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高経大がわかるプログ・サイトPart2
5
:
凡人
:2017/07/14(金) 10:13:19 ID:vq4jwV7U0
経営学者、ピーター・ドラッカーは、その著『マネジメント』の中で「日本はかつてきわめて貧しく、農業を主とした国で厳格な階級と身分に縛られていたが明治維新から30年後、近代国家となり、…同時に、日本は、字の読めない人が事実上、一人もいない最初の国になったのである」と、明治時代の日本を評価している。
明治天皇は地方巡幸などで積極的に学校訪問をされた。「教育に対する天皇の好みは保守的であった。…しかし同時に天皇は、伝統的な学問だけでは近代世界に不十分であることに気づいていた」(ドナルド・キーン『明治天皇』)のである。
そして「本邦固有の道徳を涵養(かんよう)する」(同上)とされたご意向に沿って作成されたのが「教育勅語」である。
起草にあたった一人、当時の法制局長官、井上毅は、その徳目が日本に特殊なものでなく、広く諸外国に通用する普遍的なものであるかどうかを確かめるために、『武士道』を編んだ新渡戸稲造の友人で、ルーズベルト大統領とも親しかった金子堅太郎に調査を求めた。
金子は「教育勅語」の徳目がわが国固有の倫理の教えに基づきながら、世界に通用する普遍的なものであることを確認し、その成立の経緯を「世界に輝く教育勅語」というかたちで発表したのである(『金子堅太郎著作集第二集』)。
われわれは、こうした「教育勅語」の形成された労苦や尽力を頭から無視してよいものであろうか。
近代日本の歴史を切り開いてきた先人に対する畏敬の念を欠いてはならないと思う。
もちろん、ピーター・ドラッカーも「明治の人にとっては日本の独立を守るという手段にすぎなかった軍事力が目的そのものにされてしまって、ついに日本に破局をもたらし、明治の世代が成し遂げた偉業をほとんど破壊してしまった」とも言っている。
日本に「破局」をもたらした手段として「教育勅語」が悪用されたことを認めるに吝(やぶさ)かではないが、「国民を排外主義的・軍国主義的愛国心に使われた」として、明治の先達が苦労して、その徳目が世界に通じる普遍的なものにしようとした心意気とその内容(現時点からみれば、そのすべてが正しかったと言わないが)への評価までを無視するのが、「教育学を研究する者として、また大学等で教壇に立つもの」の真意、総意とは思いたくない。
◇
【プロフィル】高坂節三
こうさか・せつぞう 経済同友会幹事、東京都教育委員など歴任。平成23年春から漢検理事長で現在、代表理事会長。兄は政治学者の故高坂正堯(まさたか)氏。
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