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昭和初期抒情詩と江戸時代漢詩のための掲示板

596やす:2011/11/05(土) 15:49:40
雑感
 大牧冨士夫様より『遊民』4号落掌。小野十三郎の思ひ出を興味深く拝読しました。戦後の一時期、わが師田中克己とは帝塚山学院で同僚だった時期がありますが、戦時下を凌いだ大物左翼詩人であり、戦後詩壇で反抒情気運を扇動する一世代上の彼と先生とは、おなじく同僚でも『大阪文学』と『四季』の同人であった杉山平一先生を年少の詩友にもつことで、直接の接触の機会をお互ひが避け合ったもののやうに、私は感じてゐます。少なくとも帝塚山時代のお話を伺ふたびにその名は出るものの、田中先生は憎しみも親愛も示しにはなりませんでした。

 その世代――近代の節目を飾った明治末年〜大正初年生まれの人達による精神的所産が、詩の分野に限らずおそらく日本の知識人が示した最後の高みであったらうことは、これから迎へる百年で、嫌といふほど私達子孫は思ひ知らされることになりませう。

 このたびの雑誌では、左翼陣営にある同人の方々の筆鋒が、定番の戦前軍国主義の批判から、下って此度の大震災、ことにも原発問題に向けられてをります。次代を担ふ孫たちの命を守る、そのために食生活を守る、当たり前の話ですが、しかしそれは同時に食をとりまく環境と文化を守ることでもあって、この危機に対しては、今や右も左もないのでは、と私などは思ひます。旧世代の左翼陣営にとっても、守らなくてはならない食生活のアイデンティティに、必ず日本文化の連続性がくっついてくるがどうする、といふ、今までの批判者一辺倒からの転身が迫られてゐるやうに感じるのです。

 たとへば「非国民」なんてのはまことに聞き捨てならぬレッテル言葉ですが、軍国主義を想起するより、もはや豊かさ(物欲)の奴隷になり下がってゐる私たちを打つ「警策の言葉」として、その語気を以て投げつけるに相応しい現実の数々に、いま正に私たちは直面してゐるのではないか――そんな気がしてなりません。はしなくも原発事故や口蹄疫・鳥インフルエンザによって明らかになったのは、これまで浪費文化が隠し続けてきた恥部なのであって、このたびのTPP問題をめぐっても、私はそんな視点から賛成派の人々が示す損得勘定を注視してゐます。さきのレビューに上した『保田與重郎を知る』で何度も語られてゐたのは、米作りを基本とする日本の国体でした。天皇制を解体するのにTPPは決定的な政策である筈ですが、生活防衛を盾に共産党が右派政党と同じく反対に回ってゐることに、私は勝概を禁じえないのです。同人のみなさんが地域の先達に仰ぐ一人には、杉浦明平がある由。彼が生涯を通じて憎悪した同時代文学者こそ保田與重郎でありました。両者の和解はないまま、憎悪も祈念も、ともに将来の記録文化事業のなかで懐旧されるだけの時代がやってくるかもしれない・・・そんな未来の日本への分岐点に立たされてゐるやうな、不穏な空気が社会にたちこめて参りました。

 ここにても御礼を申し上げます。ありがとうございました。


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