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kaohigashi COPIPE

23名無しさん:2007/07/31(火) 08:09:10
2005-07-05 日本 --- 加賀乙彦『帰らざる夏』上(講談社文庫、1977)

 ネット読書会、谷崎潤一郎賞受賞作シリーズ。前回は丸谷才一『たった一人の反乱』、それまでに読んだことのないタイプの小説で、期待はしていたとはいえ、あんな奇想に富む小説だとは予期せず、なかなか堪能した。今回は医者でもあり長編作家でもある、加賀乙彦。とにかく長い小説を書いている、評論も長編小説を扱ったものが多い。小説は長ければいいと思っているあたり、嫌いではない。しかし恐らくベタなリアリズムなんだろうなあ、と思いつつ読んだら、その通りだった。以下読書会第一回の感想。・・・

 全体的な印象などから、ざっと書いてみますか。細かいことは置いといて。

 この小説、書くのに相当時間がかかっていると思う、巻末の年譜を見たところ、この小説は自伝的な内容になっているらしく、自身陸軍の幼年学校に通っていたのね。にしても、戦争から半世紀後に書かれたと思われないほど、戦時下の軍隊はかくもあらんと思わせる軍隊用語が駆使してあって、これまで読んだ、太平洋戦争を素材にした小説で、もっとも当時の言語空間を感じさせる小説だった。「八紘一宇」がどうのなんてレベルじゃないね。ただし、それがどこまで正確なものなのかは、分からないけど、とにかく自身がそういう軍事教育を叩き込まれたにしても、これだけ軍事用語で統一して書き出すのは、やはり困難だと思われる。ずいぶん勉強しなおしたんじゃないかなあ。

 しかし内容は、おっしゃるとおり、素朴な小説だ。そもそも意図ははっきりしない、何を書きたかったのか。単に自身の人生をたどりたかったというなら、それにつきあわされる方はたまったもんじゃない。戦時下の少年の心理を書きたかったのか? にしては切迫するものがない。もしこの小説から、稚児云々というのを除けば、ずいぶん魅力のない小説になってしまうんじゃないかなあ。というか、太平洋戦争末年の軍事少年がいかなるものだったか知ったりするという目的以外に、単に小説としてだけ読んだときには、稚児の話以外に読むべき場所がないような気もする・・・。

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