[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
テーマ前書き集
6
:
編集部
:2014/06/12(木) 15:08:54
第23号 「てふの夢」
第23号 「てふの夢」 2010/5
ももとせの花にやどりて過しきてこの世はてふの夢にぞ有りける(大江匡房・一一五二年
頃)
「てふの夢」の出所はもとより『荘子』。「昔(さき)に、荘周夢に胡蝶と爲(な)る。栩
栩(くく)然として胡蝶なり。自ら喩(たの)しみて志に適へるかなと。周なるを知らざるな
り。俄然として覺むれば則ち蘧(きよ)蘧(きよ)然として周なり。知らず、周の夢に胡蝶と
爲れるか、胡蝶の夢に周と爲れるかを」。ここから「てふの夢」は、ひいては、人生のは
かなさに譬えられる。僕は若い頃より「今ここ」の充実を心がけてきた。とくに僕を夢中
にしたものに、ドストエフスキー、ベケット、現代詩、短歌、俳句、漢詩、ジャズ、チェ
ロ、オペラ、民謡、書道、白川静、絵画、宇宙、地球、生命ほか数十を数える。しかし今
ではそれらの起こす感興は大抵は淡い。いずれも「夢」のようだ。淡々とした毎日で、生
きる意欲そのものが衰えてきていることを感ずる。いつ死んでもいい。若い頃には考えな
かったことだ。自戒を込めて言うが、富岡鉄斎に倣い享年九十まで尻上がり調子に潑剌と
した作品を。この青年の誓いはどこへ行ったか。ところで、僕の手許には寄せ書きされた
日の丸の旗がある。戦死した父のものだ。十年ほど前、戦地沖縄で取得したとして、アメ
リカのある篤志家から還ってきた。「祈武運長久 為北傳吉君」のもと、五十ほどの名が
連なる。旗には特段の汚れもある。汚水か。しかしはっと思った。違う! 血痕だ、父の!
この日章旗は七十年前の日本帝国の夢だった。そして三十五歳で絶寿した父の人生の夢
もそこに重なっている。旗を前にして悄然と「生きる」を思う。
神野 佐嘉江
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板