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哲学・宗教質問箱

559sekko:2012/02/19(日) 07:50:45
mimemegeneさまへ
あのテキストは、フランスでは「アウグスティヌスの祈り」として今でも、教会での葬儀ミサで読まれることがかなり多いものです。最近では女優のアニー・ジラルドの葬儀で読まれたはずです。
いろいろなところに引用もされています。

ソレンヌの葬儀の時にもそのタイトルで読まれ採録されていたので、私は現代フランスの標準的死生観の一端としてあの本にその部分をフランス語から訳して収録したわけです。

すると、このテキストに感動したという声があり、同じものがその後、雑誌に一度、単行本『大人のためのスピリチュアル超入門』(中央公論新社)にも採録されました。

そんなわけで、非常に気になっていたのですが、実は、フランスでそう言われているだけで、元はイギリスの国教会司祭Henry Scott Holland(1847-1918)の説教(1910にエドワード7世の遺体がウェストミンスターに安置公開されていた間の5月15日、セイント・ポール大聖堂で話したもの)の一部なのです。

そして、これは真偽は定かではないですが、それをフランス語に訳したのがシャルル・ペギーだそうで、その訳文があまりにも感動的なのでペギーの祈りとも呼ばれているのです。(ペギー研究者は1996年にこれを否定しています。)

また、今でも、Holland師がアウグスティヌスのテキストにインスパイアされてこれを語ったという話もあるので、もともとがどこにあったのかは私には分かりません。説教全文の中でアウグスティヌスに触れたのかどうか、全文を読んでいないので確かめていません。イギリスでもこの部分だけが語り継がれているように思います。

私もとても気に入ったので、本の中では、若くして命を絶ったソレンヌや遺族に思い入れを入れて日本語訳しました。その思いが通じたのか、それが今でも、mimemegeneさんの慰めとなったことは望外です。

とにかく、英語の原文だったと思われるテキストは今はネットでも読めます。英語では、以下の通りです。フランス語にはかなりヴァリエーションもあります。

? Death is nothing at all, I have only slipped away into the next room.

I am I, and you are you.

Whatever we were to each other, that we still are.

Call me by my old familiar name, speak to me in the easy way which you always used, put no difference in your tone, wear no forced air of solemnity or sorrow.

Laugh as we always laughed at the little jokes we shared together.

Let my name ever be the household word that it always was.

Let it be spoken without effect, without the trace of a shadow on it.

Life means all that it ever meant.

It is the same as it ever was.

There is unbroken continuity.

Why should I be out of mind because I am out of sight?

I am waiting for you, for an interval, somewhere very near, just around the corner.

All is well. ?


フランス語や英語では、「私」や「あなた」という人称代名詞にいろいろな思いを込められますが、日本語では、故人や遺族に合わさないとしっくりこないこともありますね。

その『ヨーロッパの死者の書』を書いてから現在までの間に私は両親を次々と亡くしましたが、両親が別の形ですぐそばにいてくれることは実感しました。生前、日本とフランスにわかれていた頃よりもずっと近くの感じです。

私には死者が勝手に千の風になって吹き渡るとは思えませんが、互いに思いを残した者同士が想起し合うとき、生きていた時のさまざまな障害(距離とか病気とか老いとか・・)を越えてより親密な深い場所で何かが起こるような気がします。両親との「別れ」はその意味で「新しい出会い」でもありました。その「出会い」からずいぶん力をもらえたようにも思います。mimemegeneさんもそんな思いがおありになったのではないでしょうか。

そんなわけで、ちゃんとお答えできなくて申し訳ありません。それでも、このテキストの価値には変わらないと思います。

ご質問していただいたおかげで、ようやくこの件についてくわしく書くことができました。ありがとうございます。

(ここまで書いた後で、思い立って日本語で検索したら、ホランドの詩として『さよならのあとで』というタイトルで今年の1月27日に夏葉社から絵本が発売されているようです。知りませんでした。ごめんなさい。)

http://setukotakeshita.com/


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