群馬県民スレＰａｒｔ３ - 1454278181

30：凡人：2016/02/06(土) 08:57:11 ID:MifDCzTU0: 対照的に一貫して高成長を維持しているのがインドネシアとカンボジアである。両国の衣類輸出成長率は前年同月比で20%の線を中心に変動している。カンボジアはバングラデシュと同様、他の発展途上国より後発のLDCと分類されているうえ、輸出の4分の3程度を衣類に依存している。したがって、2005年初めの衣類貿易自由化の影響が強く懸念されていた。カンボジアにおいては縫製工場の労働条件や最低賃金に関する監視が厳しく、その輸出はアメリカの消費者団体や労働組合から問題視されにくいことが、競争上有利に働いたという見方がある。

サハラ以南アフリカ諸国の中ではモーリシャスが衣類輸出の先発国であったが、同国は既に1人当たり所得が上昇し、衣類の国際競争力を失いつつある。同様に平均1人当たり所得の高い南アフリカと共に衣類輸出を縮小している(図3)。これら以外にレソト、マダガスカル、ケニア、スワジランドといった国々が、アメリカの国内法であるアフリカ成長機会法(AGOA)に基づく免税措置を活用し、2004年までにアメリカへの衣類輸出を大幅に伸ばしてきた。しかし、2005年に入ってからは、それまでのような輸出の増勢は見られない。これらの国々からのアメリカへの衣類輸出は横這い、または微減となっている。

また、つい最近、それまで公表が控えられてきた2005年1月から8月までのEUの輸入データが一気に公開された。これによればEU市場においても中国、インドの輸出が急増しており、バングラデシュ、カンボジアを含む他の国々は前年同期比で減少傾向にある。しかしこの変化は、EUへの衣類の輸出国構成に大きな変化を与えるまでのものではない。

●中国とアメリカ、EU
アメリカにとって、中国の世界の繊維・衣類市場に与える影響の大きさは、中国のWTO加盟時に既に折り込み済みであった。2005年初めの自由化後に中国製繊維・衣類の輸入が激増することを恐れたアメリカは、中国のWTO加盟の条件として2008年まで有効の「繊維特別セーフガード」(緊急輸入制限)を認めさせていた。これによって原則として1年間、品目毎に輸出数量の年間成長率を7.5%増までに抑えることができることになっていた。

2004年12月の時点で中国政府は衣類輸出の大幅な伸びと、それに伴う貿易摩擦を予期し、この勢いを抑えるために繊維.衣類輸出に輸出税を課し始めた。果たして予想通り2005年1月の中国製衣類の輸出増は、アメリカで前年同月比約30%増、EUは46.5%増であった。これを受けてアメリカは、5月に衣類7品目に関してセーフガード発動を発表した。同時期、EUもセーフガード発動を視野に入れ、中国に衣類輸出の規制を求めた。これに対し中国は、当初強硬な姿勢を示し、報復として前年末に課し始めた繊維・衣類輸出税を撤廃した。しかし6月10日に中国とEUの間に合意が成立し、EUがTシャツと亜麻糸のセーフガード発動を取りやめる代わりに2008年まで中国がEUへの繊維・衣類輸出を年間約10%に抑えることとなった。しかしこのような急激な貿易制限は、数カ月先を見越して注文、生産を行う国際衣類取引の慣行に合わないもので、結果としてEU諸国の国境には、発注されたものの輸入の認められない衣類が山積みされることとなり、結局9月に再調整のための新協定が締結されることとなった。
図3　アメリカに対するサハラ以南アフリカからの縫製品輸出（対前年同月変化率：%）

一方、アメリカと中国の繊維摩擦の解決は難航した。協議が幾度となく開かれ、それが決裂するとアメリカは、セーフガード対象品目を増やす、といった対応を繰り返した。10月に入るとブラジルも中国からの繊維・衣類輸入に対しセーフガードを発動する準備を完了するなど、アメリカ、EU以外の輸入国も中国製繊維・衣類の輸入増に神経をとがらせるようになった。

結局、アメリカと中国は11月8日に、2006年1月1日より2008年12月末までの3年間有効の包括繊維協定に調印した。これは21品目の繊維・衣類に関して中国が対米輸出量を、2006年には前年比で10～15%、2007年には12.5～16%、2008年には15～17%に抑制し、アメリカはこれら以外の繊維・衣類に関してセーフガード発動を自制する、というものである。これらの成長率は、対中国繊維特別セーフガードにおいて認められる7.5%よりは高いが、2005年1～9月の中国の対米衣類輸出の対前年同期比、68.9%よりかなり低いうえ、2004年、2003年の同輸出の対前年比の23.4%、22.5%よりもさらに低い。したがって、中国からアメリカへの衣類輸出の伸びは、自由化前の値よりも低められることになる。
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