名無しさん:2013/07/05(金) 00:19:36 ID:uolf6pWI0
うーん、今思ったけど、思い出の人になるのはやっぱりSさんかなぁ。

翠ちゃんを生むときの代償が実は本当に半端なくて、Rさんに本当の事言えなかったとか

そんな展開の気がする

だとすればKさんにトドメを刺したのはSさんかもね

313名無しさん:2013/07/05(金) 18:52:38 ID:7ZYL5W1M0
テスト中

314『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 18:54:01 ID:7ZYL5W1M0
 『名残雪』

 「じゃ、L、しっかりね。R君も、Lの事頼んだわよ。」 「ばいば〜い。」
姫と俺を駅前に残し、Sさんと翠を乗せた車が遠ざかっていく。
「Rさん。3日間、宜しくお願いします。」 姫が礼儀正しく頭を下げた。
「いや、こちらこそ宜しくお願いします。ちょっと頼りない付き添いですけど。」
話は一月程前に遡る。
その時妊娠6ヶ月目に入っていたSさんは春休みとゴールデンウィークの旅行を
パスすると決めていた。もちろん姫と俺も旅行はしないつもりだったのだが、
Sさんが『久し振りに2人きりで行って来なさい』と言うので、
春休みの3連休に合わせて二泊三日の小旅行を計画することになった。
その旅行先を探していた姫が『夜行列車に乗ってみたい』と言い出したのだ。
「列車の中で眠るなんて楽しそうですよね。朝靄の中で到着すると、きっと良い風情です。」
それはまあ、間違いなく姫は俺より先に寝てしまうし、俺より後に起きるのだけれど。
早朝のホームには酔っぱらって寝てるおじさんがいたりで、風情があるとは限らない。
「僕はホテルとか旅館が良いですね。列車だと切符買うのが面倒だし。」
「そう言えば、列車の切符って、やっぱり駅で買うんですよね?」

315『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 18:55:34 ID:7ZYL5W1M0
 俺とSさんは顔を見合わせた。
「Sさん、もしかしてLさんは。」 「確かに、Lは一度も乗ったことないわね。列車。」
お屋敷の近くには駅がない、自然と移動手段は車中心、いや100%車だ。
仕事も、買い物も、姫の送迎も。 変わるとすれば車種だけ。ロータスとマセラティ。
「今の生活なら特に何の不都合も無いけど、丁度良い機会。」
それでこの週末、金曜からの3連休に合わせた小旅行は、
姫の特訓を兼ねた列車での旅と決まった。
Sさんが決めた行程に沿って列車を乗り継ぎ、かなりの長距離を移動する。
途中、Sさんに頼まれた用事を済ませるミッションも用意されている。
もちろん地図と時刻表を頼りに姫が切符を買う。俺は一切口を出さない。
俺の任務は姫のボディガード(不要かも知れないが)。
3月も下旬、さすがに雪の予報は出ていないようだが、予想気温がかなり低い場所はある。
その日の最終目的地で宿泊先を探す行き当たりばったりの旅。
初めて行く場所ばかりだし、移動に手間取れば宿泊先がどうなるか予想出来ない。
まさか駅のベンチで夜明かしなんてことにはならないだろうが、
なかなかに緊張感のある旅行が始まった。

316『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 18:56:42 ID:7ZYL5W1M0
 最初からある程度予想していた通り、一日目、3本目の列車に乗る頃には、
姫は時刻表の見方や切符の買い方、乗り継ぎの要領をすっかり憶えてしまった。
「ちょっと行って聞いて来ます。」 勿論俺が口を出さなければ反則では無い。
そりゃ窓口に姫のように綺麗な女性が聞きに来たら、職員もさぞかし張り切るだろう。
しかも姫は演技派、『昨日沖縄から出て来て乗り方が分からないんです』と設定が細かい。
暫く窓口で話し込んであれやこれやと教えてもらい、推薦の駅弁まで聞いて来たらしい。
「このお弁当、美味しいですね。」 「列車の旅行は駅弁に限ります。」
運転しなくて良いから、気楽な俺は熱燗にした缶入りの日本酒を買って良い気分。
不安な旅の筈が、優秀な美人ナビゲーター付きの気楽な旅に早変わり。もう最高。
観光地を回る旅程ではないので列車は混んでいない。乗車率は50%といったところ。
姫は窓の外の景色や他の客の様子を興味深そうに眺めていた。
4本目の列車はローカル線、今夜の宿泊先は小さな地方都市。
駅前の繁華街でシティホテルやビジネスホテルをあたれば多分空室があるだろう。

317『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:00:05 ID:7ZYL5W1M0
 目的の駅に到着したのは15時27分。休日の午後、ホームはまだ閑散としているが、
ちらほらと学生っぽい姿が見える、部活か塾の帰りだろう。
あと2時間もすれば休日出勤した会社員の姿も増える筈。
「Rさん、私いつも思うんですけど、どうしてみんなイヤホンをしてるんでしょう?
私の大学の学生達もそうだし、この街の学生も同じです。」
確かにベンチで列車を待つ学生も、ホームを歩く学生もイヤホンをしている。
大袈裟なヘッドホン姿も見える。 そうでなければケイタイでお話中。 時折聞こえる笑い声。
「う〜ん、音楽が好き...いや、きっと暇潰しじゃないですか?」
「私、Rさんに送ってもらったあと、遠回りして、学部まで10分くらい歩くんです。
短い時間ですけど、その間でも色んなものを見たり音を聞いたり、とても楽しいです。
季節が変わって鳥の鳴き声が聞こえたり、咲いている花の種類が変わったり。
今日も世界は綺麗だなあって、全然退屈しないのに。あの人達は耳も目も心も
自分の中にだけ向けて、外の世界を見ないし聞かない。何だか勿体ないですね。」
胸の奥がきゅっと痛くなる。そっと姫の肩を抱き寄せた。
「お願いですからそんな事言わないで下さい。Lさんが生き急いでいるようで不安になります。
毎日毎日実感しなくても、この世界で綺麗です。もっといい加減で良いじゃないですか。
仕事や勉強で疲れていたら自分の殻に閉じこもるのも仕方ないし、
好きな音楽を聴きながらだと、景色もまた変わって見えるかも知れませんよ。」

318『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:02:16 ID:7ZYL5W1M0
 姫は優しく微笑んだ。
「私の、悪い癖かむ知れませんね。あとどれだけ、自分が自分でいられるだろうって
考えていた時間が長過ぎたから、つい急いでしまうんです。
明日も明後日も、家族みんな一緒で幸せな日々が続くなら、
もっとのんびり、ゆっくりしても良いんですよね。」
「そうです、人生はこれから、もっとずっと長いんですから。」
手を繋いでホームを歩く。二度目の、2人きりの旅行。Sさんの配慮が胸に染みる。
駅の構内にアナウンスが流れた。 「2番線に電車が参ります・・・」
2番線の停車位置は30mほど先、俺たちの背後から微かに地面の震動が伝わってくる。
もう少し歩いたところで、異変が起こった。
「あ。」 「あれ。」
いつのまにか、俺達の前数mの所に2人連れの姿。女性と男の子、親子だろうか?
すぐ傍のベンチに座っている学生も2人に気付いた様子はない。間違いなくあれは。
暫くして電車がホームに滑り込んできた、その瞬間。
女性が男の子を抱き上げたかと思うと電車の前に飛び込んだ。思わず息を呑む。
しかし、何の音も聞こえず、他の客の様子にも変化はない。
しばらく歩いて停車した電車の前を覗く、電車にも線路にも異常はない。やはり、幽霊。
「Rさん、今日泊まるホテル、多分大丈夫ですよね。」
「はい。ここから見えるだけでも、ビジネスホテルの広告、いくつかありますから。」
姫はホームの時刻表を確認し、メモを取った。
2番線のホーム近くに戻り、さっき学生が座っていたベンチに腰掛ける。
「次の電車は15時42分。もし同じ路線の電車だとしたらその次、49分です。」

319『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:03:42 ID:7ZYL5W1M0
 42分の電車が入って来た時は何の変化も無かった。
学生達の姿が少し増えたように見えるが、まだ人の数はそれ程多くない。
電車は問題なく停車し、そのまま出発していった。
そして47分を過ぎ、電車の到着を知らせるアナウンスが流れる前に、それは現れた。
女性と小学生くらいの男の子、2人の後ろ姿。俺達の目の前、1mほどの距離。
鍵を掛けず、目を閉じて感覚を拡張し、その『存在』から伝わってくる気配に集中する。
悲しみか、あるいは憎しみか。 同調することが出来れば手かがりが得られるはず。
それは、声。微かに聞こえる2人の会話。

「・・・・に そ・・・ら みた・・たね。」
「ごめ・・ ・か・さんが しっかり・てな・・たから こわ・・い?」
「だいじ・・・ ぼく おかあさん・だいす・だか・ ・つま・もいっしょだよ」
「・りがと・ でも ・の・・・ ・せて あげたかった。」

 先刻と全く同じように、女性は男の子を大切そうに抱き上げて、
ホームに滑り込んだ電車の前に飛び込んだ。
激しい感情の爆発、意識が飲み込まれそうになるのを必死でこらえる。
次の瞬間、気配は突然消えた。 今まで通りのホームの風景。

320『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:04:51 ID:7ZYL5W1M0
 「やっぱり、現れましたね。」 「それほど古くありません。多分、ここ2・3年です。」
「あの会話、はっきり聞き取れなかったんですが、Lさんは?」
「いいえ、会話の内容は全く。会話だとしたらRさんの領域ですね。
私はちょっと男の子の意識に集中し過ぎてしまったかも知れません。」
やはり姫も伝わってくるのが会話だとは思っていなかったのだろう。
でも、もう一度チャンスがあれば、最初から会話に絞って探知出来る。
もしかしたら、あの親子をこの場所に縛り付けているのが何なのか、分かるかもしれない。
それから約一時間、ベンチで待ち続けたが、2人の姿は現れなかった。
「Rさん、明日の予定なんですけど。」
「分かってます。明日も、この街に泊まりましょう。
あの2人、とても気になります。そのままにしてはおけません。」
「はい。後でSさんにも、電話しておきます。」
「じゃこの件については、今日はこれでお終い。折角2人きりの旅行ですから。」
「あとは宿探しですね。私、Rさんと一緒なら、どんなところでも平気です。」
「僕は出来るだけ綺麗なホテルが良いですね。こう見えても、都会派の軟弱者なので。」
姫は小さな声で笑った。
「嘘つき。魚釣りも料理も、あんなに上手なのに?」

321『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:08:29 ID:7ZYL5W1M0
 ふと、目が覚めた。ベッドの中に姫がいない。
姫は窓際に立ち、少し開けたカーテンの隙間から窓の外を見ていた。
窓から微かに差し込む街の灯りが姫の顔を照らしている。
この人はいつもそうだ。とても美しくて、でもどこか儚げで。
婚約者だし、身体を重ねたこともある。俺を愛してくれているのも痛い程分かる。
しかし、姫のことを深く知る程、いつか俺の前から消えてしまうのではないかと不安になる。
本当の姫はまだ俺の手の届かないところにいるような、頼りない感覚。
舞を奉納した時に姫が感じていたという不安が、俺にも伝染したのかも知れない。
俺の前で舞を見せてくれた姫は、羽衣を着て軽やかに舞う天女のように見えた。
いつか、羽衣を着て天に帰っていく伝説の天女。
いや、それじゃ駄目だ。この人と離れるなんて考えられない。
「あの親子の事を考えているんですか?」 「はい、男の子の事を。」
「身体が冷えてしまいますからベッドに戻って下さい。」 「はい。」
姫は戻ってきてベッドに潜り込んだ。そっと、抱きしめる。少し冷たい、細い身体。

322『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:09:28 ID:7ZYL5W1M0
 「『男の子の意識に集中し過ぎた』と言ってましたよね?」
「あの時、男の子の意識に、不安や恐れを全く感じませんでした。それが不思議で。」
「これから電車に身を投げるというのに、ですか?」
「それどころか母親が抱き上げた時、男の子の溢れるような喜びを感じました。
翠ちゃんがSさんに抱き上げられる時に感じているような、純粋な喜びです。」
「それ程にあの子は母親を愛し、信頼していたということですね。」
「心中を選ばざるを得ない事情。生活は苦しかったはずなのに、
あの母親は毎日精一杯の愛情をあの子に注いでいたんでしょうね。」
突然姫の頬を涙が伝った。 「私。」
胸の奥が痛む、やはりこの人は。枕元のティッシュペーパーで姫の涙をそっと拭う。
「どうしたんです?話して下さい。」 姫は小さく頷いた。
「私、あんな風に子供に愛情を注げるでしょうか?
自分の子供にあれほど信頼される母親に、なれるでしょうか?」

323『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:10:44 ID:7ZYL5W1M0
 姫は以前も口にしたことがある。
両親の顔さえ知らない、そんな自分が親になった時、
自分が産んだ子を愛せるのかどうか分からないという不安。
翠を溺愛し、喜々として世話をする頬笑ましい様子を見て、
すっかりそんな不安は消えたものだと思っていた。
しかし、それはあくまで『Sさんが産んだ子』を愛したのであって、
自分の産んだ子を愛した訳ではない。
翠を溺愛すればするほど、姫の不安は大きく、深くなっていったのだろう。
迂闊だった。
「Lさん、質問があるんです。」 「何ですか?」
「Lさんは裁許を受ける時、術者になれるかどうか不安でしたか?」
「...いいえ、自分に力があるのは分かってましたし、あとはどんな術者になるかだけで。」
「母親も、同じじゃないかと思うんです。」 「母親と術者が、同じ?」
「どちらも自ら選んで『なる』ものです。『なれるかどうか不安を感じるもの』ではありません。
Lさんに女性としての能力があるのは分かってます。僕という婚約者もいます。
あとはどんな母親になるかをしっかり考えれば良いだけですよ。第一。」
俺は姫の額にキスをした。少し照れくさいが、姫の目を真っ直ぐに見つめる。
「普通の方法だと、避妊の成功率は100%じゃありません。
もしかしたら今夜、Lさんは母親になったかも知れないんです。」
「もし、今、子供を授かったら...悩んでる余裕なんてありませんね。」

324『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:12:05 ID:7ZYL5W1M0
 右手でそっと姫のお腹に触れる。
「ここに、僕たちの子供がいるとしたら、どんな気持ちでしょうね?」
「きっと、すごく嬉しいです。」 姫は左手を俺の右手に重ねた。
「毎日毎日、お腹をさすって、話しかけて。」 姫の笑顔は明るかった。
「そんな感じで良いんじゃないですか?あんまり真剣に考え過ぎると疲れちゃいますよ。」
「そうですね。どうして考え過ぎちゃうのかな。私、いつもこんなで、駄目ですね。」
「Lさんは術を使う時、楽しいですか?」 「え?」
「こんなことが出来て楽しいって思いませんか?」
「正直に言うと、楽しいと思うこともあります。術を使うのはお仕事のためで、
本当は楽しいなんて思っちゃいけないのかも知れませんけど。」
「お正月のトランプのこと、憶えてますよね?」 「はい。」
「Lさんと2人きりでいるのに、Sさんのこと話して御免なさい。
でも、今は僕たちのお師匠様の話だと思って聞いて下さいね。」 「はい。」
「あの時、Sさんはとても楽しそうで、得意そうでした。
『ほら私って、術って、凄いでしょ』って感じで。だから思わず僕も楽しくなりました。」
「確かに、とても楽しそうでしたね。お正月で、久し振りに従姉弟に会って、
それでだと思ってましたけど。でも一番楽しそうだったのは術を使ってる時でした。」
「Sさんだって、時々は自分が術者であることを楽しみたいんです。
いつだって仕事に関わる辛い事や悲しい事に耐えてるんですから、息抜きも必要ですよね。」
「辛くて、悲しいから、時々は術者であることを楽しむ...Sさんも。」 姫は少し遠い目をした。

325『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:13:11 ID:7ZYL5W1M0
 「さて、次はかなりディープな質問ですよ。将来の夫婦として答えて下さいね。」
「はい。」
「Lさんは僕と、その、仲良くしてる時に、気持ち良いですか?正直に、答えて下さい。」
「あの、とても嬉しくて、幸せな気持ちです。」
「でも、気持ち良いと思ったことはないんですね?」
「はい、御免なさい。」 姫は目を伏せた。
姫と身体を重ねたことはそれ程多くない。既に痛みや出血は無くなっているが
あまり気持ち良く感じていないのが分かるので、どうしても遠慮してしまう。
自分の子を愛せないのではないかという不安を抱え、そして姫の真面目な性格。
当然、その結果妊娠するかも知れない行為を、心から楽しむ気持ちにはなれないだろう。
「Lさん、仲良くするのは子供を作るためだと思ってませんか?」
「え?だってそれは。」
「もちろん子供を作るためでもあります。でも僕にとって、普段はそれ以外の意味が大切です。」
「どんな、意味ですか?」
「コミュニケーション、互いの愛情の確認です。身体を重ねて互いの気持ちを確かめ合うこと。
そしてそれを気持ち良いって感じることは、僕が男であることを楽しむってことですから。」

326『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:19:44 ID:7ZYL5W1M0
 「あの、Rさんは、私と仲良くしてる時、気持ち良いんですか?幸せじゃなくて?」
「幸せだし、とても気持ち良いですよ。男に生まれて本当に良かったと思います。でも。」
「でも、何ですか?」
「Lさんも気持ち良いって感じてくれたら、もっともっと気持ち良いでしょうね。
それこそ天にも昇る気持ち。Lさんは仲良くしてる時、女であることを楽しんでますか?」
「Rさんに抱きしめてもらって、仲良くしてもらって嬉しいって思いますけど...」
「避妊すること、ちょっと後ろめたいと思ってるでしょ?」
「はい。」 小さな声、愛しくて堪らない。
「Lさん、避妊は僕にとって一番良い条件で子供を迎えるための準備です。」
「準備?」
「正直、僕は今すぐLさんが妊娠しても全然困りません。
それどころか、きっと、とても嬉しいです。
でも婚約者としてでなく、ちゃんと入籍してからの方がもっと良いかなと思うし、
いや、Lさんが大学を卒業してからの方がLさんの身体には良いのかなって迷いながら
僕たちの子供を一番良い条件で迎えるタイミングを考えてるんです。」
「そのためにもいっぱい仲良くして、お互いの気持ちを確かめ合うことが大切なんですね。
そのためにいつもは避妊を?」
「僕はそう思ってます。何度も仲良くして気持ち良くなったり、そのために避妊することは
全然後ろめたい事じゃありません。僕たちはもう夫婦同然なんですから。」

327『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:21:04 ID:7ZYL5W1M0
 「じゃあ、SさんはRさんと仲良くする時」
俺はキスをして姫の唇をふさいだ。
「2人きりでベッドの中にいるのに、他の人の話をしちゃ駄目です。
さっきは術のお師匠様として話したんですよ。2人で仲良くする事にお師匠様なんていません。
もっと気持ち良くなるにはどうすれば良いかって、2人で探すしかないんです。」
「じゃあ、もう一度仲良くして下さい。私、今度は気持ち良くなるように頑張りますから。」
「だ・か・ら、頑張ったら楽しめないじゃないですか。何か、こう、ガチガチな感じで。」
姫は声を立てて笑った。表情は見違えるように明るくなっている。そう、これでこそ姫。
この人には今、茫洋とした未来でなく、もっと身近な将来を実感する何かが必要なのだ。
その『何か』とは一体...
安らかな寝息を聞きながら、今度は俺が考え込む番だった。

328『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:22:16 ID:7ZYL5W1M0
 翌日、朝食の後でいったんこの街を離れ、次の目的地である街を訪れた。
Sさんから頼まれたミッション。小さな博物館を密かに(普通に入館して)調査する。
『一族にまつわる収蔵品が展示されているかも知れない』とSさんは言ったが、見事な空振り。
良く出来たレプリカだと姫は笑った。まあ、写真だけでは分からないことも沢山ある。
博物館近くの食堂で早めの昼食を食べてからその街に引き返した。
昨日、学生が座っていた2番線のホーム近くのベンチに陣取る。13時45分。
長丁場かも知れない。姫が時刻表を確認している間、売店で飲み物とお菓子を買った。
「さっき、同じ路線の電車が来ましたが異常なし。やっぱり時間も関係ありそうです。」
「それらしい電車は何本あるんですか?」
「次の電車は14時12分、その次が14時35分、この2本はまだ早いような気がします。
昨日の時刻からみて、15時5分、15時23分、15時45分。どんなに遅くても16時2分、
この4本でしょうね。昨日は16時を過ぎたら現れませんでしたから。」
時計を確認する、13時59分。可能性は低いだろうが、最初の電車まであと13分だ。

329『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:24:39 ID:7ZYL5W1M0
 14時12分と14時35分の電車は異常なかった。
駅員が近寄ってきた。「お客様、何かお困りですか?」 親切と偵察。
閑散とした休日のホーム、難しい顔をして長時間座っている男女の2人連れ。
しかも女性は飛びきりの美人。俺が駅員だとしても気になるだろう、仕方ない。
『駅員の余計なお節介に困ってます』とは言えないので、出来るだけにこやかに応じる。
「彼女の御両親と待ち合わせしてるんですが、○▲県の雪で少し遅れてるみたいなんです。
どんなに遅くても16時2分の電車には間に合うと思うんですが。」
姫は俯いて俺の左肩に頭を預けた。いかにも心細そうだ、さすが演技派。
「それで2番線の近くに。分かりました。早く会えると良いですね。」
駅員が立ち去ると姫はくすくすと笑った。
「あういうのが、立て板に水、なんですよね?」
「演技派の美人が傍にいれば、どんな台詞でもそれらしく聞こえます。簡単ですよ。」
次の電車までは少し間がある。2人でお菓子を少し食べた。
やはり温かいものが飲みたいので自販機でお茶を買い直す。
交代で姫もホットレモネードを買って来た。
お菓子と温かい飲み物。少し体を動かして気分一新。次の電車に備える。
15時。多分、あと3分と少し。

330『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:28:28 ID:7ZYL5W1M0
 15時3分、辺りの空気が変わった。 始まる。
親子の姿は現れないが、微かな気配を確かに感じた。
感覚を最大限に拡張して気配に同調する。探るのは会話、2人の最後の会話。

『お母さん、雪、雪が降ってるよ。綺麗だね。』
『本当だ。寒くない?』
『少し寒いけど平気。』
『雪も綺麗だけど、春になったら、お母さんが育った村の桜を見せたかったな。』
『お母さんの育った村の桜って、この雪よりも綺麗なの?』
『ずっと綺麗よ。数え切れない桜の木に、一斉に花が咲いて。
お母さんが見た、世界で一番綺麗な景色だもの。』
『一緒に、その桜、見たかったね。』
『御免ね、お母さんがしっかりしてなかったから。怖くない?』
『大丈夫。僕、お母さんが大好きだから、何時までも一緒だよ。』
『ありがとう。でも、あの桜、見せてあげたかった。』

 続いて起こる感情の爆発。
死を決意するまでの母親の記憶。前夜の2人の会話。
そして駅までの道程。歩道の脇、立ち枯れたような姿で春を待つ桜並木。
一瞬の間に様々な感情と映像が迸る。
走馬燈どころでは無い。まるで目の前で次々と爆発する打ち上げ花火。
昨日よりはましだが、やはり激しい情動に意識が飲み込まれそうだ。
腹に力を入れて耐える。やがて唐突に、気配は消えた。

331『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:30:05 ID:7ZYL5W1M0
 目を開け、ハンドタオルで額の汗を拭う。 気温は4℃、文字通りの冷や汗。
「あの会話。『桜の花』が2人の心残りなんですね?」
「はい。生きることの全てを諦めた2人の、最後の望み。だから、とても強い心残りです。」
もちろん自殺は罪だ。子供を道連れにしたのだから、母親の罪はさらに重い。
それに、電車への投身。 数え切れない人達に迷惑を掛けたのは間違いない。
しかし悲しいことに、『死ぬより辛いこと』がこの世にはある。厳然として、ある。
以前の事件、校舎の屋上から身を投げた女子高生もそうだった。
姫に仕込まれていた術の件では、俺自身、自分の死を考えた。そして、おそらくは姫も。
罪は罪。しかしそれは、決して許されぬ罪ではない。
それに、このままでは遅かれ早かれ2つの魂が『不幸の輪廻』に取り込まれる。
誰1人それを悲しむ人のいなかった、孤独な親子の死。
不幸はもうそれだけで、十分ではないか。
「何とか助ける方法はありませんか?」
「2人が身を投げたのは2月、雪の降る午後。2人にとって季節は常に冬だし、
その魂はこのホームに縛られています。このままでは、絶対に心残りは消えません。
世の中を憎む代わりに、2人は強く、とても強く心を閉じてしまったんですね。
もし心を開いてくれなければ、無理矢理...それだけは避けたいんですが。」

332『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:31:05 ID:7ZYL5W1M0
 重い沈黙。
Sさんなら取り敢えず2人の魂を人型に封じて、
いや、Sさんがいれば上手くいくとは限らない。今、姫と2人で出来る事、それは。
姫が顔を上げた。俺の目を真っ直ぐに見つめる。
「Rさん、何でも良いですから、2人に呼び掛けて下さい。Rさんなら、もしかしたら。」
俺が2人に? そうか、言霊。 そのあとで姫は。
辺りの様子を確認する。まだ閑散としたホーム。
少し離れたベンチに学生らしき客。イヤホンをしている、大丈夫。お節介な駅員の姿もない。
振り返る、広告のパネルを挟んで背中合わせのベンチ。端の席に白人らしき親子連れ。
並んで居眠りをしている。多分、これも大丈夫。でも、これ以上客が増えれば絶対に無理だ。
明日は連休最終日、確実に今日よりも客は多いだろう。
おそらく次の電車が、最初で最後のチャンス。失敗は許されない
「分かりました。やってみます。その後は、お願いしますね。」
「はい、任せて下さい。」

333『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:32:33 ID:7ZYL5W1M0
 15時18分、多分あと4分弱。
姫は『何でも良い』と言ったが、一体何と呼び掛ければ良いのだろう?
二人の心残りは桜、満開の桜。 ふと、去年の春、4人で出掛けた桜の名所を思い出した。
明るい陽光に照らされた山一面の桜、ライトアップされてはらはらと散る夜の花吹雪。
翠を抱いたSさんも、大学の入学式を控えた姫も、本当に楽しそうだった。
そう、あの2人が見たかったのも、きっとあんな景色だ。
目を閉じて深呼吸、できるだけ鮮明にあの景色を思い出す。
飛び交う小さな鳥の声を、桜の花びらを運ぶ風の音を。そして楽しげな人々の声を。
「もうすぐです。」 姫の声。
目を開ける。数秒後、目の前に2人の姿が現れた。 今、だ。 2人の会話が始まる前に。
立ち上がる、深く息を吸い、下腹に力を入れた。 自分の力を信じる。
『母子、仲睦まじくて何よりですね。お二人も桜を見にいらしたのですか?
お望みとあらばご覧に入れますよ。山一面、満開の桜。』
花びらのような、綿雪のような白いものが俺たちの周りを漂っている。 これが言霊?
母親の左手が微かに動いた。右腕で男の子を抱き抱えるようにしながら、ゆっくりと振り返る。
『今、あなたは満開の桜と?』
『はい、確かに。』
紺色、半袖のワンピース。やはり半袖の白いシャツに黒い半ズボン。
二人の服装は質素だが清潔で、男の子のシャツにはぴしりとアイロンがあててあった。
精一杯の一張羅、二人なりの死装束。
雪の降る日にこの服装では、さぞ寒かったろうに。 涙、が。

334『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:33:41 ID:7ZYL5W1M0
 姫が立ち上がる気配。 親子の視線が姫に移る。
『春が来る。花待里に、春が来る。』
唄うような、囁くような『あの声』だ。耳鳴り、軽い目眩。しっかりと床を踏みしめた。
術者になった以上、もう耳を塞ぐ訳にはいかない。姫の術、最後まで見届けなければ。
『命燃え、今ぞ盛りと咲き誇る、山一面の桜花。』
思わず息を呑む。いつの間にか、俺たちは無数の桜に囲まれていた。
見渡す限り満開の桜。桜。桜。明るい日差し、青い空。
『風に舞い、里に降り積む花吹雪。』
降りしきる花吹雪を両手に受けて、2人は小さく溜め息をついた。
『とっても綺麗だね。』 『綺麗。』
『これが、お母さんの育った村の桜なの?本当に、世界一だね。』
『そうよ、世界で一番綺麗な景色。これで、もう...』
母親は男の子を抱き上げて、愛おしそうに頬ずりをした。
『御免ね。』 『お母さん、大好き。』
突然、2人の姿が眩い光に包まれた。思わず目を閉じる。

335『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:34:53 ID:7ZYL5W1M0
 「Rさん、早く。上手くいきました。すぐに撤収です。」
ホームに電車が滑り込んでくる。15時23分の電車だ。身を投げる親子の姿は無い。
姫はお菓子や飲み物を手早く紙袋に詰め込んだ。他の荷物は俺が持つ。
「ねぇパパ、綺麗なお花が沢山見えたよ。前にお花見で見た桜の花。」
心臓が一瞬停まりそうになる。 姫の顔も緊張している。
声が聞こえたのは俺たちの後方、姫と顔を見合わせた後、そっと振り返った。
灰色の瞳の女の子が、居眠りする父親の肩に両手をかけて揺り起こそうとしている。
「パパ!お歌が聞こえて目が覚めたの、そしたら桜でいっぱい。聞いてる?」
「うん、なっちはお花の夢を見たんでしょ?パパもその夢、見たいよ。」
女の子は父親の肩から手を離し、頬を膨らませた。
「もう、夢じゃ無いのに。」
ベンチの脇を抜ける時、女の子と目が合った。思わず声を掛ける。
「お嬢ちゃんも、桜の花、見えたの?」 「うん、とっても沢山。」
女の子は嬉しそうだ。姫がすうっと屈んで女の子と視線を合わせた。
「桜の花、とても綺麗だったでしょ?」 「うん、凄く綺麗だった。私、桜の花、大好きなの。」
「お嬢ちゃんはとても良い耳と目を持ってるのね。
だからあの歌が聞こえたし、桜の花が見えた。」
「なっちの耳と目が?」
「そう。大きくなっても、その耳と目、大事にしてね。バイバイ。」
「うん、バイバイ。」

336『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:38:49 ID:7ZYL5W1M0
 ホームを出ると、冷たい風に乗って白いものが舞っていた。 花吹雪ではなく、雪。
「この雪は、名残雪、だと良いですね。」 「はい、少しでも早く、春が来るように。」
ホテルまでの歩道沿い、十数本の桜が並んでいる。あの母親の記憶の中の桜だろうか。
花芽が少し膨らんでいるように見える。姫も桜を見ている。少しやつれて見える横顔。
そうだ、この人に必要な、実感出来る身近な将来、それは。
「Lさん、今年の誕生日で二十歳ですよね?」 「はい。」
「二十歳になったら、入籍しましょう。」 「入籍って...」
「前に約束した通り、婚約者じゃなくて、正式に僕のお嫁さんになって下さい。
そして、大学を卒業したら、僕たちの子供を迎える準備。どうですか?」
「Rさん、ひどいです。歩きながら、そんなこと言うなんて。
でも...嬉しい。とても、嬉しいです。」
姫はハンカチで涙を拭った。小さな肩をそっと抱き寄せる。
「入籍は8ヶ月後、卒業は3年後ですけど、『過ち』があったら卒業前の出産もあり得ますよ。
なんだかドキドキしますね。痛。」 左頬をつねられた。
「正式なお嫁さんが妊娠するのは『過ち』じゃないです。授かる子供にも失礼ですよ。」
「御免なさい。『Lさんとの過ち』って設定が、その、良いなと思って。」
「ふふ、ホントは何となく分かります。ちょっと、ドキドキしますよね。」

337『名残雪』 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:40:46 ID:7ZYL5W1M0
 おお、俺の嗜好を理解してくれるとは、さすがに姫だ。
「でも、もっとドキドキする設定があります。」 「どんな設定ですか?」
「入籍した後は避妊をしないんです。すごく、ドキドキするでしょ?」
「...それは。」
「きっちり計画するのも大切だけど、家族なんだから、もう少しいい加減に
のんびり生きても良いですよね。『できちゃった。』『え、大学は?』なんて、素敵です。
『休学して出産したのに、復学直前に次の妊娠が発覚』
これは、さすがにちょっと赤面ですね。」
姫...演技派なだけじゃなく、結構な妄想癖が。 いや、これは妄想じゃないな。
「お屋敷の広さは十分。子育てに関わる雑用は式に手伝ってもらうとして。
当面の問題は車、5人乗りでは足りませんね。7人乗り以上で検討しないと。」
「5人乗りで足りなくなるのはどんなに早くても来年の10月ですよ。気が早いです。」
不意に両目から涙が溢れた。嗚咽が漏れる、止められない。
「Rさん、どうしたんです。プロポーズした方が泣くなんて。」
もちろん悲しい涙ではない。 今、姫は、女性として生きる未来を自ら語っている。
それは、姫が俺と、そしてこれから生まれてくる子供達とずっと生きていくという、
確固たる意思表示。 伝説の天女が自ら羽衣を脱いでくれたのだ。
それがどうしようもなく嬉しくて、涙が止まらなかった。
「泣かないで下さい、Rさん。」 俺の背中をさする姫の手。温かく、柔らかい感触。
「御免なさい、もう、大丈夫です。」 

 白い雪。立ち止まった俺と姫を包み込むような。

『名残雪』 完

338 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/05(金) 19:43:18 ID:7ZYL5W1M0
 皆様、今晩は。藍です。
とても気に入った作品なので、かなり頑張ってみました。
原稿受け取りから投稿まで、自己最速記録更新かと思います。
お楽しみ頂ければ良いのですが。

339名無しさん:2013/07/05(金) 20:54:21 ID:uolf6pWI0
知人さん藍さんありがとうございます。とってもお楽しみ致しました(笑)

シリアスもほのぼのも、とても良いシーンがあるんですね。

340名無しさん:2013/07/05(金) 20:55:19 ID:uolf6pWI0
・・・・

そういえば新章のタイトルが・・・・なんでしたっけ?WWW

341名無しさん:2013/07/06(土) 02:09:02 ID:3IvhmewI0
知人さん藍さんありがとうございました。
とても心暖まる、やさしさ溢れる物語です。
桜は日本人の心を癒す、世界一美しい花だと思います。
数え切れない数の桜の花びらが輝きながら光をまとって舞い散るさまが眼に映るようです。
美しい物語だと思います。

342名無しさん:2013/07/07(日) 03:29:57 ID:9EhS5QtA0
うーん、秦氏系の術者(新羅・清和源氏系→白山→出雲→賀茂系)でも
中臣系(百済・中臣→藤→藤原→平氏系)でもないと仮定するとあとは忌部氏くらいしか思いつかないなぁ

忌部氏→紙すき(古いものは麻紙)で、徳島の特産が「藍」

妄想が溢れて困りますな

343名無しさん:2013/07/07(日) 11:41:51 ID:RxQH2mUk0
出自を隠すのも一つの術
なんでしょうかな。

344名無しさん:2013/07/09(火) 20:15:42 ID:hUTO0/KY0
藍さん

いつもは投稿のあとはレスがあるんだけど今回は全然ないね
多忙中って書いてたし仕事が忙しいんならそれはそれで良いんだけど
別スレの嫌な書き込みを読んで落ち込んでないか心配

最後に 『呪物』 『名残雪』 どちらも自分は好きですよ
いつも本当にありがとう

345名無しさん:2013/07/09(火) 22:18:08 ID:4ZW9g/SY0
藍さんの熱意と、知人さんのご厚意で本来読むことが許されなかった物語に触れることが出来ています。

有難うね。

346名無しさん:2013/07/12(金) 21:50:21 ID:Uj.mU.iE0
ちょっと気になるんだけど、まとめサイトの「シリーズ物/同一作者」カテゴリにこのシリーズはまとめられてるんだけど、タイトルがトリップで味気ない
なにかぴったりなタイトル誰か考えてくれ

347名無しさん:2013/07/13(土) 01:07:23 ID:lydlqMJs0
Rさんシリーズ

とか書いたら知人さん嫌がるかなぁ・・・

348名無しさん:2013/07/13(土) 08:41:26 ID:21ChEM5c0
色々思いつくタイトルはあるけど
トリップのままで良いような気もするんだよね
縁の無い人が読んだって何の意味のない物語だろうし
このまま目立たないようにしておきたい

349名無しさん:2013/07/13(土) 23:09:22 ID:lydlqMJs0
だがしかし、第一部「掌編」(たなごころ?)は解りましたが

第二部のタイトルが無い気がしますっ(笑)

350名無しさん:2013/07/13(土) 23:22:53 ID:OtOSVW4sO
シリーズ名を付けるのならやっぱり知人さんにやって頂くのが一番いいんでしょうね。

351名無しさん:2013/07/14(日) 00:45:35 ID:EXjViBw20
そうやって知人さんを引っ張り出すのが一番いけない気がWWW

反対どころか大賛成ですが、それはみんな我慢しなきゃ

352名無しさん:2013/07/16(火) 19:44:21 ID:TimnjbU60
 皆様、今晩は。藍です。

 投稿の際、奇妙な現象が起こることを確認しまして、
PCをチェックしてもらっていました(結局原因不明です)。
コメントを頂きながら反応が遅れましたこと、お詫び致します。

 さて、シリーズ名の件、知人に電話で確認を取りました。
2つの案が出て、取り敢えずそれを提示してみてはということになりました。
ただ、送付されてくる原稿には、もとの題名が記載されています。
その題名も併せて提案しても良いかと確認したところ
一部変更を条件にOKが出ました。以下、3つの案を提示致します。

①『Rさんシリーズ』
 他のシリーズの作者様に失礼にならなければ良いのですがとのこと。

②『陰陽道綺譚・藍之章』
 知人としては洒落っ気系(痛い系?)のつもりらしいです。

③『縁(いつか君に話す時のために)』
 もとの題に近い案です。

 もちろんこれ以外の案でも構いません。
読者様と管理人様にお任せ致します。長文失礼致しました。

353 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/16(火) 19:55:35 ID:TimnjbU60
藍です。
トリップを付け忘れてしまいましたが間違いなく私の書き込みです。
失礼致しました。

354名無しさん:2013/07/16(火) 23:06:19 ID:MHQTkg9U0
投稿の際、奇妙な現象が・・・誰かの術かも???

なお、②が格好いいです。

355名無しさん:2013/07/16(火) 23:44:45 ID:64A5z9d20
おお、縁(えにし)ですか。私は③ですね。自分でRさんシリーズとか言っておきながらですがWWW

Rさんシリーズは、まとめサイトの表題がトリップのままになってたので、まとめサイト用のネームのつもりで考えてました

356名無しさん:2013/07/17(水) 01:52:03 ID:5aAHJpA.0


流れとかわかりませんが、投下させてください。

あんまり怖くありませんが、今さっきあった話です。

両親と妹は隣の部屋で寝ており、 私は1人、机のある部屋でやることを終わらせようと机に座った。
暫く机に向かっていると、壁からトントンという音が聞こえた。
初めは気にしていなかったが、あまりにも続くため、気になって壁を見る。
その音は手の甲で壁をノックするような音だった。
誰かが手の甲で叩いてるにしても、その叩かれている壁の位置が明らかにおかし い。
家はアパートで、すぐ外は階段だけど、 叩かれてる位置はどう頑張って手を伸ばしても届かない位置だった。
その時、変にポジティブになった私は、 きっとカナブンとかその辺の虫が壁にぶつかってる音だろう。(良く家の周りを飛 んでるので)
そう思う事にした。

一回切ります。

357名無しさん:2013/07/17(水) 01:56:38 ID:r/ddboS20

そのあと、暫くその音は規則的に続いたが、諦めたかの様にピタリと止まった。
私は、やっと終わったかとその音のなっていた箇所を見つめホッとした。
ホッとしたのは束の間、今度は誰かがゆっくり階段を上ってくる音が聞こえた。
新聞にしては早すぎる。
私は少し怖かったが部屋を出てドアに近付き、覗き穴を覗きこんだ。
すると、今度はゆっくり階段を降りる音が聞こえ始めるが、覗き穴からは何も見えない。
集中出来ずにイライラしていた私の怒りは頂点に達した。
我ながら怖いもの知らずだと思うが、
何故か「どちら様ですか!?」と言いながらバーンとドアを開けて階段を見た。
誰もいなかった。
その代わり、先日変えたばかりの階段に備え付けられている電灯がチカチカと点滅している。
私はそれを呆然と見つめ、私の声が大きかったのか、父が起きてきた。
「どうした?」
「変な音が聞こえt」
「 寝 ろ 」
父はそういうと、寝室に戻って行ったが、私は怖くて眠れない。←今ここ


文章下手くそでごめんなさい。

358名無しさん:2013/07/21(日) 16:20:57 ID:WRatVgPIO
ノックの音が。
その向こうには、おせっかいな神々が…。

359名無しさん:2013/07/21(日) 16:21:08 ID:WRatVgPIO
ノックの音が。
その向こうには、おせっかいな神々が…。

360匿名希望:2013/07/24(水) 20:58:10 ID:OfFwZeH60
この写真は、1984年3月に撮られた写真です。

この写真は、外国のある男性が部屋で撮ったものです。

この男性は、余命1週間と宣告されたため最後に自分の部屋を撮ろうと思い、自分のお気に入りのリビングを写した。

そして、確認するとこのような奇妙なものが写ったという。

その瞬間余命1週間と言われたはずがその場でカメラを持ち原因不明の突然死したそうです。

しかも、奇妙な事にこの事件を調査した警察は全員男性と同じような原因不明の突然死したそうです。

ですが、ある警察調査したところ死にませんでした。
警察は、気づいたのです。

この写真を触ったものが、死んでいるということに。

警察は、怖くてデータを世界のどこかに隠しました。

ですが、こうしてなぜかよみがえったのです。

例が、あります。実はこの写真はよみがえってから、この話を信じない日本人の山本和真さんが、軽い気持ちで編集をしました。
やはり、山本和真さんはなくなってしまいました。


回さないと、触っている事になります。
死にたくなければ、回すことです。

信じるか信じないかはあなた次第です。

361名無しさん:2013/07/25(木) 12:38:33 ID:fuoTtmcI0
写真屋に現像頼んだら1週間かかったんだな

362名無しさん:2013/07/25(木) 23:04:06 ID:VJcrVAks0
藍さん生きてるぅ〜?WW

暑いけど頑張ってね〜

363名無しさん:2013/07/26(金) 01:25:55 ID:82f5WUZY0
藍さん、仕事が忙しいのかな?
前に書いていたとおり、「道標」が物語の完結編なのかと心配になりました。
それなら「呪物」と「名残雪」は物語の補遺。すると「名残雪」という題名は...
いやいや、次回作、信じて待ってますよ。いつまでも。

>>346
シリーズの題名は、②『陰陽道綺譚・藍之章』に一票。

364名無しさん:2013/07/26(金) 20:52:41 ID:gaAqfBbUO
藍ちゃんやーい
おるかのー?

365名無しさん:2013/07/27(土) 08:03:18 ID:Y1aEJ0CQ0
藍さんこのまま忙しいとお盆までに新作は無理ですかいのうWW

366名無しさん:2013/07/27(土) 22:51:54 ID:rAKctVGU0
藍さん暑いので無理せずに
また,美しくも妖しくも悲しくも面白い話を待っています・・・。

367名無しさん:2013/07/28(日) 14:05:43 ID:NVx9N2Ww0
本スレに書き込もうとまとめたけど規制喰らってるのでこちらに

文書力の無いオッサンの話でも。
エロ描写あり。苦手な人はスルーして
まだ20代前半の話。その頃は所謂モテ気で調子に乗ってめちゃくちゃしてた。
ガタイも大きくケンカもそれなりに強かったけど、何故かいじめられてた
中高時代の反動もあったのかもしれん。
その頃は勤務先のバイトやら社員やら客やら悪さをしまくってて、ある日恐ろしい目に遭った。
この話はまた後日だけど、そのショックでしばらくは職場の友人と飲めない酒に逃げるようになってた。
その日も2時くらいまで呑んでて、大して飲んでないのにヘロヘロになりながら一人で歩いてた。
もうすぐ家ってとこで、ふと視線を何かが横ぎった。
「ん?」
ってその方向を見ると、ごみ箱に若い女の人が詰め込まれて、頭だけ出てた。
状況が理解できずにマジマジとみると、血色は悪く化粧っ気はないものの、
20代前半、今でいうならAKBに交じってても不思議はない程度のかわいい感じに
メガネ、ツーサイドアップとイロイロと私のツボを抑えていた。
うつろに開かれた目が会ったので
「なにしてんの?」と声をかけたら、
「…を待っています」とよく聞き取れない大きさで。
「そんな所おったら臭いし窮屈やろ、俺ん家くる?」と言うと
ポカンと口を開けたままボーっとして反応がない。
しかし、その姿に何かを催した私は、普段なら当然絶対にしないが、
ファスナーを下げ、何故か臨戦状態になってるモノを取り出した。
「自分のこと、めっちゃ好みやねん、エエ?」と言いながら、
彼女の鼻を持って、自分のモノを差し込んだ。
それでも抵抗はなし。
酒の勢いか、異常な状態にか
変に興奮して彼女の左右にまとめた髪をつかんで腰を突き立て喉の奥に果てた。
つづく

368名無しさん:2013/07/28(日) 14:06:51 ID:NVx9N2Ww0
ゴボゴボと若干むせたような咳をする彼女の口を拭いてあげるが、まだ収まらない。
どうしてもやりたくなった私は彼女をごみ箱から引きずり出した。
彼女は黒いごみ袋に首だけ出す形で入れられて、袋の中には彼女以外にも何かが入っているようだった。
一度ごみ箱から出し、ごみ袋を裂くと、大量の虫(暗くてよく見えなかったがGも居たと思う)、
猫の首、鶏の胴体などが入っていて、さらによくわからない骨も。
うわ!と悲鳴をあげて飛び退いたものの、このままにしておくわけにはいかず彼女を抱えてラブホへ。
いまだ放心状態なような彼女を風呂に入れるため服を脱がすと体中に
文字とも模様ともつかないものが赤と黒で書かれていた。

今思い返せばおそらくハングル。

だんだん頭も覚めてきて、これはただ事では無いと、彼女を問いただしても反応は薄い。
それより、体中についてる血や糞のにおいがとてもじゃなかったので、風呂に。
幸い、体に書かれた文字もボディーソープで落ちたが、まだぼーっとしている。
そんな状態なのに、あくまで洗うために胸や股に手をやると、体を触ると反応はよく、
嫌とも言わないのでとりあえずやっちまおうと事に及んだ。

が、反応が良いレベルではなかった。
ぶっとんだ喘ぎ声をだし、ものの数分で絶頂を迎える始末。こっちはゴムのせいでなかなか。
で、終わってみると初めてのお印。
「これはクスリやってるなぁ」と思い、
警察に連絡するかとか?と写メなど取りながら考えてると、途中で気を失った彼女が目を覚ました。
「え?!誰!ここは!」と。
素面に戻ったらしい。
つづく

369名無しさん:2013/07/28(日) 14:08:25 ID:NVx9N2Ww0
ひとまず落ち着かせ、包み隠さず全て話すと、彼女は泣き出した。
彼女は数年前から霊に襲われるようになったそうだ。
最初は家の中だけだったのが、最近は外でも。
急な眠気のようなものを感じ意識が朦朧となると、
全裸の中年のオッサンが現れ、口に出せないような事をするのだそうだ。
悩みに悩んだ彼女は、知り合いを通じ霊能者に相談。
お祓いと称し香をかいでいるうちに意識が途絶え今に至るのだそうだ。
「え?でも自分初めてやったで?」
とシーツについてる赤い染みを見せると、何故だか安堵してた。
なぜかその後2回戦を行い、とりあえずその日は休みだったので一日一緒に居る事に。
というか、一日中やってた。
途中から、オッサンがジーッとこっちを見ていたが、その前に体験した事に比べれば、
女の子の感度を引き出したオッサンの調教に感謝こそすれ、
恐れる理由は無かったので見せつけるようにしてると、
いつの間にか消えてた。
つづく

370名無しさん:2013/07/28(日) 14:09:54 ID:NVx9N2Ww0
後で件の霊能者に会って話を聞いたのだが、彼女は淫乱の性質があり、それを感じて霊が集まると。
あの日のまじないは抱くに値しない女性であるという印を魂に刻み、霊障を遠ざけるものだったらしい。
霊は不浄なものを嫌うからだけど、私が汚したお蔭で霊も寄り付かなくなったとか。
そういえば、あのオッサンは汚いものを見るような目でこっちをみてたねぇ(´・ω・`)

ちなみにその娘とはしばらく付き合ったけど、互いの浮気で別れた。
今は3児の母をしている。

思い返して見るとイロイロ怖かったんだけど、文書に起こすと怖くないね。駄文ゴメン

371名無しさん:2013/07/28(日) 19:47:32 ID:9pxCVZDE0
2ちゃんが規制されてるんでこっちに書く
ついさっきの事なんだが

部屋にいきなり小さいツバメが現れてせまい1Rの部屋飛んでた
一瞬影が視界に入って外の車か蛾かなと思ったんだが
すぐにそれはあり得ないと思って見上げたらなんとツバメ

なんであり得ないかっていうと1Rで玄関当然しまってる
窓2つのうち小さいのはずっと閉めっぱなしでカーテンかかってる
大きい窓は網戸状態、昼間洗濯して閉めたのを確認しているんだ

万が一突き破ったとしたらまず音でわかる
そりゃコバエとかならまだわかるが
ツバメはないだろ、黒い蝶かなと思ったが飛び方違う

ツバメも焦ってたみたいでぐるぐるぶつからないように飛んでて
網戸開けてそっちに誘導して逃がしたけどよ
マジなんなんこれ
いきなりやで網戸開いてたとか絶対ないしちょっとだけやけど怖いわ

372名無しさん:2013/07/28(日) 22:48:06 ID:nSb0zG5E0

2chが規制されてここに投稿する人が増えることを望む

373名無しさん:2013/07/29(月) 06:22:50 ID:Xy4PDskk0
371だが
1時間前に起きてカップ麺くった後一息ついてたら
小さい窓のカーテンの横に10cmくらいの黒いのが引っ付いてた
最初デカイカブトかなんかかと思ったけど昨日のアレ思い出した

そうあれによく似ている
近づいて目の前でみたらコウモリだった
昨日のあれはツバメじゃなくコウモリだった
でもなんで2匹もいるわけ・・・

カーテンにへばりついてまったく動かない
水とパンでもやるかと近づけても無反応
すでに死んでた
生でコウモリみたのははじめてだが昆虫みたいな手してんだな

昨日のは飛んでて窓から出てたがまさか2匹もっていうか
一体どこから入ってこれるってんだよちきしょう
勝手に居たと思ったら勝手に死んでるしどうせえっちゅうんじゃ

374 ◆iF1EyBLnoU:2013/07/29(月) 22:04:54 ID:Gth3Wq9g0
今晩は。藍です。気に掛けて下さった皆様、有り難う御座います。
新作の予定が全く分からないので、今夜は私の経験を書いてみます。

去年の末からこちらで投稿させて頂いていますが、
最近書き込みの際に奇妙な現象が起こるようになりました。
ワープロの原稿をコピーして貼り付け→チェックして書き込みの手順ですが
書き込むと何文字かが原稿と変わってしまうのです(かも→かむ は→で など)。
購入した店では「ソフトの不具合はこちらでは対応出来ません。」
ワープロの制作元は「そのような不具合の報告はありません。」
ウィルスかと思い、職場でPCの管理をしている弟に調べて貰いましたが、
結局原因は分かりませんでした。

そのあとPCを元通り居間に設置しなおしながら、弟がポツリと
「なあ、姉貴。『藍』って名前で怪談投稿してる?」
心臓が止まるかと思いました。
弟は今年の初めから私が投稿した物語を読んでいて、
時々応援の書き込みもしてくれていたようです。
「何だ、やっぱり姉貴かよ。じゃ知人さんって〇△さん?な、新作何時?」
共用のPCだとそういうことも分かるのでしょうか。
近いうち、専用PCを部屋に置くつもりです。

つまらないお話で御免なさい。私としてはどちらもゾッとする出来事でした。
それでは、また新作待ちの日々に戻ります。

375名無しさん:2013/07/29(月) 22:20:23 ID:lf.xl4eIO
やっぱり管さんがパソコンの中に潜んはるのかむ…あれ?

376名無しさん:2013/07/30(火) 00:35:06 ID:mfl7CrLs0
うーむ

377名無しさん:2013/07/30(火) 01:52:16 ID:Ae.2z0io0
いい術者が居るんだ・・・紹介しよう。RさんだWW

378名無しさん:2013/07/30(火) 05:55:40 ID:Ae.2z0io0
藍さんって三人兄弟ですか?何やら知人さんのご親族のような気がしてきましたが(笑)

379名無しさん:2013/07/30(火) 15:09:31 ID:7oEwqAvE0
>>367
これ面白いな

380名無しさん:2013/08/02(金) 13:05:26 ID:f1yDiXyw0
藍さん、文字化けの件ですが、文字コードがUNIコードの関連でトラブル起きてるだけじゃないですか?

「しかし、→しか諸し、」になってませんか?


弟さんバレの件は・・・・藍さんがアクセスログそのまま放置してただけじゃWWW

消し方は藍さんが悪い子になっちゃうので教えませんWWW

381 ◆iF1EyBLnoU:2013/08/03(土) 23:32:27 ID:jtBAEzhc0
今晩は、藍です。

個別のレスは控えると書いた手前、曖昧なレスになります。申し訳ありません。
原稿と書き込みの結果が違うのに気が付いたのは、『誓詞』の中で
Sさんが炎に反論する場面です。大事な大事な場面なのに脱字が生じて、
知人に申し訳ない事態になりました。弟にも再度確認しましたが
コート゛(?)関連のトラブルでは無いようです。

弟が私の書き込みに気付いたのはゾッとしましたが
そっと応援してくれていたと分かって嬉しかったです。
『呪物』と『名残雪』が好きなのも好みが一致していました。
ただ、
「『道標』だけど、いくらノロ雲上との会話を伏せ字にしても
犯人捜しの術をあんな詳しく書いたら知人さん困るんじゃない?察しろよ。」
と言われ、反省しています。次(が有ればですが)は、
知人ともう少し相談して投稿を続けられたらと存じます。

382名無しさん:2013/08/04(日) 02:09:46 ID:MKKMrVr20
こんばんわ〜。おお書き込みが

弟さん・・・・突っ込みを入れる時はもっと早めの方がよかったんじゃWWW

383名無しさん:2013/08/04(日) 19:37:55 ID:eWVm7PrUO
描写があんまり曖昧になっても面白くないし、悪用できるような能力のある人はまずいないんじゃないかと。いえいえ、藍姉さんにお任せいたしますけれども。

384名無しさん:2013/08/04(日) 22:26:14 ID:MKKMrVr20
・・・藍さん・・・スレ主に頼んで弟さんの部分が出てる2コメントと、ついでに私のこの383コメントもあとで消してもらった方がよいかと(汗)

弟さん了承の元なら問題なしと思われますが、見様によっては物語への過剰な現実感が出すぎてると思われます。

ファンとしてはメシウマ展開なのですが、これは少々危険だと

何と言うか・・・気にする処そこ〜?WWWと突っ込みたくなる気分です

何しろ今は続きを読ませて頂く事が優先なので。

想像するに、普段は慎重そうな弟さんのいう事聞いた方がよいという印象を受けましたWWW

藍さん防御力低すぎですWW。私の方が余計な気を廻している状態ならまだいいんですがね

385名無しさん:2013/08/10(土) 11:05:37 ID:ZPER50OAO
次の物語来ないかな〜

386名無しさん:2013/08/10(土) 22:01:56 ID:w6/IaH3o0
揉めてるか、お盆で放置プレイだと思いますWW

387名無しさん:2013/08/10(土) 22:03:07 ID:w6/IaH3o0
お盆は福井県に聖地巡礼に向かうつもりです。なぜかあの流派は京都じゃなくて本部が福井県なんですね

388名無しさん:2013/08/12(月) 17:31:17 ID:oI7IFyEI0
芦原に行くのかい?
ゆっくり温泉つかって堪能してください。
しゃれこわ的巡礼なら車が無いときびしいですが・・・

389名無しさん:2013/08/13(火) 10:09:06 ID:vrPBVkLgO
中1の頃に近所の公園の日陰で落ちてるエロ本を見てたら突然背後から「そんな事に興味あるの?」って声をかけられて振り向いたらお姉さんとおばさんの間位の女性が居た。
俺は驚いて「無い!無いです!」とかほざいて冷や汗をかきながら腰を抜かした…


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