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エスペラントの思想と国家権力

878KamelioJapana:2008/09/17(水) 07:06:35
本の紹介です。
[朝日新聞に掲載]2008年8月10日

壊れゆくアメリカ [著]ジェイン・ジェイコブズ
* [評者]柄谷行人(評論家)

■集団的記憶喪失が文明を暗黒へと

 著者は1950年代に、ニューヨークのジャーナリストとして高速道路の建設や都市開発に反対する運動を
おこし、さらに60年代には、近代の都市計画を根本的に批判する理論家として注目を集めた。その核心は、
モダニズム以来の都市計画にある、ゾーニング(住宅地とオフィス街を分ける)というアイデアへの批判にある。
都市は、雑多なもの、古いものと新しいものが集中的に混在しているときにこそ、活発で魅力的なのだと、
著者は主張したのである。

 本書は2006年に亡くなった著者の遺作となったエッセー集である。著者が90歳に近づいて活発に考え、
かつ活動していたことを知って、私はあらためて感銘を受けた。本書には格別に新しい考えはない。
著者が50年間いい続けてきたことと同じだといってよい。しかし、同じでないのは、50年前と現在である。

 現在、多くの人々は昔の都市を覚えていない。たとえば、ロサンゼルスに、かつての東京と同様、路面電車が
街中を走っていたといっても、誰も信じないだろう。「モータリゼーション」が都市や都市の生活を根こそぎ
破壊したのに、もうそのことに気づくことさえできない。過去を覚えていないからだ。そのような集団的記憶喪失
が、各所におこっている。

 著者は、大学改革についても、都市計画と同じ問題を見いだしている。たとえばアメリカでは、大学教育を
より効率的にするために、ムダと見える学問、特に、人文学を切り捨ててきた。日本でもその真似(まね)
をしている。その結果、一昔前なら、誰でも知っているべきだった文学を、今、ほとんどの人が知らないし、
知らなくても平気である。

 本書の原題は「暗黒時代が近づいている」という意味であるが、暗黒時代とは、ローマ帝国が滅んだあとの
ゲルマン社会で、ローマの文化がすぐに忘却されてしまったことを指している。そのような事態が現在おこり
つつある、という著者の予感に、私は同意する。それをひきおこしているのは、いうまでもなく、グローバルな
資本主義である。

 Dark Age Ahead、中谷和男訳/Jane Jacobs 1916〜2006。
都市専門家として活躍。


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