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自分の人生を変えたと言っても過言ではない名言を晒すスレ

162名無しさんは神戸学院大:2012/05/29(火) 22:13:30 ID:jWm809hM0
久し振りに会う友人と焼き鳥を食べに行ったときの話。


「実は二年くらい前に網膜剥離になってもてなぁ。」

運転席でハンドルを握る彼は言った。

「網膜剥離!?」

その言葉の持つ衝撃的なイメージに、助手席に座る僕は不安になって友人の顔を覗き込む。

「あ、でも片方の目はちゃんと見えとるから大丈夫やで。」

言い訳っぽく彼は言った。

「片目全く見えんの?」

「いや。手術したから少しは見えるけど、視力は0.1以下やな。こっちの目は眼鏡かけても矯正できんし。」

と、さらっと答えた。彼の運転が急にぎこちなく思えてくる。彼はまだ車に若葉マークを貼らなければならない初心運転者期間中だったから、実際ぎこちなかったのかもしれないけど。

「もう片方の目は?」

「そっちは裸眼で0.6くらいかな。一応眼鏡はかけとる。」

確かに彼は眼鏡をかけていた。それが昔からだったかどうかは覚えてない。

「一応って…」

「かけんでも運転できるんやけど、教官がかけた方がええ言うから。」

「いや、教官が言わんでもかけてくれよ。」

「片目でも視力と視野が一定以上あったら免許は取れるんやけどな。」

「でも、なんで?」

「わからん。二年前に白内障になってそれで。」

「白内障…?」

確か白内障というのは高齢者か、糖尿病患者がなる病気だったんじゃなかっただろうか。

実際これは後で調べて分かった事だが、アトピー性皮膚炎の合併症で白内障や網膜剥離になる事もあるらしい。彼はアトピーだったからこれが原因かもしれない。

彼は高校時代の友人で、僕と同じくその高校には珍しい大学受験浪人という道を選んだクラスメートだった。
彼とは高校時代はそれなりに仲良くはしていたと思うが、大学に入ってからは全く会っていなかったし、連絡もほとんどとっていなかった。
彼に会うのは5年ぶりくらいだった。
彼は一浪で僕は二浪だから、僕はてっきり彼は既に大学を卒業しているかまだ在学中だろうと思っていた。
だから大学を中退したと聞かされて驚いた。

彼の家計は昔からそれ程良くはなく、確か浪人時代もバイトをしながら受験勉強をしていた。
しかし大学に入学してからさらに家計が悪化し、お金が続かなくなってしまい、やむなく中退したと彼は言った。
それからしばらくはバイトを掛け持ちして生計を立てていたが、仕事が忙し過ぎて、そのとき付き合ってた彼女に構ってあげられず別れる事になってしまった、と彼は申し訳なさそうに言った。
その上働きすぎてとうとう体を壊してしまったので、地元に帰って来たのだと言う。

地元に帰ってきてからは、とある会社で契約社員として働き、その傍ら塾講師のバイトもして家計を支えていて、そんなさなかに白内障になったということだった。

そんな悲惨な境遇を、彼はまるで平凡な一日の出来事を恋人に語るかのような気軽さで僕に話した。
彼はその境遇が理不尽であるとか、悔しいとか、辛いという感情を全く感じさせなかった。どちらかというとその境遇を楽しんでいる様にも感じられた。
彼は焼き鳥を頬張りながら、バイト先で知り合った友人と遊びに行ったときの話や、好きな女の子と初めてスタバに入ったとき、コーヒーを注文せずに食べ物だけを注文したらその女の子に笑われたという話を楽しそうに話した。
話の途中で彼の携帯が鳴って、彼もミスチルが好きなんだということが分かるとミスチルの曲の話でも盛り上がった。彼がまだ持っていなくて僕がおすすめのアルバムの話をすると帰りに買って帰ると言っていた。
彼は高校生の頃、将来英語の教師になりたいと言っていたが今でもその夢は持っていてお金を貯めていつかまた大学へ行って教員免許を取るとも言っていた。

僕は話を聞きながらある小説の登場人物が「本当に深刻な事は陽気に伝えるべきなんだ。」と言ったのを思い出していた。

彼はまさに重いものを背負いながらタップを踏んでいるように感じられた。


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