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alpha-archive-11 北 勲 斜光作品
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:
資料期管理請負人
:2014/03/03(月) 22:53:32
巻頭言 創刊号/シャボン玉
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〔巻頭言〕 創刊号/シャボン玉 1996
もうろくしたせいか、かげろうとしんきろうの区別がつかなくなった。幻のようなもの
であれば、時にかげろうと言い、時にしんきろうと言うてしまう。そのうちにシャボン玉
と虹との別も怪しくなった。野道を散歩していて、あ、シャボン玉だ、と言うたら、どこ
どこ、と六つの由菜は路傍から立ち上がった。指さすと、なあんだあれのことか、おじい
ちゃん、虹だよ虹。叫ぶように言ってけたたましく笑った。残り少ないのかなあ。家人は
心配しているようなのだ。
おじいちゃん、シャボン玉作ろう、とある日由菜が手を引いた。洗面所で石鹸をぬるま
湯に溶かす。庭へ出た。由菜がストローの先を石鹸水につける。頬を膨らませて吹いたが
液が滴るばかりだ。ストロー先に切込みを入れて広げた。上向きに労わるように吹くと今
度はむっくり現れた。やったあ。風にぷるぷると震え今にも壊れそうだ。筒先を発ち庭を
漂う。しかし柊に触れあっけなく散った。これがシャボン玉なのよ、おじいちゃん。孫は
さとすように私の顔を覗き込んで言った。なら、シャボン玉は人生に似ている。私はスト
ローを借り受け幾つも幾つも放った。
??その晩、宇宙へ深く潜り込んだ。この頃夢想しやすくなってもいるのだ。私自身シャボ
ン玉として浮いている。風船のような十ほどの束だ。愛情を込めて送りだした玉なので、
壊れないかはらはらだ。ほころびれば縫い合わせ、破れればトタンでも何でもあてがう。
円かならんことを願ってそのメンテナンスに奔走する。ほどなく丹精むなしく一つが微塵
となった。がっくりだ。この隙に別のが一つしぼんでしまう。生んでは壊れ生んでは消え、
いつの間にか年月が経ち、残るは一つだけとなった。楽しみはあらかた尽きたし、投げや
りな気持ちがなくはない。
その時である。私めがけて青い手裏剣が飛んできた。こちらはシャボン玉なのでひとた
まりもない。思わずのけぞる。すると両手に余るほど大きくなったところでそれは私から
反れて行く。これが圧倒的に美しい。まず漆黒の中に輝く青がいい。青の中の刷毛ではね
たような白い渦がまたいい。じつに秀麗だ。外は死だというのに、あの青い海に、白い雲
の下に生命は閉じ込められて爆発している。…百五十億年かけてやっとおまえはいるのだ。
有難い、稀なことではないか、この美しい地球に存在することは。…青は次第に小さくな
っていく。私は残ったシャボン玉が無性にいとしくなった。そのシャボン玉はぷるぷると
震えている。
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