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俺は小説家を目指している。

214イチゴ大福:2005/03/04(金) 20:47:30 ID:5cN.MTjs
44.終わり行く人々。
熱波が容赦なく消防士の侵入を阻む。
燃え尽きようとする意志、そして頑迷なる決意が、その炎には宿っていた。
前田が大洗宅に到着すると、すでに火の手は建物全体に回っていた。芸術家らしい、型にはまらぬ建築美は、どこか古い日本の平屋建築を思い出させるような、懐かしさがあった。アントニー・レーモンドの意匠に触発された、有名な建築家がデザインしたと聞くが、それも火の中にあっては、すでに灰になる運命を待つばかりだった。
駆けつけた消防士が消化活動に励んでいたが、一向に火の勢いが収まる気配はなかった。
前田は野次馬を掻き分けて消防士の一人の肩をつかんだ。
「中に人がいる!」
消防士は驚いた表情を見せたが、すぐに険しい表情に戻った。
「離れてろ!消化の邪魔だ!」
「私は警察だ。人がいるかもしれない。なんとか中に入れないか?」
「この火の回りの早さを見れば無理なことくらい分かるだろう!?薬品をばら撒いて点火した可能性が高い。」
「薬品?」
「ベンゼン、シンナー、グリセリン!言えば切がないが、消化剤の効果がない以上、自然鎮火を待つしかない!」
「くそ!」
舌打ちすると、建物の裏に回った。不幸中の幸いともいうべきか、周囲には建物がなかった。周囲の木に火が飛び移るのを防ぐため、駆けつけた警察が消防と協力して木を切り倒す作業を始めていた。前田は無造作に乗り捨てられたインプレッサを見つけ、中を覗いた。
キーは入ったままで、助手席にはサイレンサーを装備したグロックが横たわっていた。手にとり、マガジンを取り出す。弾丸は一発も入っていなかった。おそらくどこかに棄てたのだろう。そして、一枚の紙片が残されていた。
『今日は、太陽の再生をお祝いしよう!』
前田は眉根をひそめた。言葉の意味がつかめなかったからだ。
彼は紙片をポケットに押し込み、あとは呆然と邸宅を眺めているだけだった。


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