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17
:
α編集部
:2014/03/18(火) 11:19:59
徳さんの夢
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徳さんの夢
つい二ヶ月程前、「斜光」の編集会議で徳重雅啓君の消息が話題になったばかりで、彼
が入院しているらしいという報告があった。以前も何処かを手術するといって病院のやっ
かいになっていた事を知っていたので、我々はさほどシリアスな状態ではないと考えて居
た。今回の創刊号には是非寄稿して貰いたいと期待していた矢先の突然の訃報であった。
彼との付き合いは、私が鹿島から佐賀へ転校してきた小学校六年の時からである。私の
家から五十メートルも離れていない立派な屋敷に住んでいて、町内の子供会の旅行にいた
るまでいつも側に居るという腐れ縁のはじまりだった。その頃私に反し彼はがっしりした
体格で、かれも福岡の方から転校してきたらしく我々には妙に聞こえる博多弁で理屈をい
う生意気そうな風貌であった。風呂敷を纏いチャンバラごっこをして遊ぶ時、その頃流行
していた三銃士のダルタニヤンの役を誰がやるかでいつももめていた。
また、彼の家には当時まだ珍しかったハイファイセットがあって、時々彼の父親の目を
盗んではクラッシックの音楽を聴かして貰っていた。私はその頃ハイフェッツ演奏でメン
デルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調のSP盤一枚しか持っていなかったが、彼の家
には既に、SPより繊細でいかにも音のよさそうな色とりどりのジャケットのLPが壁に
沢山飾られていた。
五年程前私は希望の進路を記録した高校の資料を覗いた時、彼はW大の文学部を目指す
と書いているのを見つけた。確かに彼はその当時太宰治に気触(かぶ)れていて、休日の
日などは久留米がすりの着流しで、「かすとり雑誌」に関係しているような退廃的でシニ
カルな雰囲気を醸しだしていた。そしてまた、不思議に男友達にはつれなく女性には妙に
親切で、まだ子供っぽかった私達に男女の隠微な世界の存在を教えてくれたような気がし
た。私は彼がW大や本郷界隈の戦禍を免れて今もたまに見かける、「芳兵衛物語」に出て
くるような木造二階建ての借家を舞台に登場する文学青年を夢みていたような気がしてな
らない。私は今まで彼の夢をはっきりと聞いたことはないが、彼は、はたしてそれが叶え
られただろうか?たとえ現実はそうでなかったとしても私はそう信じたい。
ついに、梁山泊のメンバーから五十四才の若さの一人の魅力ある人物が去って行った。
願わくばあの世で我々のために梁山泊の準備を怠らないように程ほどの酒量に注意し、私
達に妙に聞こえた博多弁、いや今は大阪に就職して以来の妙な大阪弁で天国の人々を煙に
まいて私達が行くまで愉快に過ごして待っていて欲しいと願う。
信
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