この「共同正犯」の内容について、少し詳しく説明したい。
「北送事業」における「正犯」と言うためには<犯罪行為>に直接に実行した
というものでなければならない。
「直接の実行」とは、① 勧誘 ② 選別 ③ 送り出し(北送) の3条件の総てがが揃わなければならない。
とすると、これは「金 日成」、「朝鮮総連」、「在日朝鮮人(もちろん全部ではない)」が、該当する。
「幇助」とは、この一部に加担したことを言う。ただし、③の条件については、それが、<人道的見地>からなされたのであれば、これ(犯罪)に当たらない。
日本政府と日本赤十字社の「送り出し(北送)」は、それが先の3者の要請によってなされたのか、自らなしたのか、重要な点は<人道的見地>からなされたのか、がまだ十分には<解明>されていないと考えるが、現在の<資料>でも十分に<解明>されたと考えるかは「見解」の相違もあるので、今のところ、その判断を明確にできない。
いずれにせよ、「正犯」の実行行為の内容の<解明>が「先決問題」で、
これが<犯罪>を構成しないというのであれば、「幇助犯」なども成立しない。
こちらが言いたいのは、<解明>すべき「順序」が逆ですよ、ということに
なる。
まさか、先の3氏は、「金 日成」、「朝鮮総連」、「在日朝鮮人(もちろん全部ではない)」の責任の追及を<隠蔽>し、「日本赤十字社」および「日本政府」のみ<責任>を追及するとは思わないが、>誤解を受けない<ようにお願いしたい。
ところで、先の「張 明秀」氏の前掲書(50頁)を見ていたら、「北送」された在日朝鮮人について「朝鮮総連」が日本からの総ての「北送者」に対し、出生地、本籍、住所、経歴、思想、宗教、交際関係、に至るまで詳細に作成し、これを「北朝鮮」へ提出していたと言う。これを「了解書」と言い、「朝鮮総連」の「組織局」が作成し、「組織局」と「監査委員会」だけが知っている<秘密文書>である。
「北朝鮮」はこの「了解書」に基づいて「北送者」の「出身成分」を振り分けたという。
かねてから、「北送事業」への「共同正犯」たる「朝鮮総連」の ① 勧誘 ② 選別の実態を追及すべきであると主張して来た。「朝鮮総連」はやはり、詳細な<選別>を行っていたと推測できる。北送させるかどうかの<振り分け>も行っていたのではなかろうか。