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【分館】 参考資料スレ
9
:
吉本?髢セ 「詩とはなにか」 思潮社 [詩の森文庫C09]
:2009/11/09(月) 21:32:46
・・・(略記号とする) *(引用者による註とする)
【詩とはなにか】
わたしのように、かきかいことをかく、といった無自覚な詩作者のばあい、
詩の体験はいつも“さめた”あとの夢に似ている。
そのあとに意識的な光をあてておぼろげな筋骨のようなものをとりだすことはできる。
だが、詩的体験からひとつの“さめきった理論”をみちびきだすことは、
とうていおぼつかないのである。
・・・
一九五二年頃“廃人の歌”」という詩の中で
「ぼくが真実を口にすると、 ほとんど全世界を凍らせるだらうといふ妄想によって、
ぼくは廃人であるさうだ」 という一節をかいたことがある。
この妄想は、十六、七歳ころ幼い感傷の詩をかきはじめたときから、
実生活のうえでは、いつも明滅していた。
・・・
わたしがほんとのことを口にしたら、
かれの貌も社会の道徳もどんな政治イデオロギーもその瞬間に凍った表情にかわり
とたんに社会は対立や差別のない単色の壁に変身するにちがいない。*
詩は必要だ。詩にほんとうのことをかいたとて、
世界は凍りはしないし、あるときは気づきさえしないが、
しかしわたしはたしかにほんとのことを口にしたのだといえるから。
そのとき、わたしのこころが詩によって充たされることはうたがいない。
(*この「対立や差別のない」は理想社会と意味するのではなく、
“私”を疎外するという意味でひとつのかたまりとして壁になる、という意味だと思う)
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