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俺は小説家を目指している。
182
:
イチゴ大福
:2005/02/26(土) 12:05:41 ID:D0p7jBWY
もはや、何ものもこの不幸の女性を煩わすものはなくなったのだという、嵐のあとの静けさにも似た平安が、その言葉には漂っていた。
大洗はそろそろ切り上げ時と察したのか、おもむろに立ち上がると、「本日はどうも、お忙しいところお邪魔いたしました」などと愛想笑いを浮かべた。
玄関まで見送られ、二人は神妙な面持ちで車に乗り込んだが、エンジンをかけるとすぐにいつもの調子に戻った。
「梧桐冬樹が教団に入っていたということはないでしょうか?」
前田がいう。大洗は待ってましたとばかりに前田を睨んだ。
「だからお前は馬鹿だってんだよ。もしそうだったら、当時から教団には様々な嫌疑がかれられてたし、地検の特捜も目をつけていたんだ、ここぞとばかりにガサ入れしてただろうよ。」
「ああ、そうか。・・・・・・しかし、教団はあくどいですね。病気の弱みにつけこんで金を毟り取るなんて。」
「どこの宗教だって似たようなもんだろ?信仰が物質と入れ替わればそれはもはや商売だ。もし、ブッタと道ですれ違ったらお前はどうする?」
「え?ブッタって、あの沙羅双樹の下で涅槃したブッタですか?そうですね、取りあえず拝んでおきます。」
「殺すんだよ。ブッタは信仰の中の存在だ。だから目の前のブッタは、ブッタの姿をしたブッタではないものだ。」
「乱暴ですね。」
「本来の宗教とはそういうものだ。物質に対する興味や欲望を喪失すれば、人間の悩みの多くは解消される。」
「コンビニ強盗もなくなりますね。」
「かといって、人間は生きていくうえでは、やはり物質に依存しなくてはならない。コンビニがある限り強盗はなくならないんだよ。」
前田はそこで、頭の隅に引っ掛かっていたことを話すことにした。
「ところで、警部。夫人がいっていた、G大医学部の臨床実験って、まさか八年前の、G大学付属病院で起こった、新薬の臨床試験事故のことでしょうか?」
八年前、これまでの抗癌剤に代わる副作用の少ないという、未承認の新薬の、患者への投薬実験が、G大医学部付属病院で行われていた。すでにラットやサルでの実験には成功しており、あとは人間への薬の安全性が証明されれば、多くの抗癌剤の副作用に悩む、白血病を始めとした癌患者の希望となるはずだった。
しかし、臨床試験中に患者が変死し、遺族は病院側を相手に、慰謝料の請求とともに、臨床試験のレポートや患者のカルテなどを要求して告訴した。しかし、第一審で地裁は、病院には、臨床試験に関わる検体についてその健康状態などの管理に落ち度があったと指摘したが、臨床試験に参加した他の検体には異常がなく、新薬を投与したことと志ノ田比呂の死に因果関係を認めることは難しいと判断を下した。しかし、実際、病院側から遺族に提出された証拠は不十分であり、カルテには不備や捏造された形跡があったことが、医療関係者や専門家からも指摘されていた。だが、「裁判の証拠となる物件は原則として原告が提出する」ことになっている法制度のもとでは、遺族に大病院相手に証拠を出させる力があるわけでもなく、裁判にかかる莫大な費用もあり、結局遺族は病院側との和解に応じたのだった。
「そうだ。医局と検察、警察の間でなんらかの取引があったとも噂されていた件だ。」
「大学病院ですからね、かわいそうに。亡くなった子、自分で病気を治すつもりだったんでしょうね?」
「そうだ。」
あまりにきっぱりとした物言いに、前田は返す言葉を失った。
「え?・・・・・・あの、警部。志ノ田比呂をご存知なんですか?」
「お前と組む前の二年間、俺の相棒だった人の娘だ。」
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