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ゆかしメディア
企業のブラック化は経営者の「邪心」から 破綻するブラック企業の楽しみ方(12)
2013/10/29 09:10
【経済】
■第12回(最終回)社員を犠牲にした繁栄はどこまで続くのか?
本連載はいくつかの破綻事例を取材して、まとめたものである。経営破綻にいたる企業の多くは、どこかブラック体質に蝕まれていた。労務環境が不健全で、改善される見通しがなければ、社員は人生をこの職場に賭けてみようと腰をすえたくとも、すえられない。そんな企業の年間離職率は10%をゆうに上回り、社内の空気がギスギスと荒れ果ててしまう。(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)
■キャリア設計ができない職場から人は去る
昨今、終身雇用の終焉や組織活性化などを理由に、社員を次々に入れ替えることを是とする経営者は増える一方だ。とくに新興ベンチャー企業に目立つ。だが、いかにもっともらしい経営観を語ろうと、社員はまともにキャリア設計のできない職場からは遠からず去っていく。長期の勤務は人生の無駄遣いなのだ。
しょせん社員は、経営者が潤うための道具にすぎないのか。経営者の本心は社員に見透かされてしまうのだが、それでも弱肉強食、優勝劣敗を当然視する姿勢に修正の余地などない。このタイプの経営者は仕入先に対しても「出入りさせてやっている」「使ってあげている」と上から目線で、優越的地位の乱用に快楽を覚えている。
これは経営観に由来するのでなく、たんなる性癖の問題だ。しかし、社員と仕入先の犠牲の上に成りたつ経営がどこまで続くのだろうか。悪運の強い経営者がふてぶてしく社業を保ち続けているのは事実だが、代替わりをすれば大方、社業は転落を余儀なくされる。まさしく因果応報である。
■「縁」がブラックを防ぐ
一方、社員と仕入先を大切にする経営者には「経営は慈善事業でない。冷酷さが必要だ」などと分かったような批判が投げかけられるが、現実はどうだろうか。こういう経営者に対しては、社員も仕入先も衆知を結集して尽くそうと心から思うものだ。
業績が傾けば経営者におんぶに抱っこではなく、打開策を見出そうと東奔西走する。顧客も反応する。求心力が危機を乗り越える原動力になるのだ。社員と仕入先に同志の絆を定めるのは、決してきれいごとではなく、戦略としても正鵠を射ている。
数年前、法政大学大学院の坂本光司教授が著した『日本でいちばん大切にしたい会社』(3部作)がベストセラーになった。この本は人本主義経営を実践する企業の事例を紹介した内容だが、社員の定着が良い企業は好業績を持続しているという。
この本がベストセラーになったことは、まっとうな経営を希求している経営者やビジネスマンが数多く存在することの証しだ。
多くの読者が、会社にとって最も大切なステイクホルダーは株主でなく、社員であるとの確信を強めたのではないか。儲け至上主義でなく、縁あって職場をともにした社員を大切にしたいという風潮が浸透すれば、ブラック企業など自然に消滅していくだろう。
『日本でいちばん大切にしたい会社』に紹介されている経営者の経営判断基準を一言で表わせば、健全か、不健全か。この一点に尽きる。損か得かではなく、健全か不健全か、である。単純なことだが、実行は容易でない。
問われるのは経営の巧拙でなく経営者の心で、私心はあっても、邪心があってはならない。だが、これは人間の資質に由来するので、邪心型の経営者に改心を期待するのは現実的でないかもしれない。
もちろん例外もある。
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ゆかしメディア
企業のブラック化は経営者の「邪心」から 破綻するブラック企業の楽しみ方(12)
2013/10/29 09:10
【経済】
■第12回(最終回)社員を犠牲にした繁栄はどこまで続くのか?
■ブラック企業と取り締まりはイタチごっこ
たとえば、経営危機を乗り越えて人の心に打たれたときなどが、改心の契機となる。
ある外食チェーンが創業して数年後に経営危機に陥って、他社の傘下に入ったとき、社員の給与を大幅カットせざるをえなくなったため、経営者は条件の良い会社への転職を促した。すると、一部の社員は「給料が下がっても社長のもとで働きたい」と残留を申し出た。この一件で、経営者の考え方はガラリと変わったという。
「それまで社員は自分の手足のようなものだと思っていましたが、それからは社員の人生を考えてあげるようになりました。皆、若いときの私がそうであったように、自分の店を持ちたいと夢見ている。そのために入社してきたのですから、夢をかなえてあげようと」
以後、この経営者は奮闘して会社を買い戻し、ノレン分け制度を設けて社員を次々に独立させていった。会社が一部の債務保証を引き受けるため、相場以下の開業資金で独立できている。たぶん、独立した社員は恩義を感じて本社に尽くすだろうし、部下に対しても自分が受けた恩恵を受けつぐように遇するのではないか。
厚生労働省はブラック企業の調査や公表に乗り出すようだが、イタチゴッコに終わるだろう。ブラック企業には知恵袋の弁護士が就き、手を変え、品を変えて法の網をくぐり抜けようと動くものだ。多くの場合、経営者をすげ替えない限り、もちろん大株主からも外してガバナンスを刷新しない限り、脱ブラック企業への再生はかなわない。
厚労省の取り組みを機に、明らかなブラック企業からグレー企業への転身を試みる例が増えるだろう。裏社会で暴対法対象外の半グレが勢力を拡大したように、違法スレスレのグレー企業が跋扈する時代が迫っている――。
最後に、本連載をお読みくださった読者の皆様に感謝申し上げます。
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