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:
α編集部
:2014/02/28(金) 03:25:03
迷い猫
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迷い猫
この山荘を建てBlackberry Cottageと称して今年で七年程になる。かといって名称のご
とくブラックベリーがたわわに実るという訳ではなく、看板に彫られた白い文字がむなし
くみえる今までであった。しかしやっと去年漆黒の実が五つ実った。今年は雑草を刈り肥
料を施して、名に恥じないように実らせようと思う。
ここには様々な野生動物が出没する。そのなかで貂を時々みかけるが、「狐七化け、狸
八化け、貂九化け」といい、テンはキツネやタヌキを上回る変化能力を持つという伝承が
ある。レオナルド・ダ・ビンチ「白貂を抱く貴婦人」や鳥山石燕の妖怪画集「画図百鬼夜
行」やエル・グレコ「白貂の毛皮をまとう貴婦人」など、結構人の興味の対象になってい
る動物である。しかしこの白貂(しろてん)は実はオコジョの冬の毛の色だ。貂は冬でも
鬱金色(うこんいろ)をしていて行動もなかなかの愛嬌ものだ。
一週間程前に迷い猫が我が山荘・Blackberry Cottageの台所の窓を見上げていた。そ
れはちょうど数年前に貂が覗いていた様子のことを思い出させた。昨年の春、そっくりの
白猫が数回わが山荘を訪れたことがあったが、その猫は遂にここには居着かなかった。近
所の人に聞くと親猫は車にひかれて死んだという。そう言えば山の下の集落で親子が大き
な金網製ゴミ集積ボックスの中で餌を漁っている姿をよく見かけていたが、今の迷い猫は
あの子猫だろうか、よく似ていると思った。
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猫は狐や貂のように人を化かすという悪戯はしない。鍋島騒動は、肥前佐賀藩で起こっ
た御家騒動で、鍋島化け猫騒動として有名である。しかしこの話は猫の化けることを主と
するよりも戦国時代の下克上の政争を扱ったもので、主君の怨念を猫が晴らそうとする物
語だ。普通の猫は犬と同様に人の身近に暮らしていて、それだけ人と猫はお互いの性質を
よく知っていて親しいから、化けるという物語を作る必要もないのだろう。
Wikipediaによると、有名なメス猫のタウザーはスコットランドのウイスキー蒸留所、
グレンタレット蒸留所で飼われていたネコの名称である。世界一ネズミを捕った猫として
ギネスブックに登録されたことで有名な猫だ。
タウザーは、スコットランド最古の蒸留所と主張するグレンタレット蒸留所のウイスキー
キャットとして活躍していた。「ウイスキーキャット」とは、主にネズミや鳥などの害獣
からウイスキーの原料である大麦を守る為に蒸留所で飼われる猫の総称である。この習慣
は他の蒸留所でも一般的な事であったが、タウザーはその生涯で28,899匹のネズミを捕獲
し、ギネスブックに記録された事によって一躍脚光を浴びることとなった。
この「28,899匹」という記録の集計は、タウザー自身による自己申告によって成った。
勿論、口頭で申告した訳ではなく、タウザーはネズミを捕獲すると蒸留所のスタッフに見
せに来るという習性があった。ある時期からスタッフがその数を書き留めるようになり、
やがてそれは膨大な数となり、記録を始めた時点から数えて28,899匹となったのである。
尚、タウザーの死後、グレンタレット蒸留所にはタウザーの銅像が建てられその偉業を称
えている。
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その迷い猫は毛並みは全体的に白っぽいが、野良猫生活で薄汚れたのだろう、真っ白と
は言い難い。額と足と尾に微かな灰色の虎模様が入っているので、猫図鑑で調べて見たが
どうも混血らしく判然としない。それでもトンキニーズという種類に雰囲気がよく似てい
る。まだ人に馴れていないので、捕まえて詳しく調べることができない。だから年齢も子
供なのか大人なのか、雄か雌かの性別さえも判らない。しかし目の色はすこぶる美しい。
逆光でみるとスターサファイヤのように深く水を湛える湖の色をし、明るいところで見る
とアクアマリンのような魅惑的で上品でエキゾチックな異国の薫りが漂う。
細君は「モロ」という名前を勝手につけて、私には決して見せない優しさで声を掛け
たり、餌をやっている。その名前のいわれを問いただすと、ミラノ公ルドヴィコ・イル・
モーロから取った名前「moro」であるという。
私に相談することもなく、またそのよりどころも説明することもなかったが、しつこく聞
くと今読んでいるマキャヴェッリに関する本に出てくる人物ミラノ公の名前を頂戴したと
いう。ミラノ公と言えばルドヴィーコ・マリーア・スフォルツァは15世紀から16世紀にミ
ラノを統治していたスフォルツァ家の当主で、フランチェスコ・スフォルツァの四男で、
通称イル・モーロ(Il Moro)である。イル・モーロの異名は「ムーア人」のように色黒だ
ったことからついたと言われている。シェイクスピアの四大悲劇の一つ「オセロ」のよう
な人物だったのか。しかしモーロはフランスと戦って捕まり、最期は獄死したという。ま
た、レオナルド=ダ=ヴィンチが仕えた主人でもあり、ミラノ公の愛妾チェチリア・ガッレ
ラーニをモデルに描いた「白貂を抱く女性」が有名である。
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この「moro」はBlackberry Cottageにて餌にありつき、スーパーからもらってきた
「JA全農・ぐんまのほうれん草」のダンボールー箱を改造した家に落ち着くまでは、真
冬の零下十度の環境に耐え抜き、右の後足を毛皮ごとそっくり赤い肉が見えるほど野生動
物にかじられても生き伸びてきたのだから、結構タフにちがいない。
最初は三度三度の餌だけ食べに来ていて、他の時間は別の場所に寝泊まりしていたようで
あるが、一月経つとここに居着くようになり、テラスにでると足元にすり寄り、私が散歩
に出掛けると後から見え隠れしながら付いてくるようになった。
しかし餌をやったり寝床を提供したりしているが、「ウイスキーキャット」タウザーの
ように野生のままに放置し、家の中では飼わない主義である。また都会のペットのように
着物を着せたり、抱いたりはしないつもりだ。だからこの山荘が居心地が良ければ居着く
だろうし、自由な野良の生活が望ましければ、また山の下の民家が恋しければいつの日か
自らここを出て行くだろう。私はこれまでの己が転居魔であったことを思い浮かべ、この
迷い猫の「moro」の好きなようにさせようと思っている。
18号 2013年4月
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