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俺は小説家を目指している。
208
:
イチゴ大福
:2005/03/04(金) 20:39:00 ID:5cN.MTjs
最初に動いたのは、論文雑誌を読んでいた院生だった。「どうせ馬鹿が喧嘩でもしてんだろう」そう内心悪態をつきながら、学部長に説教の一つでもしてもらうつもりで、名前と学籍番号を控えようと席を立った。ゲートを出て階下を見ると、先ほど大声を上げたであろう女の子の姿が見えたが、それを追いかけるようにしてホールに入ってきたのは、ナイフを手にした女性だった。その歩き方の美しさは天性のものかもしれない。彼は一瞬、呆然と、その黒い、硬質の瞳を収めた完璧な造形美に見とれていたが、すぐにそのナイフの事情に気がついた。それは、最近T経済大学を騒がせている“ゴースト”のためだった。彼は階段を駆け下りた。ゴーストは女の子をホールの奥に追い詰めていた。彼は休憩所の椅子を手にとり、ゴーストに投げつけた。椅子は頭部を直撃したが、彼女はまるで無反応だった。まるで、その椅子はおろか、痛みすらこの世のものではないといった風に。彼は恐怖に駆られてもう一つの椅子を手にとった。そしてつかつかと近寄り、大きく椅子を振り上げた。力ずくでゴーストをフロアに捻り倒そうと考えたのかもしれない。しかし、動作が大きすぎた。椅子を振り下ろす前に、ゴーストの刃が彼の心臓を貫いていた。彼は胸部にナイフを容れながら、椅子を振り上げた状態で静止していた。死の恐怖、苦痛への恐怖が、彼にそれ以上の思考を困難にさせていた。彼女がナイフを抜き去ると、大量の血を噴出して仰向けに倒れた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
悲鳴がホールに響き渡る。地獄の時代の到来か?それとも神の国の門が開いたのか?すべての死者は甦り、今再びその命の重さを計りに掛けているのだろうか?
「それは違うぞ、亜季!!」
うつろな瞳がそのとき何をとらえていたにせよ、そこには彼がいたし、それは実に自然な光景のようにも思われた。彼がそのとき答えたことは、彼女の行動の意味そのものを否定するために他ならなかった。それは、困難といわれる意志の疎通という作業を通じて行われた、二人が長い時間をかけて培ってきた、心の通ったコミュニケーションのなせる業だった。二人は、愛によって育まれ、愛によって理解されていた。
冷たい金属の銃口がその冷徹な殺人の興味を彼女に向けていた。若干、彼の指によって反抗されていたとはいえ、それは確実に彼女の命を奪うことを彼に約束していたし、そうしたくて仕方なかった。彼は、それを理性によって押さえつけていた。
「違うぞ亜季!!君のやっていることは、なんの問題の解決にもならないんだ!!」
血の痕跡を追ってみれば、そこには血にまみれた美しき悪魔の変貌があった。左肩が変形し、額からはどす黒い血を滴らせてはいたが、それでも彼女は美しかったし、その双眸は、やはり彼の心の奥底の深いところに眠る、彼女への愛を掴んで放さなかった。
「手紙を読んでくれたのね?」
「君らしい、綺麗な文面だった。」
「四季はファイの証人のクゾガキどもに犯され、殺されたの。そのクソガキどもが今、この大学にいることをあの馬鹿女が教えてくれたわ。」
「藍沢由布子か?彼女は勘違いをしていただけだ。」
「あの馬鹿がなにもかも話したの。あなたも知ってるでしょ、四季も、春子も、あいつらのクソ儀式のために殺されたって?」
彼女は怯えて蹲った女の子の襟首を掴むと、自分の目の高さまで持ち上げた。日本人の女性としては珍しく百八十センチ近くある長身のため、持ち上げられた女の子は首が吊られる形になり、息苦しいせいか激しくもがいた。
「このクズどもに殺されたのよ!!」
亜季は女の子をフロアに叩きつけた。か細い、病をかかえた痩躯のいったいどこに、あんなに激しく荒々しい力が宿っているのだろうか?彼女は膝をつくと、女の子に刃を突きつけた。
「やめるんだ亜季。その子は六年前の事件にはなんの関係もない。」
「それは問題にはならないの。必要条件を満たせばいいの。あとは報われたいだけ」
「殺人に報いる裁きはある。」
「それを望む人のための裁きなら、私にはあまりにも不満だわ。」
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