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昭和初期抒情詩と江戸時代漢詩のための掲示板

250やす:2007/04/22(日) 11:12:55
奥居頼子遺稿詩文集『和光』
 詩人増田晃が少年の頃、上野図書館に通って閲覧、密かに恋してゐたといふ夭折少女奥居頼子の遺稿詩文集『和光』(1927.7奥居彦松編 非売私家版1000部)が偶々ネット書店に出てゐた。どんな本だったのか興味があって早速注文したのはよかったが、届いた仏壇の如き壮麗な装釘と、いたいけな内容とのギャップに少なからず驚いた。
 第一勧銀の支店長だった父親が自身のコネクションを総動員して、画家から慰撫の絵画を、親戚友人からは追悼文を集め、編輯する自分の後ろ姿も一緒に、将来の嫁入費用を全額遺稿集出版につぎ込んだらこんな本になってしまった、といふ感じの本である(90,210,190p ; 23cm上製函)。収められた遺稿も断簡零墨のすべてに亘ってをり、一寸他愛無い程だが、それだけに普通は窺ひ知ることの出来ない同年輩の少女の心のうちが隅々まで晒されて、可憐な遺影とともに多感な少年の詩心に強烈な灯を点しただらうことは想像に難くない。後年詩人は詩集『白鳥』に収められた当時の所産となる初期詩篇について疎隔の意を漏らし、日本浪曼派の古代禮讃へとのめりこんでゆくことになるが、伊福部隆彦をして天才出現を叫ばしめたそれら殉情詩篇にこそ、私もまた強く惹かれる。詩人の出征中、新婚の利子氏は、伝へ聞くこの本を同じ上野図書館でアルバイトの最中に発見し「ドキドキしながら頁を繰ってみた」。詩人の戦死広報を受取るのはその夏のことである。

  「花束の思出」   奥居頼子

どれがいいかしら──
これもあれもみんな
お友達から送られた花束です
一ツのは赤いバラ
もう一ツのはヤドリ木
第三番目のはカーネーション
終のは枯れてしまいそうな
月見草! でした

赤いバラは美しき愛
ヤドリ木は接吻を乞ふ
カーネーションは
あなたの奴隷になる
月見草! 沈黙せる愛情

私がまよって居るときに
ちいさい聲が言ひました
月見草が一番安全ですよ──と
私は従ひました 小さい聲に
ちいさい聲が言った通り
私はいつまでも幸福でした

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