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663：シャンソン：2016/06/05(日) 22:27:23: 　　　「１年をふりかえって」　雄勝中学校・伊藤裕汰

　「いってきます。ただいま」と言うと「いってらっしゃい。おかえりなさい」と返してくれる家族がいる。
「こんにちは」と言うと「こんにちは」と返してくれる町の人がいる。
　学校へ行って、勉強をして、友だちと遊んで、部活をして、家に帰って、ご飯を食べて、テレビを観て、お風呂に入って、寝て....

そんな平凡な毎日が続くと思っていました。雄勝町、そこは自然豊かでとても美しい町でした。
けれども３月１１日、雄勝町は人々の涙とともに消えました。それは突然すぎる出来事でした。
たくさんの人々が犠牲になり、「ただいま」と帰る家も失ってしまいました。

　家が流されて、メキメキという音が僕には悲鳴をあげているように聞こえました。悲鳴をあげて流されていく
雄勝町を見て、ただ立ち尽くすことしかできませんでした。その時僕は、悔しさと悲しみの二つの感情しかありませんでした。
それから避難所でたくさんの人から支援をしてもらい、この１年間を乗り切ることができました。

　それは家族や友人、先生方や支えてくれた人たちがいたからだと思います。
一緒につらい経験をして、一緒に楽しい思い出をつくって、たくさんのものを失ったけれどたくさんの人と出会い、たくさんのことを学びました。
そのなかでも、太鼓を通してたくさんの人に感謝の気持ちを伝えることができました。

　その思いはたくさんの人に届いたと思います。
自分も太鼓を通して勇気や希望をもらいました。仲間とひとつのものに取り組み、ひとつのものを奏でる。
僕はみんなで太鼓を叩いているときが一番楽しいです。

　僕がこの一年を振り返って感じたことは、一人ではけっしてつらいことは乗りこえられないということです。
たくさんの人と励まし合い、力を合わせれば必ず乗りこえられると僕は思います。
この１年間で学んだことは将来の大きな希望になると思います。

　そのことを忘れずに、これからも仲間を大切にして学校生活を送っていきたいと思っています。
　（そして原稿用紙の余白に、こんなうれしい一文が）

校長先生、最後に僕からお願いがあります。
それは僕たちと過ごした日々を忘れないでください。つらい時や苦しい時は、僕たちと過ごした日々を思い出してください。
僕たちはいつまでも家族です。たまには雄勝中学校に来てくださいね。その時はまた、みんなで思い出話に花を咲かせましょうね。
その日までさようなら。そして１年間ありがとうございました。

　『奇跡の中学校　３・１１を生きるエネルギーに変えた生徒と先生の物語』　佐藤淳一　元・石巻市立雄勝中学校長

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