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俺は小説家を目指している。

171イチゴ大福:2005/02/22(火) 18:21:42 ID:o5whT8Qc
21.金の生る木。Fanatic for the fantastic. ①
昨夜遅くから降り始めた雪は関東一帯を久しぶりの雪で覆った。
電車やバス、高速道路や空の便で一部支障がでてきてはいるが、前田がタイヤ交換のために外にでたころには雪はだいぶ小降りになっていた。
日本海側から張り出した低気圧は、日本海で水分を含み、偏西風にのって関東平野に吹きすさぶが、赤城や浅間、榛名といった山々で雨となり雪となって降りつくすため、いわゆる「空っ風」と呼ばれる冷たく乾いた風が吹くことになる。太平洋側からの高気圧が北関東に上昇すると、今日のような、晴れていながら雪が降るという面白い天気が見られる。
前田は奥さんの軽自動車もいっしょにタイヤを交換した。群馬では一人一台自家用車の風潮があるが、実際車がないと不便どころか生活ができないといっていい。公共交通が発達していない地方都市ではどこも似たようなものだと感じるかもしれないが、群馬は異質だ。
自動車の所有に関する執着と、それによるステータス意識が他県とは度合いが違うかもしれない。その分、前田のようにタイヤ交換で苦労する人間も多くいるということだ。
三日ぶりのまともな朝食にありついた前田は、おそらく人よりも温かい飯のありがたみを知っている人間だろう。十分で食べて仕事にいくはずだったが、ついついじっくり一時間も食卓についていた。何も食事だけで一時間もかかったわけではない。日頃、なかなか時間が合わないだけに、生活にかかわる雑事を奥さんと話し合ったりしていたのだ。保険や住宅ローン、自動車のローンに教育費と積み立て。積み立てとはいっても家計は火の車だ。積めるほどあるわけがない。
「このまま積み立てて、まぁこの子を大学まで出すとしてよ、今のまま定年退職まで働いてだいたいこれくらいの生涯所得でしょう?そこに退職金がはいって、これくらい。ここからローンと金利を差し引いてだいたいこれくらいね。」
前田がその額を見て驚く。普段事件のことばかり考えている彼には予想だにしなかった金額だ。
「す、少ないな?」
「年金の受給額はどんどん先延ばしにされてるでしょう?現段階だと年金が受け取れるまでに何年か空白期間があるのよ。でも、この金額じゃ生活できないでしょう?」
「す、すまない。」
前田はうなだれた。奥さんは笑って返す。
「別にあなたを責めてるわけじゃないのよ。だから、今から何かしらの資産運用を考えようと思うのよ。それでね、この前銀行に行ったとき、今積み立ててる定期預金が結構な金額になってるでしょう?どうせ金利なんてついてもないようなもんなんだから、少しずつ運用してみませんかって誘われて。」
「株やるの?」
「どんな銘柄の株を買うかは銀行が紹介してくれるんだけど・・・・・・」
ほとほと金には無頓着な前田は一時間ほどで食卓から離れた。結局は奥さんに任せるのが一番うまくいくのだということを、彼は経験的に知っていた。もちろん、前田もサポートはする。だが、前田にできるサポートは、彼女が前に踏み出すためのあと一歩を後押しすることだけだ。
「良さそうじゃないか。君がそんなに自信があるならやってみたらいいよ。」
とはいいつつも、実際彼には株の何がいいのかわからなかった。
「財形貯蓄?資産運用?非課税対象銘柄?」
彼の疑問がどんなに空回りしていたとしても、時間はとどまることを知らない。
捜査本部が設置されている高崎警察署に到着した彼はまっすぐ会議室に向かった。案の定、大洗はパイプ椅子をベット代わりにして眠っていた。自宅には帰らないのだろうか?
前田はコーヒーを淹れ、それを簡易テーブルの上においた。
「警部、おはようございます。気持ちのいい朝ですよ。」
いうと、大洗はいかにも不機嫌そうな顔で前田を睨んだ。
「まったく、寒くて眠れやしなかった。暖房くらいけちんなや!」
「コーヒー淹れました。どうぞ。」
それを見ると大洗は手元にあったスティック砂糖を二本とクリームをたっぷり入れた。
「甘そうですね。」
「甘くないコーヒーなんざコーヒーじゃない。」
「ドイツの諺ですか?」
「そういう人間もいるという例えだ。」
カップを飲み干し、今度は自分でコーヒーを注いだ。
「で、どうだった、梧桐冬樹の動きは?」
前田はバックから梧桐冬樹の調書を取り出した。


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