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哲学・宗教質問箱

12sekko:2005/06/23(木) 18:49:20
受精卵について
 ごめんなさい。私の言葉が足らなかったようです。言いたかったのは、どこが脳になるかの体軸の決定によって、他の全ての器官の場所も決まってくるということです。受精卵は、分裂して胚細胞になりますが、それが試験管の中での人工授精の段階では、その後どこに何が出来るのかわからず、それを決定するのは、受精卵を子宮に戻して着床したときだということです。つまり、子宮という環境のない受精卵は、それが志向している有機体を実在可能態として身体化する能力を自己のうちに持たない、確かに生きているが、魂を入れられた生命体ではないというのです。
 ショウジョウバエとかの受精卵ではそういう位置信号が卵胞細胞から発せられますし、鶏では体軸は重力によって決定されるそうです(円盤状の胚が垂直線に対して45度の角度で卵黄の上に浮動し、その下方の突端が頭になる)。哺乳類では、卵が母体を離れないので、早い時期における体軸決定の必要がないそうです。だから、試験管の中でもう細胞が64分裂してても、その一部を任意に除去しても欠損が埋め合わされ、しかし一度体軸が出来たら、欠損は修復不可能なのです。
 カトリック教会は、人は受精の瞬間から生命であり妊娠中絶は罪といってたのですが、1996年にイギリスで、冷凍していた3000の受精卵が廃棄された時に、それが堕胎かどうかが議論されました。結局、(体軸の)位置信号のない受精卵はまだ胚とは言えない、形成原理を受容する能力はあってもそれを生み出す能力はないからというのが合意になったようです。このレポートは、日本語では、上智大学神学会の『神学ダイジェスト』(1998年冬号No85)で読めます。ちなみに、この号は、生命科学と倫理の特集ですが、すばらしい論考がたくさんあります。
 そんなわけで、脳が生命の中心というより、生命は環境とともにはじめて成立するという、含蓄ある話です。
それにしても、人工受精卵の廃棄が子宮外堕胎に相当するかどうかなんて、カトリック神学者以外にとってはどうでもいいようなことを真剣に考えて、詭弁を弄するのかと思えば、最新の発生学の成果を駆使してここまで深い洞察に達するイエズス会、あなどれません。


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