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俺は小説家を目指している。

158イチゴ大福:2005/02/18(金) 13:06:22 ID:Ts3L3Et6
13.前田くん、なにかに気づく。 Guest in crime scene. ②
どうせ誰も見ないだろうとたかを括って調査書類を持ち出した前田は、自宅で事件の詳細を記した調査書類を読んでいた。
あれだけ家族の心が離れるのを心配しておきながら、やはり仕事から離れられないのは職業病なのだろう。理解ある奥さんだからこそ、そんな前田の横暴を容認できるのだという見方もできないことはない。
子供と遊ぶといいつつもすでに三歳になる娘は彼の膝の上で眠っており、そんな彼の周囲には陰惨な女性の殺害現場の写真が散らばっていた。
「ちょっとぉ!娘がいるのにそんな写真出さないでよ!」
奥さんが怒った顔で前田にいう。前田の反応は鈍い。仕方なく奥さんは写真を拾い始めた。
「そういうの教育上よくないでしょ?それにもうモモちゃんってば寝てるじゃない。寝床に連れて行って寝かせてあげて。」
前田はきりのよいところで書類の束から目を離した。書類を置き、娘のモモを抱き上げる。
“李下”と書いて“もも”と読む彼女の名前は、前田の父が考えたものだった。
「李下に冠をたださず。今時はやらんかもしれないが、重要なことだ。私はそのためにだいぶ損をしたからな。今だからいえることだよ。」
そう苦笑いをした父の顔を、彼女の名前を呼ぶたびに思い出した。
いずれ、彼女も自分の名前の由来を知りたがるときがくるだろう。その時、彼はなんといって教えるのだろうか?その時考えればよいことかもしれない。・・・・・・いや、そのときは父のところへ連れて行こう。そして父から直接聞かせよう。彼女は父に似ている気がする。前田はそう思い、眠った我が子をベビーベットに寝かせた。
居間に戻ると、奥さんは本を読んでいた。小さな学習塾で教えている彼女は、元は中学の数学の先生だった。もし彼が中学生のとき彼女が先生だったなら、今頃彼は数学博士になっていたかもしれない。しかし、現実はそんなにうまくもなく、かといって悪くもなく、何が起こるか分からないものだ。それが彼と彼女の結婚の原因と結果といったところだろう。
「明日も仕事?」
「うん、ちょっとでなきゃならない。」
「毎日大変ね。」
「君は?」
「私は明日休みなの。買い物に行こうと思ってて、もしあなたが休みならまとめ買いできたのにね。」
そういって笑う。前田には心苦しい笑顔だ。
「新聞で読んだ。T経済大学の事件の担当でしょ?大変だね?」
「今日も三件の殺しがあったんだ。」


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