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傍流まじめな話版

1639シャンソン:2019/04/06(土) 23:44:00
    大事なことこそ、ギリギリで伝わってくる

 文化庁よると、日本全国神社にはおよそ八万社あるそうですが、その中には、
少数ですが、「神宮」と呼ばれる格式の高い神社があります。創建時から「神宮」と呼ばれたのは、
伊勢の神宮のほかに、千葉県の香取神宮と茨木県の鹿島神宮の、三社だけだそうです。

 その一社・鹿島神宮が、平成二十三(二〇一一)年の東日本大震災で被災し、御影石でできた日本一の大鳥居が倒壊しました。
これは大変に衝撃的なニュースでした。なぜなら、鹿島神宮は「日本国を守る武の神様」と言われていましたから、そこの鳥居が倒壊したと
いうことは、「ついに日本国の二千年以上に及ぶ長い歴史に終止符が打たれるのか、日本崩壊か」と、
多くの人が嘆き、心を痛めたのです。

 その大鳥居が、平成二十六(二〇一四)年に再建されたのですが、それ樹齢六百年を超える杉の巨木が使われた、木製の大鳥居でした。石の鳥居も重厚なイメージで
素晴らしかったのですが、再建された木の鳥居も、とても清々しくて素敵です。さて、問題はここからです。四本の杉の木があまりにも立派だったので、私はついお金のことが気になり、
「この鳥居、いったいいくらかかったんでしょうか?」と、地元の方に訊いてみました。するとそこから、こんなやりとりが始まりました。
「通常は、一本につき数千万、それが四本ですから、本来なら全体の材料費だけで、億をくだらなかったでしょうね」

「それはそうでしょうね。....うん?本来ならって、どういうことですか?」
「実は、鹿島神宮は、日本で初めて植林されたという記録を持つ場所なんですよ。古来、この地域は交通の便が悪かったので、もしものことが起こり、木材が必要になった時に、他の場所から運んでくるのは大変だからと、
万が一の備えとして、植林をしたというのです。今から千年以上前の話です。その木材を使ったので、材料費はゼロなんですよ。もちろん工場と神宮の間の輸送費や、鳥居の製作費用はかかりましたけどね」

 私は魂が震えました!未来に生きる私たちのことを思い、千年に一度起きるかどうかわからない災害のために、植林をしてくれていた先人たちがいた!
さらに、彼らの思いが語り継がれていたことが素晴らしい、と。
 もし、この伝承が途中で途切れてしまっていたら、ご神域の木を伐り倒して鳥居にすることを、私たちは畏れ多いと感じ、躊躇し、きっとできなかっただろうと思います。先人たちの思いが継承されてきたからこそ、大鳥居の再建は、
これほど迅速に果たされたのです。

 日本国を守る武の神様に託された、先人たちの思いを私たちに思い起こさせ、さらなる未来に向けて、それを確かなものにするためだったのかもしれません。
きっと、この伝承する力が、文化の本質なんでしょうね。歴史を振り返ると、大事なことこそ、ギリギリで伝わっているのがわかります。まるで綱渡りなのです。「古今伝授」という和歌の極意が口伝で伝えられていく過程も、まさに綱渡りでしたし、
「松阪の一夜」と呼ばれ、日本文化史に燦然と輝く江戸時代の国学者・賀茂馬淵と本居宣長の出会いも、まさしく一期一会。
 
 逆に言うと、ギリギリまで追い詰められていないことというのは、そんな大切な、本質的なものではないのではないかと思ってしまうぐらい、大切なものこそ、ギリギリの段階で伝わってきているのです。

    『幸せの神様に愛される生き方』 白駒妃登美 著


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