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俺は小説家を目指している。

195イチゴ大福:2005/03/02(水) 11:32:29 ID:xLJuwFUE
「私はあなたが思っているほど強い人間ではないのよ。」
「いいや、強いさ。君が気づいていないだけだ。」
「ふふ、ありがとう。そうだと信じたいわ。」
彼は握り締めたその手をそっとベットの上に置くと、背中に隠していたものを取り出した。
「綺麗だろ?」
それは白い薔薇の花束だった。
「あら、この時期に薔薇なの?綺麗だわ。今日は何かの記念日だったかしら?」
「いいや、君にと思って。」
「ありがとう。あとで看護士さんに活けてもらうわ。」
「俺がやるよ。花瓶あるか?」
「ええ、病院のだけど。」
小さな物入れの中に黴臭い紺青のプラスティック製の花瓶が入っていた。水をいれ、その中にいれる。
「どうだ、映えるだろう?」
「そうね。」
それから、彼は着替えなどの入ったバックを彼女に見せた。
「これを。着替えは看護士に手伝ってもらうんだぞ。」
「ええ、明日にでも着替える。あなたはそろそろ帰ったほうがいいわ。」
そうは言いながらも、彼女の表情は寂しげだった。闘病生活に疲れ、肉体的にも、精神的にも辛い状況だった。しかし、それとはまた違ったものだった。
「そうだな。また来るよ。なにか欲しいものはないか?果物とか、本でもいい。」
「いいえ、なにもいらないわ。」
それを聞くと、彼は静かに彼女の唇に唇を重ねた。彼女も心持ち唇を押し返したが、重なった時間はほんとに一瞬のものだった。
「また来る。ゆっくりお休み。」
彼女は瞳で答えた。
後ろ髪を引かれる思いを断ち、彼は静かに病室を後にした。じんわりと口の中に広がる鉄の匂いは、血の味だった。


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