2006年3月22日号ニューズウィーク日本版の表紙に「ネットはテレビを殺すのか」というセンセーショナルな見出しが躍った。
その後、『テレビ CM 崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0』(翔泳社刊)や『テレビはなぜ、つまらなくなったのか―スターで綴るメディア興亡史』(日経 BP 社刊)、
『ネットがテレビを飲み込む日―Sinking of TV』(洋泉社刊)など、テレビに関するネガティブなテーマの書籍が相次いで出版されている。
実際のリサーチデータを見ても、2006年8月に発表された日経リサーチによる調査をはじめ、野村総合研究所やインフォプラントなどによるメディア利用時間調査によって、
テレビの接触時間が減少する一方、インターネットの利用時間が大幅に増加している現状が明らかとなっている。仮に、
こうした調査がネットユーザーを対象にしたものである点を差し引いて考えたとしても、ひとつの傾向として現在のメディアの盛衰を読み解くことはできるだろう。
また、米国の調査データとなるが、2006年8月に発表された米 IDC と RKM Research and Communications の共同調査では、米国の若者はテレビに
「不便」や「退屈」といった否定的なイメージをもつのに対し、インターネットは「楽しい」、「必要」など肯定的なイメージをもつ傾向が
強いということが明らかとなっている。
これらのことを踏まえると、これまでメディア界の王者として君臨してきたテレビというメディアの地位が揺らぎつつあり、それに対して生活者の
インターネットへの依存度の増加が顕在化していることが見て取れる。
しかし、ここで私は言い知れぬ違和感を覚えるのも事実だ。
テレビの人気低下はよく言われるように、果たしてインターネットが招いたものなのか。それこそ、テレビはネットによって殺されるのか。
そんな対立軸ですべてが語れるものなのだろうか、と。すでにネット上でもさまざまな議論が行われているが、今回はこの点について私なりに意見を述べてみたいと思う。