題名に藤原さんを語るときに切り離せない山を取り入れている点で、
スコットさんの『Mountains of Dreams』という題名にもたいへん心
動かされたが、Field of Dreamsというタイトルの野球映画の題名に
似ていることと、藤原さんの志と体験は夢ではなく作品を通じて、
今日も現実に我々の心の中に存在し続けているという点で、Dreams
以外の解がないか検討してみた。
その点では『Carp-shaped streamers in Grenoble』(グルノーブルの鯉幟)
という題名が、読者が、実際には掲げられることがなかった2匹の鯉幟がグ
ルノーブルの空ではためくようなすがすがしい読後感を味わうことができる
本書に相応しい題名の一つではないかと思う。
また、実際の山男でありかつ知のアルピニストである藤原さんの宇宙巡礼
の全体プロセスにおいて、青年時代のグルノーブルでの記念すべき道標とし
てとらえると『Cairn in Grenoble』(グルノーブルのケルン)が相応しく、藤原宇
宙巡礼の重要な一プロセスという意味からは『Pirgrimage in Grenoble』(
グルノーブル巡礼)も捨てがたい題名であると考える。