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3.11以降の世界と現代文明のゆくえ
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:
藤原肇
:2012/08/09(木) 12:10:15
それに加えて同時進行して起きた事件があり、その強烈な印象が私を痛打していたので、山師的な石油にまつわる仕事に関して、私が懐疑とためらいの気持ちを抱き、水離れをしようという気にはとてもならなかった。かつて商社の資源開発コンサルタントとして、ヨーロッパやアフリカで仕事をした経験は興味深かったが、資源開発にまつわる話は「戦争の犬」の世界であり、時にはクーデタが起きて急いで逃げたことや、諜報にまつわる嫌な体験を味わっていたので、社会人としてはまともな仕事をしたいと考えて、この水のシンクタンクで仕事をしようという気持ちになっていた。だから、サウジの国土開発計画は予想外だったが、新しい体験として好奇心に満ちた姿勢で臨んでいたので、いろんな国から来ている人とも親しく交際し、銀行のマネジャー、大学教授、今サルタン会社の代表など、各国から来ている人たちと食事したりして付き合い、一種の仲間的なグループでの交際パターンが出来ていた。
ところがある日突然このパターンが崩れたのであり、そのきっかけはヨーロッパで戦争が始まったらしいという情報が届き、それがこの異変を発生させたのであり、その事件はプラハの春といわれた1968年の夏の事件で、ソ連軍がチェコの首都プラハをタンクで制圧したのだった。迂闊にもこの事件が勃発する前の私は気を許し、私の周辺にいた人間の多くが情報関係の人であることを忘れ、気軽に付き合っていた自分の油断に気がつき、これは大変な世界に再び紛れ込んだと覚ったのだった。そういえば、わが社の現地支配人も担当副社長の経歴からして、海軍出身だったと遅ればせながら思い出したが、海軍出身はメカに強くて外国を知り言葉を幾つも使いこなし、諜報機関で活躍する適任の人材であるから、その筋の人間であることは疑いの余地がないと判断した。ところが、私はそんな筋とはまったく関係がないのに、他の人は私も彼らの仲間だと判断しているとしたら、そんな嫌な世界から逃げ出すことが最良の選択になる。
そこで考え付いたのがアラビアのロレンスの物語であり、T.E.ロレンスの著作を活用するということを思いついたお陰で、パスポートを取り戻してサウジ脱出を実現したが、それが今度は私とロレンスを深く結びつけることになった。東京の母やスイスやフランスにいた友人に依頼して、T.E.ロレンス関係の本をサウジに送ってもらい、それを使って英仏が中東の資源権益の争奪戦をした歴史を復元し、そうしたことに気づいているとほのめかして、出国許可とパスポートを手に入れた経過に関しては、いずれそれを活字にする機会があるとおもう。あるいは、軽率にもどこかに書いてしまったかもしれないが、危機からの脱出は自分の頭を使って考えることに決め手があるが、下手なやり方をすると砂漠の中で姿を消し、簡単に一巻の終わりになりかねないのがこの世界で、その訓練と切磋琢磨が生き延びた秘訣すも知れない。この体験がフランスに戻った私が文学部の英文学科に学士入学し、T.E.ロレンスの『知恵の七本柱』を読破するきっかけを与え、『山岳誌』をジョナサン・ケープ社版の『砂漠の反乱』を手本にして、終生一代の本に仕上げた原動力になったのである。
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