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alpha-archive-11 北 勲 斜光作品

9資料期管理請負人:2014/03/03(月) 23:01:27
巻頭言 7号/鳩と文学
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〔巻頭言〕 7号/鳩と文学 2002




二〇〇二年五月二十八日午後六時ごろ



清少納言、聞いてください。
走り梅雨が長引き、
曇りや雨の日が多いこの頃だけれど
今日は晴れ。
夕空は天心の青味も空の底の焼けた赤味も
淡いです。

鳩を放って二十八羽。
まだ互いに馴れない雛鳩ばかりで、旋回は三々五々。

餌やりの合図を鳴らすと
鳩は鳩小屋の屋根に降り立つ。
小屋は、こんもりとした鬱翠(うつすい)の林が開いた扇なら、(ここから見ると)
その要(かなめ)の位置に白く納まって、そそり立っている。

一羽が戻らない。
一羽また一羽次々に小屋へ落ちたけれど、
紅栗(べにぐり)の一羽だけが遠くへ行ってしまった。
紅栗は生まれて今日が初めての飛翔(ひしよう)なのです。

前期更新世、聞いてください。
ここはあなたの時代にできた地層の山間(やまあい)です。
今では電車がしげく行(ゆ)き交(か)います。
こちらの山は果樹園。向うの山肌はのどかな農場となって、
今の季節黒みを増した翠(みどり)の林が守っています。

電車に明かりが灯った。
夕日は茜色を独り占めして沈もうとしている。
見返れば、空に黒い粒が。それもこちらへ赴く。
 (ようやく)戻ったぞ。
 いや、燕だ、燕。

 太陽は、沈んだ。
 電車はもう、移動する長い光だ。
  一羽が戻らない。
  いやあ、また明日だ、明日のことにしよう。

太陽、聞いてください。あなたが生まれて四十六億年の今、
鳩と文学。
なんの足しにもならないけれど、
こうやって人間たちは命を延ばしています。


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