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【議論】武士道
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理想と現実
:2002/10/24(木) 02:39
サムライの伝統の存続は、文筆のうえでの現象をはるかにこえたことで
ある。サムライ階級が廃止されても、サムライの理想は力強く疑われる
ことはなく生きつづけた。今日ですら、日本人の態度と行動から、しばしば
サムライの家系の出身者と平民を見分けることができる。日本の戸籍簿
から士族と平民の区別が消えたのは、日中事変が始まってからである。
戦前の公立学校の教科課程は、少なくとも第二次世界大戦のすこしまえ
までは、意図的に軍事にたいする関心を刺激もしなかったし、大学学部
の軍事教練も義務化されていなかった。明治時代の学校制度は自由な
視野をもち、倫理教育の題材もさまざまな分野から広く採用されたので、
サムライの伝統の入る余地はあまりなかった。近代の日本人がすすん
で生命を投げ出し、耐えがたい苦痛をも我慢したのは、政府の宣伝のせ
いだとするのは重大な誤りだろう。
国家全体の利益のために個人の生活と幸福とを顧みず、自己を犠牲に
しようとする熱狂のすべてが、サムライの伝統によるもではない。日本人
の心の両極には、個人よりも人間巣箱の欲求を優先させる部族精神と、
自己放棄のなかに「宇宙の魂」あるいは「仏陀」との一体感にひたる最高
法悦をみる、神秘的な魂とのふたつが存在する。人間道徳の限界の間で、
騎士道倫理に類する「サムライの道」が中心的な地位を占め、両極から
推進力を吸収する。
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