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太ちゃんの出張ブログ
24
:
太ちゃん(自作小説・恋愛四季)
:2015/03/25(水) 09:18:11 ID:97mo8iBA
(恋愛四季-夏-)
「まなぁ、こっちこっちぃ」
「あゆみちゃんまってよ〜」
二人は大学で知り合い仲良くなった。夏休みで旅行のために飛行機に乗っている。
「当機は間もなく離陸します」とアナウンスが入る。
「真菜ちゃん、着いたらなにする?」
「とりあえず食事しない?あのホテル評判いいのよ」
「そうね。腹ごしらえしてから泳ごっか(笑)」
「うん」
などと話しながら飛行機は動き出した。いよいよ離陸になる。
「・・・・」
真菜は窓の外をぼんやり見ている。彼と行きたかったな、そう思う。
「ねぇ真菜ちゃん」
「なぁに?」
「ボーイハントもしよう!」
「え」
「ひと夏の体験・・いいじゃない(笑)」
「あたしはやめとく」
「ありゃまぁ一途なのね」
「そういうんじゃないけど」
「う〜ん、かわいいわぁ♪彼氏から取っちゃお〜」とあゆみがキスする真似をした。
「ちょ、やめてよ」
「あはっ」
「あたしもこの夏は彼氏つくるぞ〜」
楽しく話しているとふいに「お飲み物は?」とスチュワーデスが声をかけてきた。
「あたしはコーヒーで」
「紅茶を頂けます?」
スチュワーデスが「かしこまりました」といいかけた時、いきなり大きな振動が起き機体が揺れた。弾みでスチュワーデスが転ぶ。機内は大騒ぎとなりパニックになりかけている。
「死ぬんだわ・・」
真菜は直感した。
どうやら機体は下降していってるようで窓から見える雲がゆっくり上に行ってる。
「死ぬかも」とだけ太一にメールした。返事はなかなか来ない。仕事中だから見てないのかもしれない。揺れは無くなったがずっと降下中でアナウンスも無い。あゆみは恐怖からか真菜の手を強く握りしめ震えている。
「当機は海に不時着します。ベルトをしっかりお締めになり衝撃に備えてください」とようやくアナウンスがあった。これで機内は完全にパニックになった。
真菜は何を思ったのかノートパソコンと携帯を繋ぎ、データを携帯に移していた。数分の時間がスローモーションのように長く感じる。
「ピー・・」
転送が終わると太一の携帯にメールでデータを送った。
「これでいいわ」
メールの後に電話したが太一は出ない。海面まであとどれくらいの時間だろう。仕方ないのでメールにする。が、何を話したらいいやら文字が打てない。
窓を覗き込むと下に海面がうっすら見えた。何か話したい、何でもいいから話したい。
「飛行機が故障したの。もう海が見えるわ。不時着するの。生きてたらあなたとずっと一緒に歩んでいきたい」と書き送る。ひとりでに涙が溢れる。ここに至って初めて太一を深く愛しているのがわかった。涙が携帯のボタンを伝い落ちる。
恐怖で再び電話するが呼び出し音だけで留守録に切り替わる。
「・・・・ありがとう・・」
他に言葉が浮かばないまま切れずにいた。自動的に電話は切れる。
窓を見たら海面がハッキリと見える。あと数分ぐらい。
最後になるであろうメールを送る。
「あたしが死んでも笑顔で会って。寂しくないようにあのメールしたから。優しい太一が大好きだから」
もっと話したくてもう一通。
「ありがとう」
恐怖から窓はもう見れない。あゆみの震えてる手を真菜も強く握る。その手に涙がゆっくり流れ落ちた。
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