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雑談スレ
668
:
正樹
◆6z10n91cnw
:2007/05/12(土) 21:16:31
この論文の論旨については、殆ど訂正の必要を感じない。
直したいところがあるとすれば、今読んでみると必要以上に
臆病になって余りに用心深い表現になっているように見受け
られる部分だ。しかし、この当時は、これでも大胆過ぎる
ほどだったので、発表当時、新聞記者に問われて、
「場合によっては、監獄入りもあるだろうと思って、六法全書を
開いてみたら、名誉毀損の最高刑が3年だから、訴えられたら
あんまり争わずに入ってしまえば、30代のうちに出られる
のだから(このとき、私は34歳だった)、まぁいいやと
思った」
と答えたことがあった。それから3年経ったときに、私では
なく、彼の方が監獄入りしてしまう日が来るとは夢にも思わ
なかった。
“ペンは剣よりも強い”などと言うことは、一般には通用
しない。権力の強さは、それを身近に触れたことのある人なら
誰でも知っていることだが、圧倒的なものがある。
『文藝春秋』11月号が出てからも、かなり長期間に渡って、
金脈を追及する側に立つ人々は、マスコミも、政治家も、
「文春によれば、こうなっているが・・・・・・」
と、リスクを全部こっちに被せながら、及び腰で追及していた。
彼らは、いつでも逃げられるが、私は逃げられない。逃げられない
となれば、いざと言う場合を覚悟するほかはない。初めから、
そう言う覚悟があって書いたわけではないが(だいたい、書いて
いる最中には、書くと言う行為に熱中しているから、そう言う
ことには考えが及ばない)、ことが起きてからは覚悟ができた。
覚悟ができれば、後は、どうと言うことはない。最悪のケースを
想定すると、殺されると言うことがあった。久し振りに友人に
会うと、
「お、まだ生きてたか」
とか、
「死んだら、骨は拾ってやるから安心しろ」
と冗談半分に言われたりした。
「田中は、ホントに何をやるか分からん男ですからね。用心
した方がいいですよ」
と真顔で忠告してくれる人もあった。
しかし、冷静に考えてみれば、私を殺すことで彼には何の
利益もない。腹いせにはなっても、政治的には致命傷となる
だろう。一応、最悪の場合も考えに入れてはいたが、この場合は、
覚悟さえ付けてしまえば、それ以上のことは考える必要はない。
後、考えられることは、殺さないまでも暴力沙汰に及ぶ。
警察を動かして、何か別の罪状で引っ括る。メディアに圧力を
掛けて、物書きとしての生活の場を失わせる。名誉毀損で訴える
などと言ったところだ。一見恐ろしいことのようだが、よくよく
考えてみると、大したことではない。
暴力沙汰と言うことは、要するに肉体的苦痛を我慢すれば
済むことだし、警察は、いくら私を嗅ぎ回っても(実際、そう
していたことを私は知っている。今度のロッキード事件でも
言われたように、田中は警察を殆ど意のままに使うことが
できた)、大したことが出て来るはずもなかった。物書き
としての生活を妨害されることは、私の場合、元々偶然の
成り行きでなった商売だし、他にいくらも食う道はあると
思っていたから、さして心配はしなかった。後、名誉毀損の
場合は、先に述べたように、せいぜい3年の監獄入りで済む
ことなのだ。
私の方は、この程度で済むのに、彼の方は、総理大臣と
しての政治生命が掛かっている。これは双方の掛け率から
行くと比べ物にならないほど有利な勝負だ、と言うことが、
私の最終的判断だった。
−94頁〜97頁−
『田中角栄研究・全記録−金脈追及・執念の500日』
(講談社文庫:立花隆)
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