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俺は小説家を目指している。

199イチゴ大福:2005/03/03(木) 15:11:43 ID:4uwDCqB.
屋外を走行する自動車の排気音、カラスやスズメの鳴き声がかすかに聞こえ、それは朝の到来を告げていた。体は睡眠を求めていたが、脳はなぜか眠ることを拒絶していた。
眠れない原因が何か、それは前田には分かっていた。事件の謎が、彼を捕らえて放さないのだった。
「梧桐冬樹は犯人、梧桐冬樹は医学生、梧桐冬樹は強姦魔、梧桐冬樹は美男子」
頭の中で梧桐冬樹の情報が走馬灯のように交錯する。
「梧桐冬樹は人殺し、梧桐冬樹はK大学の学生、梧桐冬樹は名簿を持っている、梧桐冬樹は・・・梧桐冬樹は・・・梧桐冬樹は・・・・・・誰だ?」
彼は毛布を剥いで起き上がった。インスタントコーヒーを淹れ、ゆっくり飲み込む。
「一週間で七人も、大学の医学部に往復三時間もかけて通いながら、どうやって殺すことができるんだ?私でさえこんなに疲労しているのに、奴は新幹線の中でも音楽を聴きながら本を読んでいた。計画を立て、立て続けに犯行を実行したのに、なぜ、そんなに疲れないでいられるんだ?私たちが追っていた梧桐冬樹は、いったい何者なんだ?」
しかし、そこで前田は思考を切り替える。コーヒーを一口飲み、虚空を睨んだ。
「いや、そもそも、六年前の事件ではどうやって遺伝子のサンプルを採ったんだ?」
当時、梧桐冬樹は中学生だ。中学生の行動範囲がどれほどのものか、断定するのは難しいが、指紋、髪の毛、血液、皮膚組織、体液などを採取できる場所はそうあるものではないだろう。第一、保存もされていない現場で採取しても他人のものとの区別がつくはずがない。高崎市内なら、せいぜいがカラオケ店かゲームセンターくらいだろう。暴走族などとの付き合いがない彼には、背景に暴力団とのつながりがあるとも思えない。代議士の息子だ、それくらいのことは理解しているはずだ。
「それ以前に、熊田と梧桐の関係はなんなんだ?どうしてあの二人が接触することができたんだ?FTOの男といい、梧桐冬樹はT経済大生と長期に渡ってどんな関係があるんだ?」
カメラに収めたFTOのナンバを思い出す。「陸運局に悪質なスピード違反の常習者の疑いで照会できないだろうか?」おそらくT経大の学生だろう、ならば熊田との関係も洗う必要がある。スピード違反だけで照会するのは難しいだろうが、なにかよい口実はないか、彼は考えていた。
梧桐冬樹の遺伝子サンプルの入手経路が非合法であるという点に、もっと客観的な評価ができれば、梧桐冬樹が悪意ある何者かに利用されただけという見方ができる。
まだ根拠は曖昧だが、梧桐冬樹が事件の犯人であるには、あまりにも事件の背景が硬直化していた。それは八年前の事件との関連性も含めてのことである。梧桐が何らかの理由で事件に利用されていたとすれば、更に広く、深い問いが与えられているのではないだろうか?
前田は考えていた。
それには、FTOの男とその関係、そして、熊田との関係を洗い直してみる必要がある。彼は冷えた体を伸ばした。時計を見ると、すでに八時を回っていた。


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