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俺は小説家を目指している。
180
:
イチゴ大福
:2005/02/26(土) 12:00:39 ID:D0p7jBWY
こういう言葉は事件といっしょで、持ってこられてから言っても効果がないわけで、かといって持ってくる前にいえば逆に催促しているようにも思えて難しい。
「粗茶ですので。」
そういってお茶を配ると、夫人は二人の前に腰を落ち着けた。
「もう葬儀はお済に?」
「ええ、内々に済ませました。主人はもう仕事にでておりますし、正直なところ早く忘れてしまいたいんです。こんな悲しいこと、三度目も経験してますから、精神衛生上良くないでしょう?だから、四十九日の法要まではもう何もしないつもりなんです。」
「三度目ですか?」
大洗の問いに、夫人は笑って返す。
「最初の子、春子のことですけど、産むとすぐに体調を崩してしまって、主人もタイミングよく入院してしまって、それで養子に出したんですよ。義弟に預けたとはいえ、最初の子供でしたから、やはり辛くて・・・・・・。」
「なるほど、お気持ちはお察しします。」
「湿っぽい話ばかりでごめんなさいね。どうも、一人でいると、嫌なことばかり考えちゃって。いい機会だから、なにか習い事でも始めようかと思っているんですけどね。・・・・・・ところで、春子のことでお話があるんでしたね?どういったことだったかしら?」
「ええ、生前、春子さんがファイの証人という宗教団体に所属していた件で、お話をお伺いに。」
「そうだったわね。あの子がファイの証人なんてインチキ臭い宗教にのめり込んだのは病気のせいなんですよ。でなければ、あんな元気で、明るくて、可愛らしい子が宗教になんて興味を示す理由がありませんでしたから。」
「病気ですか?」
「白血病です。あの子、昔大きな怪我をして、手術をしなくてはならなかったんですけど、その時に輸血された血液に、検査に引っ掛からなかったレトロウィルスが侵入していたらしくて。私も詳しいことはわからないんですけど、白血病っていうのは遺伝も伝染もしないそうなんですね。どうも、遺伝子の異常が原因らしいのですが、春子の場合、そのウィルスが遺伝子を傷つけたために白血病になってしまったということなんです。」
「病院からの補償は?」
「ええ、ありました。とはいっても雀の涙ほどですし、骨髄移植をすれば治る、ということでしたが、骨髄移植って、適合する人がなかなか現れないらしくて、それにたくさんの方が移植手術を待っているんです。もう、抗癌剤の副作用で日に日に衰弱していきますし、何よりも本人にとって辛かったのは、あの綺麗な黒髪を失ったことです。まだ二十歳そこそこの、花でいったら一番綺麗な盛りじゃなりませんか?頑張れなんて言葉、気休めにもかけられませんでした。」
「それで、ファイの証人に?」
「いえ、それだけでは・・・・・・。白血病患者とその親族、遺族が情報交換を行うコミュニティーがあるんです。春子もそこに通うようになりまして、そこでいいお友達ができたんです。とても綺麗なお嬢さんで、春子と知り合った当時、国立のG大学の医学部に在籍していらして、「重病なのに諦めないで勉強してるなんて偉い」と娘も大変元気付けられていました。実際、とても勉強のできる方だったらしくて、でなきゃ治療の傍らに勉強なんて、患者を診ているからいえることですが、薬の影響でほとんど無理なんです。
名前は確か・・・・・・志ノ田比呂さん、っていったかしら。彼女は春子に「もうじき抗癌剤に代わる、効果の高くて副作用の少ない新薬ができるから、それまでがんばって」って励ましてくれてまして、それで春子のほうも、とても期待していたんです。
でも、それからしばらくして比呂さんとの音信が途絶えてしまいまして。やっぱりそうなのかな、って思っていたんですけど、でも春子がどうしてもハッキリさせておきたいというものですから、知り合いの方に訊いたんです。そしたら、比呂さんがおっしゃっていた、抗癌剤の未承認薬の臨床実験に参加していて、その最中に亡くなられていたそうで。ほんとに惜しい方でした。
さすがに、あの時の春子の塞ぎようといったら、末世が到来したみたいな悲壮な顔で・・・・・・そんな折、あの宗教のことを知ったのです。」
「しかし、どうしてファイの証人を選ばれたんでしょう?」
「なんでも、病気を治すとかいうらしくて。でもその宗教ときたら、何かにつけては金、金、金で、しかも最後にはあんな無残な殺され方をして・・・・・・。」
夫人は嗚咽を堪えると立ち上がった。
「たしか、その宗教が発行してる冊子があったと思います。ちょっとお待ちになって。」
口を開く間もなく、夫人は客間を出た。
気まずい空気だけがずっしりと二人の肩にのしかかっていた。
前田はお茶を啜ったが、すでに冷たくなったお茶はただ渋いだけだった。
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