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哲学・宗教質問箱

322Sekko:2008/05/03(土) 22:42:26
聖書との付き合い方について
 私の立場でお答えしときます。別にその筋のお墨付きではないのでそのつもりで。

 キリスト教に関しては、紀元1世紀にパレスチナで生きたナザレのイエスという人間が「人間でありそのまま神である」という信仰が基盤になっているわけです。
 そこのところは一応おいといて、ともかく「神が人となった」というのですが、すべての「人」は社会的歴史的存在なので、ナザレのイエスがどういう時代のどういう場所でどういう伝統と共同体意識の中に生まれたかということは彼の「人間」の部分にとって大きい意味を持っています。
 たとえば、ある人が突然「神懸り」になってそれ以降は生き神として機能し、それ以前の個人史は問題にならないとか、逆に、生まれた時から「神の化身とか生まれ変わり」であり普通の人間の文脈からは超越しているんだというタイプの宗教もあるでしょう。
 でも、キリスト教では、ナザレのイエスというユダヤの歴史や伝統を背負って生きて死んだ男が神としていかにして普遍宗教の核になったかを、弟子たちが書きとめたわけです。彼らの宗教がはじめにユダヤ人の間で形成されたことは、イエスが救世主となることを「ユダヤの聖典の成就」であるという「後付け」がなされたことを示しています。
 それで、旧約聖書の部分は、それが「文字通りの絶対真実」というプレゼンテーションではなく、イエス・キリストがどういう「時代と文化の文脈に生まれたのか」、そういうコンテキストの中でその民族的枠をどのようにして突破して普遍宗教〈地縁血縁を救いの条件にしない宗教〉に展開していったかの道筋を残す部分です。イエスの教えや行動は、他の普遍宗教の開祖と同様その社会では革命的であったにせよ、だからこそ生きた時代や伝統からインスパイアされたものであります。
 旧約聖書があるからこそ、イエスがどういう人間であり、弟子たちがどういう風にイエスを理解したかが私たちにも追体験できます。
 新旧聖書のおかげで、イエスの人間としての文化的社会的ルーツをも知ることができ、それを、使徒たちや初期教会の人たちが、どのように新しい世界観を提供し、戒律主義や偶像崇拝や権力維持に陥りやすい人間の性向からその犠牲者である弱者を解放していくシステムを作ったのかがよく分かります。

 人はどのような身分に生まれてどのような能力を持っているかということでは評価されず、それをいかにして運用するか〈=自分より弱い者に仕えるか〉が大事なのだというガイドラインを示した点では、「・・・するなかれ」の古典的で形骸化しやすい戒律主義から一歩進んだ倫理感も提供しました。

 キリスト教の歴史の中では、聖書を文字通りに解釈してそれを知識や行動規範としておしつけるというような蒙昧主義や教条主義も何度もありましたし、今もあると思います。逆に、それに反発して、すべてはシンボリックだとか比喩だとか、神話だとか、文学だとか言って、「イエスという手本にすべき立派な人間の物語」だとか、その他多くの道徳や宗教や哲学のテキストの一つに過ぎない、と位置づけるとかの、矮小化や相対化の流れもたくさんあります。
 いろんな読み方読まれ方をすること自体は、他人に抑圧的にならない限り、別に自由でいいんじゃないでしょうか。

 けれども、

 旧約の世界に養われて、
 新約の世界が突破して、
 時空を超えたメッセージとして、
 今、現在も、平和と利他の実現のためにキリスト教を生きている人も実際にいるわけです。

 そういう存在の根っこの部分で人を連帯に導くために突き動かす力は、聖書には充分あると私は見ています。

 各派教会筋の方にはそれぞれの立場上いろいろあるのでしょうが、大羊さんは、今の所、とりあえず、旧約はイエスの人間の部分の理解とキリスト教の生まれたユダヤ世界の共同幻想〈と言って悪ければ伝統的世界観とか歴史観〉を知るための資料集、新約はその中で生まれたイエスの生と死と復活が、旧約的文脈の中でどのようにして世界宗教となるほどの信仰の普遍性を生んだのかを語ってくれる「証言」集、というスタンスでお付き合いすればいいんではないでしょうか。
見方を、あるいは崇め方?を押し付けられても、別に、それで信仰が深まるとかいう問題ではないと思いますけど。それで信仰が深まるならただの洗脳でしょ。

 あと、新約に関しては、逆説的な表現が結構多く、それが魅力にもなっているので玩味できるのでは?

 このテーマについて、私にとって聖書はこうだったけど、今はこうなった、という体験談とかあればどうぞ。アドヴァイスの場であっても論議の場にはしたくないのでよろしく。


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