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平成20年・刑法第1問

1倫敦橋(管理人)★:2008/08/12(火) 06:09:57
 甲は,甲の母X,妻乙及び甲の友人の子である大学生丙と共に暮らしていた。日ごろから高齢であるXの介護のため精神的・肉体的に疲れきっていた乙は,今の状況から逃れるにはXを殺害するほかないと考え,ある日の夜,殺意をもって,就寝中のXの頭部をゴルフクラブで数回殴打した。Xの悲鳴を聞いて駆けつけた甲は,ゴルフクラブを振り上げてXを更に殴打しようとしている乙に対し,「何をやってんだ。やめないか。」と言いながら,そこに駆けつけた丙と共に乙の行為をやめさせた。
 Xは頭部から血を流して意識を失っていたものの息があったので,甲は,Xを直ちに病院に連れて行き,医師の治療を受けさせれば死ぬことはないだろうと考えた。そこで,甲は,丙に対し,「Xを病院に連れて行くので手伝ってほしい。」と頼み,これを承諾した丙と共にXを甲の車に乗せて病院に向かった。ところが,日ごろから乙に同情していた丙は,Xがこの際死ねばいいと考え,車中で甲に対し,「病院に連れて行って医者から事情を聞かれれば,乙だけではなく,僕たちもやったと疑われますよ。それより,Xを病院の前に降ろして寝かせておきませんか。そうすればだれかがXを見付けて助けてくれますよ。」と提案したところ,甲は,病院の前であればだれかが見付けてくれるだろうからXは死ぬことはないだろうと思い,丙の提案を受け入れた。そこで,甲と丙は,ぐったりしているXを車から降ろして病院の前の路上に寝かせて立ち去り,自宅に一緒に戻った。
 しかし,丙は,Xが救命されないようにするため,甲に黙って再度病院の前に戻り,Xを人目に付かない植え込みの陰に運び,その場に放置して立ち去った。その後,Xは死亡した。後日判明したところによれば,Xの死因は,治療がなされなかったことによる失血死であった。
 甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。


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