[重要]
(i)再プログラミングの後期段階ではLIFは不可欠ですので、再プログラミング事象は遺伝的背景に依存しているのかも知れない。我々は主に129、C57BL6、またはそれらのF1株を使用したが、これらの遺伝的背景のすべてがLIFへの高い応答性に関連しているからである。
(ii) GFPシグナルは、同じレポーターを持っているES細胞のそれより弱いが、それは図1gに見られるように、STAP細胞の体積がES細胞よりも小さいためである(Obokata et al. Nature, 2014a)。
***FI幹細胞変換培養
1. STAP細胞クラスターがFGF4を含む96ウェルプレート中のMEFフィーダー細胞上のTS細胞<栄養芽層幹細胞>培地 (Tanaka et al, Science, 1998)に移される (Obokata, Nature, 2014b)。
[重要]
(i)TS培地は20%のFBS<ウシ胎児血清>を含むRPMI1640<ロズウェルパーク記念研究所培地 Roswell Park Memorial Institute medium>、1mMのピルビン酸ナトリウム、100μMの2-メルカプトエタノール、2mMのL-グルタミン、組換えFGF4の25 ng / ml及びヘパリンの1μg/mlで構成されている。
(ii)FBSのロットの違いは培養細胞の挙動に重大な差異をもたらしうる。
<参照>
Obokata, H. et al.Obokata. 『体細胞の多能性への刺激惹起性運命変換』Nature, 505, 641-647 (2014a)
Obokata, H. et al. 『取得多能性を持つ再プログラム細胞における双方向への発生能力』 676–680 (2014b)
Ohbo, K. et al. 『マウスの小さな星の中に満たされた思春期前の精子形成における幹細胞の同定と特徴づけ』 Dev. Biol. 258, 209–225 (2003)
Yoshimizu, T. et al. 『マウスのOct4/緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子の生殖細胞特異的発現』 Dev. Growth. Differ. 6, 675-684 (1999)
Ogawa, K., Matsui, H., Ohtsuka, S. & Niwa, H. 『マウスES細胞のクローン増殖を調節するための新しいメカニズム』 Genes Cells 9, 471–477 (2004)
Tanaka, S., Kunath, T., Hadjantonakis, A. K., Nagy, A. & Rossant, J. 『FGF4<線維芽細胞増殖因子>によるTS細胞増殖の推進』 Science 282, 2072–2075 (1998)
<関連著作物>
このプロトコルは下記論文に関連している。
『体細胞の多能性への刺激惹起性運命変換』
Haruko Obokata, Teruhiko Wakayama, Yoshiki Sasai, Koji Kojima, Martin P. Vacanti, Hitoshi Niwa, Masayuki Yamato, and Charles A. Vacanti
Journal title
Nature
Vol.
505
Issue
-7485
Pages
641 - 647
Publication date
29/01/2014
DOI:
doi:10.1038/nature12969
第三章では、これらの細胞の分化能をin vitro, in vivoの双方で調査した。ES細胞から三胚葉由来の細胞へ分化させるための培養条件を参考に、培養条件を設定し分化誘導実験を行った。その結果、sphere由来の細胞は神経・筋肉・肝実質細胞などの代表的な三胚葉由来組織細胞へ分化できることが確認された。生体内での分化能と増殖能を検討するために移植実験を行った。Sphereの細胞はPGA上に播種され、2-3日PGA(poliglycolic acid)上に細胞を接着させるために培養した後、NOD/SCIDマウスの皮下に移植した。4-6週間後に移植片を採取し、組織学的、免疫組織化学的に解析を行った。移植後直径3mmほどのカプセル化した塊を形成した。内部には上皮、神経、筋肉、管といった三胚葉由来すべての組織形成が確認された。以上の結果から、粉砕処理後にsphereを形成する細胞は、無血清条件下で培養すると、非常に幼弱なタンパク質・遺伝子を発現し、培養系、生体内双方において三胚葉系由来組織への分化能を有することが示された。