したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

俺は小説家を目指している。

201イチゴ大福:2005/03/04(金) 11:54:33 ID:1gws7aYE
「ピンダロスの言葉は、それ自体が不条理だ。」
彼は病室の前に立った。ノックする。しかし返事はなかった。彼はそっとドアを開け、中に入った。しかし、そこに人影はなかった。白い薔薇が薄暗い病室に光を与えていた。
シーツの皺が、人がいた形跡を留めていた。手で触れると冷たく、彼女の温もりを感じることはできなかった。
「トイレだろうか?」彼は思い、パイプ椅子に腰掛けた。
十分ほど待ったが、現れない。何かあったのだろうかと心配になり、看護士を呼び出す。病人がいないことを告げると、看護士は「そんなはずはありません」と、売店や担当医の所へ足を運んだが、やはり見つからなかった。
「いないのか?」
「ええ、どこにも。どうしちゃったのかしら、ひとりで動けるような体じゃないのに。」
「なにか、言っていませんでしたか?」
「いえ、でも昨晩から痛みが激しいらしくて、鎮痛剤を処方したんです。だからてっきり寝てるばかり・・・・・・。」
彼は思い出したようにベットをまさぐり始めた。ベットの下、戸棚の中、魔法瓶の下、花瓶の陰、そして最後に、枕を持ち上げ、それを見つけた。アイボリーの封書だった。皺になってはいたが、上質の紙だ。
「とりあえず、警察に連絡して、保護してもらいましょう?」
看護士がいう。
「私がその警察です。それにはおよびません。」
すでに事務的な口調に戻っていた彼は、職業的態度でもって、看護士にそうであることを認識させていた。看護士は一瞬驚いたが、すぐに納得したようだった。
「あら、そうですか。では、お任せしてよろしいですか?」
「ええ、そのほうが面倒がないでしょう。どうぞ、お仕事にお戻りください。見つけたらすぐに連れ戻しますので。」
「容態が悪いようでしたら、すぐに救急車を呼んでください。奥様は、考えておられるよりも悪いんですから。」
奥様、という言葉に彼は一瞬身も凍る思いで震えたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「ありがとう、そうします。」
封書をスーツの下にしのばせ、彼は足早に病室をでた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板