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雑談スレ

374正樹 ◆6z10n91cnw:2005/08/29(月) 20:44:51
 
 『マス・メディアの表現の自由』
 
 松井 茂記(まつい しげのり)
 大阪大学法科大学院教授
 マスメディアを取り巻く環境が厳しさを増している。報道による名誉毀損
やプライバシー侵害を訴える裁判が急増し、メディア側の法的責任を認める
司法判断が相次いでいる。最近に成立した裁判員法には構想段階で様々な取材・
報道活動の制限規定が盛り込まれた。最終的に一定の修正が加えられたものの、
メディア側が反対の声を上げても国民が全面的に共感してくれるような状況に
は必ずしもならなかった。
 著者は被害者保護・人権保護などの名目の下で、取材・報道の自由を制限する
流れが広がっていることに強い危惧を表明する。それの論点は英米。特に米国
での「表現の自由」の法理の変遷を踏まえ、表現の自由は単に「自己実現」と
言う個人的な価値に留まらず、民主政の過程絶対不可欠だと言う明確な主張で
ある。表現・報道の自由のないところに民主主義は有り得ないと言う前提に
立ち、最近の報道ほ巡る司法判断に多くの疑問を呈している。
 特にプライバシーの権利が表現の自由に優越すると取れるような判断や出版
の差し止めを安易に認める傾向には大きな疑義を唱える。名誉毀損についても
「意見・論評には、より広く表現の自由を認めるべきだ」とし、「事実と信じた
相当な理由」を欠くことの証明責任も訴訟の原告側に課すべきだと主張する。
 個人情報保護法など、既に成立した法律以外に政府が制定を目指している
人権擁護法案などマスメディア規制の要素を含んだ法案の危険性も、説得力が
ある記述で指摘。取材・報道の現場にいる人間にとって「心強い援軍」との
思いを禁じえない。
 ただ、著者が指摘しているようにメディアが置かれたと厳しい状況の背景には
行き過ぎた事件報道による「報道被害」や集団的過熱取材などの問題がある。
一部メディアの興味本位の報道などで国民に強いマスコミ不信が広がっている
ことも間違いない。メディアの現場には人権侵害などへの自主救済措置を整える
と共に、実際の報道を通じて、それの存在意義を国民に納得させて行くことが
まず求められている。
         (書評:高橋美夫・東京社会部長)
 
         ===日本経済新聞2005年8月28日(日)===


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