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俺は小説家を目指している。

177イチゴ大福:2005/02/25(金) 13:02:41 ID:YKzgiseg
24.犬の町のひとたち。Fanatic for the fantastic. ④
前田は大学に問い合わせ、応援団団長の住所と氏名、連絡先を教えてもらった。前田は対応した事務職員に「あくまで参考までに訊きたいことがあるだけ」だと念を押したが、職員の表情は硬直していた。無理もない、一週間で七人も同じ大学から被害者を出したのだ。この時期に警察に事情聴取を受ける人間がどんな誤解を受けるかは想像するまでもない。
「で、その応援団長が名簿を持っているのか?」
「私は応援団にいたことはないので詳しくはわかりませんが、学内では非常に優遇されていたことは確かです。新入生の勧誘でも、やはり情報がどこからか流れているらしくて、応援団の勧誘がきたのを覚えてますよ。」
「今の若いのが、応援団なんて、汗臭いうえに男臭い集団に入るのか?信じられんな。」
確かに、応援団ははたから見ていても大変そうだとは思っていた。
完全な縦社会で、軍隊並の上意下達が徹底されており、服装はたいがいジャージか学ラン。髪型も長髪や茶髪などいるはずもなく、昼休みには図書館前の広場で応援歌の練習をしている。この歌声に何度、図書館でいらいらしたか分からないのは、何も前田だけではないはずだ。
最近の音楽の傾向やファッションには疎い前田だったが、渋谷に深夜までたむろする中学生の存在や、B系と呼ばれるようなファッションが、どういう音楽を愛好する人たちに好まれるかくらいは知っていたので、さすがに時代に変化に適応できず、あとは化石のような、緩慢な死を待つだけの死に体になっているのでは、という考えが頭の隅にはあった。
しかし、大学の事務がその連絡先を教えてくれたということは、まだ顕在ということなのだろう。「さすが」と思う反面、「どんな人間がやってるんだ?」という不安が頭を擡げていた。一瞬、黒ずくめのジャージ姿でスノーボードやラップを歌っている団員の姿が思い浮かび、噴出しそうになった。
団長の茂田井勝宏は現在学部の三年生で、四月には四年生になる。団長役の引継ぎは既に終えているらしく、三年の茂田井が団長についていた。
彼のアパートに着くと、アパートの前で茂田井と思しき男子学生が、学ラン姿で待っていた。団長にしてはどこか貫禄に欠けていた。
おそらく学生事務から連絡があったのだろう、この風の強い中、よく外で待つものだと感心する反面、愚直さが滑稽に感じた。
「おはようございます、群馬県警の大洗警部です。こちらは前田巡査長。どうぞよろしく。」
「お勤めご苦労様です!私くしは茂田井勝宏であります。以後よろしくお願いいたします!」
深々と頭を下げた茂田井に大洗は呆れた顔をしてみせたが、前田は無言でそれを諌めた。大洗も「お付き合いなら仕方ない」といった顔で茂田井に向き直った。
「ちょっと訊きたいことがあるんですがね。在学生の名簿って、持ってます?」
茂田井は「はぁ?」という顔をしたが、気を取り直して答えた。
「ええ、新入生のでしたら持っておりますが。」
「それは、学生全員分載ってるの?」
「新入生だけです。勧誘に使うので、新入生以外はあっても意味がありませんので。」
「そう。ところで、その使い終わった名簿ってどうしてます?」
「管理しておりますが。」
「誰かに売ったり、渡したりしたことはあります?」
「いいえ、それはありません。」
「絶対?前の団長とか、過去に誰かに渡ったことってないの?」
大洗の顔が徐々に刑事のそれになっていく。「隠しても無駄だよ、だって僕ら刑事だもん」といわんばかりの言い知れぬ迫力が、茂田井を圧迫していた。
茂田井は少し考え、そして重たい口を開き始めた。
「私は末端ですので、詳しいことは分かりませんが、昔はそういうことがあったというようなことは聞いています。」


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