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昭和初期抒情詩と江戸時代漢詩のための掲示板

453やす:2009/12/02(水) 23:09:42
散文集『巡航船』
 杉山平一先生が散文集『巡航船』を刊行され、一本の御寄贈にあづかりました。ここにても厚く御礼を申し上げます。ありがたうございました。
 今回は函の意匠が素晴らしく(「黒」冒頭で触れられてゐた黄色と鼠色の配色の美しさを初めて実感)、カバーの挿絵(聖橋とニコライ堂)も魅力的ですが、シックな本体の装幀が函にぴったりしてゐる分、カバーで隠れてしまふのが勿体無い感じもします。
 収録は小説集『ミラボー橋』を中心に、これまでの散文からの選集ですが、さきの全詩集や土曜美術社版・思潮社版の選集にも収録のなかった「機械」が新たに選ばれてゐて、恰度、國中治先生がものされた杉山平一論「『四季』の最後の詩人」の理解を助けるやうな内容となってゐます。國中さんが「機械好き」とともに杉山詩の特色として指摘された「乗客観察」を前面に出した短編「巡航船」が、そのままタイトルとなってゐることにも気がつきました。「乗客観察」なら電車の方が杉山先生に相応しい感じですが、電車よりも船の方がポエムがあると思はれたのでせうか、或は師三好達治の『測量船』も念頭に置かれのでせうか、なにか杉山先生らしい気配りに思ひをめぐらせてをりました。
 全詩集刊行以降の拾遺として、今回はもうひとつ、「かくも長き」といふエッセイも収められてゐるのですが、先生が両親以外の親族を、このやうな愛情をもって書かれたものを読んだことがありませんでしたし、また単に家族のことを書いたといふだけでなく、詩人杉山平一の文学出発の状況を、師友との交流からでなく、プライベートな側からみつめてゐる点が新鮮で、結末まで一気に引き込まれます。
 後半に収められた拾遺篇の影響か、全体に「工場経営の負債」に関る文章が多いやうにも思はれたのですが、先生御自身は、或は「詩人らしくない話題ですが」なんて卑下されるかもしれませんが、私は『わが敗走』を読んだときの感動が忘れられず、この企画を立てられた方の選別に敬服します(自選でせうか 汗)。
 さうして負債といふことなら、國中先生の論文に対する感想とともに、杉山先生のポエジーについても、私なりの感想を未だ書ききってはゐない自分にこそあるやうで、感ずるところを、いつかもう一度まとめてみたいとは思って居りながら、荏苒のびのびになって申し訳ない限りです。
 ここにても御礼とお詫びを述べさせて頂きます。ありがたうございました。

杉山平一散文集『巡航船』2009年11月編集工房ノア刊  上製函入374p. \2500

 目次

?「ミラボー橋」
 杉山平一君(三好達治) 11
  *
 父 15
 動かぬ星 42
 虚像 68
 ミラボー橋 86
 黒 91
 季節 95
 暗い手 103
 陰影 112
 月明 124
 巡航船 135
 星空 144
 あしあと 151
 春寒 154
 恋する人 165
 通信教授 185
 あとがき 193

  *『ミラボー橋』拾遺
 機械 199 (既刊単行本未収録)
 覚書 236
 目 254


?
 かくもながき 269 (既刊単行本未収録)
 顔見世 292
 母の死 308
 象 313
 私の会った人 (土曜美術社版『杉山平一詩集』収録)
  花森安治 318
  大西克禮 320
  石川武美 322
  今村太平 325
  伊東静雄 327
  立原道造 329
 また、いつか、どこかで (思潮社版『杉山平一詩集』収録)
  会う 332
  在る 335
  隠す 340
  繰返す 342
 ひとりぼっちの世界 346 (土曜美術社版『杉山平一詩集』収録)
 鳩・公園・ピアノ (思潮社版『杉山平一詩集』収録)
  鳩 351
  公園 354
  ピアノ 357
 星を見る日 (思潮社版『杉山平一詩集』収録)
  桜 361
  犬 362
  星 365
 私の大阪地図(詩) 368

 あとがき 372

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