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昭和初期抒情詩と江戸時代漢詩のための掲示板
393
:
やす
:2008/12/03(水) 10:00:12
『日本語が亡びるとき』
「いったいいつごろからだろうか。
日本に帰り、日本語で小説を書きたいと思うようになってから、あるイメージがぼんやりと形をとるようになった。それは、日本に帰れば、雄々しく天をつく木が何本もそびえ立つ深い林があり、自分はその雄々しく天をつく木のどこかの根っこの方で、ひっそり小さく書いているというイメージである。福沢諭吉、二葉亭四迷、夏目漱石、森鴎外、幸田露伴、谷崎潤一郎等々、偉そうな男の人たち──図抜けた頭脳と勉強量、さらに人一倍のユーモアとをもちあわせた、偉そうな男の人たちが周りにたくさんおり、自分はかれらの陰で、女子供にふさわしいつまらないことをちょこちょこと書いていればよいと思っていたのである。男女同権時代の落とし子としてはなんとも情けないイメージだが、自分には多くを望まず、男の人には多くを望んで当然だと思っていた。また、古い本ばかり読んでいたので、とっくに死んでしまった偉そうな男の人しか頭に思い浮かばなかった。日本に帰って、いざ書き始め、ふとあたりを見回せば、雄々しく天をつく木がそびえ立つような深い林はなかった。木らしいものがいくつか見えなくもないが、ほとんどは平たい光景が一面に広がっているだけであった。「荒れ果てた」などという詩的な形容はまったくふさわしくない、遊園地のように、すべてが小さくて騒々しい、ひたすら幼稚な光景であった。
もちろん、今、日本で広く読まれている文学を評価する人は、日本にも外国にもたくさんいるであろう。私が、日本文学の現状に、幼稚な光景を見いだしたりするのが、わからない人、そんなことを言い出すこと自体に不快を覚える人もたくさんいるであろう。実際、そういう人の方が多いかもしれない。だが、この本は、そのような人に向かって、私と同じようにものを見て下さいと訴えかける本ではない。文学も芸術であり、芸術のよしあしほど、人を納得させるのに困難なことはない。この本は、この先の日本文学そして日本語の運命を、孤独の中でひっそりと憂える人たちに向けて書かれている。そして、究極的には、今、日本語で何が書かれているかなどはどうでもよい、少なくとも日本文学が「文学」という名に値したころの日本語さえもっと読まれていたらと、絶望と諦念が錯綜するなかで、ため息まじりに思っている人たちに向けて書かれているのである。」水村美苗著『日本語が亡びるとき』(58-59p) 2008.10筑摩書房
長い前説の最後にこんなことが書いてあるのですが、問題作と呼ばれてゐるらしいです。 西岡さんのブログで教へて頂きました。近頃『島国根性 大陸根性 半島根性』といふ金文学氏の比較文化論を読んで感心したところですが、慰められて悦に入ってゐると、ここではしっかり喝が入りさうな内容です。
私なんかは、本文がなくとももうこの箇所だけでいい。感涙なんですけど(笑)、世界に興亡した各種言語について歴史分析をしながら、現今の英語(米語)圧勝状況に説き及び、いったいどんな結論が引き出されてくるのかハラハラしながら読み続けました。そして本来佳境に入るところなんでせうが、福田恆存の「印籠」が出てきて、却って人心地ついたやうな次第。このサイトも及ばずながら同様の趣旨を以て「国語の存亡」を憂いてをりますから。
ただ、終盤に水村さんは「日本の国語教育は日本近代文学を読み継がせるのを主眼を置くべきである。」と口を酸っぱくして、三度も仰言ってゐるのですが、そこだけはちょっぴりガッカリしました。「日本近代文学」ぢゃ手ぬるいですから。読み継ぐべきは「論語」「芭蕉」など古典なんだと思ひます。走り読みのくせに重箱の隅を突いて恐縮ですが、178pの「危惧は危惧に終わり」は「杞憂に終わる」が正しいかもしれません。そんなところにも、福田恆存以降の戦後世代がすでにもう、なにかを享け損ねた気配さへ感じるのです。拙サイトの文章だって、ぜんたいがひどいものです。
さきの金文学さんには『第三の母国 日本国民に告ぐ』といふ著書もあって、日本人の喪った数々の美徳のなかで、唯一顧みられてないのは「忠孝」だと仰言ってるんですね。よその国の人に江戸時代の文人の心得を教へられました。水村さんもきっと「忠孝」までいったら「なにそれ?」なんだと思ひます。私だって実はよくわからないけど太乙翁の軸にもちゃんとさう書いてある(笑)。良心を以て歴史の軋轢に苦悩する近代文学ぢゃ、「謙譲」以外の日本人の美徳は育たないと思ひますね。
(ひとり言につき、この項コメント不要です)
https://img.shitaraba.net/migrate1/6426.cogito/0000533.jpg
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