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俺は小説家を目指している。
162
:
イチゴ大福
:2005/02/18(金) 19:06:35 ID:8efMvF4U
15.不可逆的遡及の旅。Guest in crime scene. ⑤
彼は朝食を平らげると日吉キャンパスをあとにし、横浜市内にある古びたビルに入った。一階の入り口には各階に入っているテナントや企業の名前が張り出されているが、五階あるうち、表札がでているのは二件だけだった。
彼は目当ての表札がまだあることを確認して、人ひとりがようやく通れる狭い階段を上っていった。確か五階以上の建築物にはエレベータの設置義務が建築基準法であったはずだと彼は思ったが、どうせ目的は三階だった。
黴臭い廊下。陽もろくに差さない。廃墟と見紛う埃の堆積の上にはいくつもの足跡が残っていた。
曇ったガラスのドアを叩く。擦りガラスなどではない、自然の偉大な作用がガラスに“曇る”という効果を与えたのだ。このビルは“管理”という概念がとうの昔に忘却されていた。
「はい?どちらさん?」
中からぶっきらぼうな男の声が聞こえた。
「前田だ。開けてくれ。」
「前田?・・・・・・おお、お前か!今開けるよ!」
そういってドアを開けたのは、すらりと痩せた長身の男だった。前田よりも身長は高いが、ボサボサの髪とよれたシャツ、無精髭のために前田より老けて見えた。前田は右手を差し出した。
「久しぶりだな、間良。元気だったか?」
間良と呼ばれた男は握手した手を引き寄せると、前田を強く抱擁した。前田も思わず笑顔が綻ぶ。知らない人間が見たならただのゲイが廊下で不謹慎なことをしているのだと考えるだろう。
「お前こそ!来るなら連絡くらいいれてくれればよかったのに。」
「今日は仕事でたまたま来たんだ。」
「警察も大変だな。まぁ入れよ、コーヒーくらい淹れるぞ。」
間良は前田を中に入れると、ソファに案内した。オフィスらしいが、ソファが一つと丸テーブルが一つ、本がびっしりと詰められた小さな書架があるだけで、あとはコンピュータの器材や配線で足の踏み場もなかった。
「いつ以来かな?もう一年は会ってなかったんじゃないか?」
「去年はほんとに偶然だった。それに、去年の再会だって十年以上も間があったんだからな。」
「まったくだよ、高校の同級生が、一方は警官、も一方は犯罪者として再会するなんて、何かの縁を感じたな。」
そういって笑いながらコーヒーをなみなみとついだカップを二つ、テーブルの上に並べた。
間良は前田の高校時代の同級生で、性格も志向も違うがよく「うまい店がある」といってはいっしょに食べに行っていた。元々、お互いがバイク好きということも、二人が仲良くなるきっかけになったといえる。そんな二人も、高校卒業と同時に音信不通となる。前田はT経済大学に進学し、間良は一浪したあとY国立大学の工学部に進学した。間良は大学在学中にネットワークセキュリティに関する開発で特許を取得、これだけでも充分すごいのだが、すぐ後にベンチャー企業を起ち上げ、大学は中退している。このボロビルの外観からは想像のつかない技術の持ち主なのだが、セキュリティ技術のプロだけに盗まれて困るような情報は秘密の場所に“隠している”のだという。
お互い多忙であり、同級会にも顔を出さないものだから、もうお互い忘れかけていた。そんな折り、偶然再会したのである。
彼はいくつかの企業と契約を結び、セキュリティ部門で開発の委託をしていた。そんな折り、彼が、自分が開発したシステムのセキュリティの脆弱性を突き、企業のサーバをダウンさせ、そしてシステムの脆弱性を補強し、彼自身がアップデートするという、よく意味の分からないことしているという通報があった。自分のシステムの信用を落とせば顧客はつかなくなるのではないかと思うのだがそうでもなかったらしい。とにかく、彼と取引をしている企業からの通報で調査した結果、事実が明らかになった。事件には私も関わっていたが、今でもこうして彼が仕事を続けていられるのは、警察と取引があったからだ。警察の捜査に協力すれば、今回の事件は目をつぶるというものだ。彼はその取引に応じ、警視庁ハイテク犯罪対策室のアドバイザーという地位についている。
前田の周囲には頭の切れる人間が何人かいるが、彼もまたその一人だ。
「逮捕するまでまさか間良というのがお前のことだとは思わなかった。」
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