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俺は小説家を目指している。
185
:
イチゴ大福
:2005/02/27(日) 13:06:42 ID:ica9eRow
28.瞑想する前田。迷走する事件。
「大洗警部に関しては知らないことが多すぎる。」彼は独り言を口にする回数が増えていた。自覚症状があるのはまだいい、無意識にし始めたらさすがに危険だ、そう彼は自覚しているので、まだ安心していいだろう。
大洗が、早朝未明に起きた事件の調書を作成している間、前田は志ノ田比呂について調べていた。
大洗の、前田の前の相棒といえば、六年前の「あいうえお事件」を追っていたという刑事なのだろうが、まさか、その娘が事件の被害者と関係があったというのは、偶然の恐ろしさを感じさせるものだと、前田は思った。白血病というたった一つの接点を通じて、一方は医学に、一方は宗教に・・・・・・人間の歩む道というのが、ちょっとしたことで千変万化する態様は、現象としては面白い反面、現実としては悲しい気もする。
志ノ田比呂が新薬臨床試験事故で死亡したのは今から八年前のことだった。当時、国立G大学医学部の五年生で、医学部が六年生であることから、あと一年で卒業だったのだろう。専攻は遺伝学と免疫学。自分の病気を効果的な形で克服しようとする彼女の執着が強く感じられる経歴だった。
臨床試験には自発的に参加したものと記録にはあり、試験自体は大学の研究室が開発した新薬の、生体への安全性を試験するものだった。彼女にとってみれば、一刻もはやく、抗癌剤の苦しみから解放されるためには必要だったのだろう。しかし、彼女の期待とは裏腹に、試験中に死亡することになる。
司法解剖では、被験者の病状は当時すでに末期症状にあり、新薬の効果や副作用は影響がなかったとの報告をだした。確かに、同じく投薬を受けていた他の被験者からは異常が報告されていない。しかし、司法解剖の所見を書いた検察医の名を見て、前田は唖然とした。
“Kuniyori Nerome”
安易に、K大医学部学部長、根路銘国盛教授と関係があるのかどうかを指摘することはできないだろう。しかし、さらに裁判所の記録を読み進めていくうちに、新薬を開発した研究室のメンバの名前が記載された欄を見つけ、驚愕することになる。そう、“根路銘国盛”の名があったのだ。当時は助教授として、G大付属病院に勤務していたのだ。研究室は当時、新薬開発の指揮をとっていた石田二三夫教授の名が前面にでていたので、誰も彼の存在に気づかなかったのだ。また、被験者のうち、白血病患者は志ノ田比呂だけだったにも関わらず、その点について検察が言及を避けているというのも、不自然であった。
今回の事件には関係ないかもしれないが、なにか裏を感じさせるものはある。前田は、意図的に、うやむやのうちに闇に葬られた志ノ田比呂の死を無念に感じた。抑えがたい怒り、こみあげて来る激情。警察という、法を取り締まる組織の中で不正が行われ、そればかりか司法の場にまで蔓延していることに、激しい怒りを禁じえなかった。そして、病気と闘い、自ら運命を切り開こうと懸命に生きた志ノ田比呂のことを思うと、その死がなんて理不尽で惜しいものだろうと、彼は同じ警察組織の一人として自分を情けなく思った。
それと同時に、一つの思考が彼の脳裡を擡げた。
「志ノ田比呂の死の裏側。検察と大学病院の不正の一翼を担った根路銘教授と同姓の検察医。そして、志ノ田比呂の父は、「あいうえお事件」を追っていた刑事。その犯人と目されている人物、梧桐冬樹はT経済大殺人事件にも関わりがある。彼の伯父、梧桐警視正はK大の根路銘教授とはT大の同期で、甥の不正入学に手を貸している。しかも、梧桐警視正はファイの証人に強請られていた。そして、一連の犯行は教団のものと見せかけたもののように行われている・・・・・・これは、つながっているのか?」
誰もいない部屋にぼんやりと響く彼の声。空気を振動するだけの無意味な現象。しかし、その言葉は彼の脳に化学変化をもたらし、重要な意味の芽を芽生えさせようとしていた。
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