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俺は小説家を目指している。
215
:
イチゴ大福
:2005/03/04(金) 20:50:33 ID:5cN.MTjs
45.エピローグは簡潔に。
事件のあと、大きな変化が三つ起こった。
一つ目は、火事の後から、男性と思しき遺体が発見されたこと。二つ目は、何者かがファイの証人群馬支部に侵入し、信者数名を殺害し、自信も自決したこと。三つ目は、梧桐彦次が所属する与党最大派閥の党員と幹部数人を、贈収賄容疑で東○地検特捜部が立件したこと、だった。
一つ目については、遺体の損傷がはげしく、すっかり炭化しており、DNA鑑定は不可能との見解が示された。しかし、警察の懸命な捜索にも関わらず、大洗の消息が依然つかめない以上、遺体は大洗ではないかとの見解が主流を占めるようになった。確かに、それには間違いないのだが、その事実は、おそらく志ノ田も知らないであろう。
二つ目に関しては、まるで謎である。おそらく、“彼”と同じように志ノ田に利用された、ファイの証人に恨みのある人間の犯行だろう。志ノ田の言った、「いずれ血は流れる」とはこのことを意味していたのだ。教団への怨恨による犯行ということで決着がついている。
三つ目に関しては、志ノ田が虎視眈々と狙っていた獲物の存在がなんなのかを知らしめるものだった。おそらく、背後には野党の暗躍があったのだろう。歴代総理大臣を三人も出した与党の牙城を崩し、新たな地盤を確立したいと目論んだのかもしれない。野党陣営からは堰を切ったように総理の辞任と内閣の解散請求が叫ばれるようになったのは、ごく自然な動きだったといえるだろう。地元地盤の候補者の人脈を断ち、また、他の選挙区でも逮捕者を出したことは、与党にとって大きなイメージダウンとなった。かといって、原状で辞職勧告をだせば、補欠選挙は確実に負けるだろう。その鬩ぎ会いの中で、政党内部の意見も膠着状態にあり、当分尾を引きそうな話題となることは確かだろう。
ここまできて、たった一つ疑問が残ってしまった。
そう、大洗ケルトナーを名乗っていた人物が一体誰だったのか、という点だ。
この疑問を解決したのが、前田の父である博士だった。
『賢くなるには年をとらねばならないが、実際、年をとって身を保つことは難しい』とエッカーマンに愚痴をこぼした、文豪ゲーテに共感して、最近ではゲーテ全集を読んでいた。
事件がひと段落し、前田が実家に家族を連れて行ったときのことだった。彼がふと思い出し、紙片を博士に見せたところ、「これはゲーテの言った言葉だな」と漏らし、問い詰めたのだ。それはエッカーマンの「ゲーテとの対話」で、一八ニ三年十ニ月ニ十一日のところに記されていた。続いて、ベルリンに母に会うために向かう若夫人が去ると、こんなことを言っていた。
「私は、あまりにも年を取ってしまったから、母親に再会する場所があちらだろうとここだろうと、その喜びはちっとも変わらぬなどといって、彼女に逆らってまで、彼女を説得する真似はできないね。こんな冬の旅は、労多くして、得るところがないよ。だが、こういう無駄は、若い頃は数限りなくよくあるものさ。そして、全体的に見れば、それは何にもならないことなのさ!ただ、ほんのしばらくのあいだ改めて人生を満喫するために、馬鹿げたことも時折仕出かさなければならないのだ。私だって、若い頃に、今よりもっと賢明だったわけではない。けれども、まぁなんとか切り抜けてきたというわけだね。」
だからなんだといわれればそれまでだが、事件を通じて“彼”が感想を漏らすとすれば、こんな疲れた言葉ではないだろうか?そして、最後の一文が引っ掛かった。
“彼”は生きていることを伝えようとしたのだろう。前田にはその事実だけで充分だったのかもしれない。
そして今、見知らぬ土地で“彼”の後ろ姿を見つけたのは、まったくの偶然だった。
“彼”は六年の時間を遡り、今ようやく本来の姿に戻っていた。草臥れたスーツが、時間とのギャップを埋めるかのように見えた。
「お前か、時間がかかったな?」
“彼”は少し疲れたように見えた。その落ち窪んだ目が、彼の精神的疲労を顕わしているようだった。
「偶然ですよ。でなきゃ分かるはずがない。」
「まぁ、招待したつもりもないしな。旅行か?」
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