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日本企業の生き残り作戦

214凡人:2014/02/08(土) 06:11:56 ID:bwiS95oU0
>>ヒュンダイの競争力の源泉

 ホンダは緊急的な商品対策を「シビック」へ実施したが人気の格差は簡単には埋まらない。過去はほとんどなかった「エラントラ」とのクロスショップ比率(比較対照に挙げるユーザーの比率)は大きく上昇し、ホンダのコンクエスト比率(他社のブランドを奪う比率)は60パーセント超から55パーセント程度に下落した。「シビック」へは1500ドルのインセンティブ(値引き)を付与する中、供給が追い付かない「エラントラ」は値引きなしでユーザーを待たせる人気を博したのだ。

 装備差を調整した「シビック」と「エラントラ」の価値分析に基づけば、価値差は緊急対策直後でも2000ドル以上開いていたという。実売価格の10パーセント以上の差があれば、コモディティ傾向の強いコンパクトセグメントでは決定的なギャップである。ブランドバリューで500ドルの差を埋めたとしても、残りは「シビック」の値引きで埋めるしかない。2012年にホンダは新車発売後わずか18カ月で異例の大幅改良を「シビック」へ実施し、弱点を克服した同モデルは漸くその存在感を取り戻す。

 ヒュンダイグループは、現会長の鄭夢九(チョン・モング)の経営支配のもとで、現代自動車、起亜自動車、現代モービスの循環的株式持ち合い構造を構築し、一元化した戦略で経営を行う。このような経営体制に移行できたのは1998年の経済危機から這い上がってきたからこそである。2000年代に飛躍的に拡大し、VWと並び日本車の強力なライバルに成長した。韓国自国市場シェアは80パーセントと独占に近い存在感を誇示するまでになり、そこから生み出す高収益を、中国、インド、チェコ等の新興国に先行投資し強い基盤を構築している。欧州自動車メーカーからエンジン技術と先進的なデザイナーを導入し、商品性を一気に高めてきた。長期化した韓国ウォン安によるコスト競争力も大切な牽引役であった。

 ヒュンダイグループの構造的な競争力は大きく4点あると考えられる。第一に、韓国国内の人件費、素材費、エネルギー費の低さがもたらすコスト競争力と、長期にわたって続いたウォン安効果だ。第二に、起亜のグループ化以降に進めた統合プラットフォーム戦略にあり、24個のプラットフォームを6つのプラットフォームへ集約(小型、中型、大型、スポーツ、フレーム、LCV)した効果にある。第三は現代モービスを中心とする系列サプライヤーを育成し、組立モジュールのアウトソーシングによる品質改善とコスト競争力の引き上げ。第四は、持ち合いに伴う独特のガバナンス構造と鄭夢九の経営力にある。

 構造改革の効果を戦略的に引き出したヒュンダイは見事であった。ただし、ヒュンダイの今後の成長が苦難なく約束されたものだと短絡的に考えるべきではない。トヨタとVWにヒュンダイを加えて新ビッグスリーだという声もあるが、それはいかにも過大評価だろう。独自性の高い技術力が十分に内部蓄積できているとは思われず、日本メーカーが油断している隙に、導入技術で競争格差を埋めたというのが実態に近い。2014年から本格化する次期新車の投入サイクルの中でどの程度日本車を突き放せるかはヒュンダイの未来の成長力を図る重要な試金石であり注目すべきだろう。

 労働生産性悪化の懸念が強まる韓国の産業構造にも危うさがある。現在のウォン高が続くなかで、自国でのものづくりの国際競争力を本格的に強化できなければ空洞化のリスクを伴う。自由貿易協定(FTA)推進の反動として独占に近かった国内市場へ輸入車の本格侵攻が始まっている。ドル箱の自国マーケットがいつまでも金のなる木とは言い切れない。1980年代の日本車の歴史を振り返っているようにも見えるが、こういった挑戦を乗り越えてこそ本物の力が育っていくはずだ。

中西孝樹 著『トヨタ対VW(フォルクスワーゲン)』(日本経済新聞出版社、2013年)「第1章」から

中西 孝樹(なかにし たかき)
(株)ナカニシ自動車産業リサーチ代表。1994年以来一貫して自動車業界の調査を担当し、日経金融新聞・日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門、米国Institutional Investor(Ⅱ)自動車部門ともに2004-2009年までに6年連続1位と不動の地位を保った。2011年にセルサイド復帰後、日経ヴェリタス人気アナリストランキング、Ⅱともに自動車部門で2013年に第1位。1986年オレゴン大学ビジネス学部卒。山一證券、メリルリンチ日本証券等を経て、2006年からJPモルガン證券東京支店株式調査隊、2009年からアライアンス・バーンスタインのグロース株式調査部長に就任。2011年にアジアパシフックの自動車調査統括責任者としてメリルリンチ日本証券に復帰。2013年に独立しナカニシ自動車産業リサーチを設立。
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