「うのはな」さん　専用掲示板

5192：シャンソン：2019/05/06(月) 16:26:37: 　　　　ケチャップ少年とおじいさん

　連休のある日、我が家の６５センチテレビは、甥たちの試合DVDに占拠され、
　おまけに鯖寿司に見向きもせず焼肉大会をやりだした。
　
　こんな男子校の部活ミーティングみたいな場所はいやだと思って
　自転車に乗って外へ出ることにした。行き先も決めずひたすら
　あちこちを走る。途中公園のベンチで休憩していると、目の前の木の上に
　三人の少年が黒いシャツを着て、木の上でコアラみたいにつかまっている。

　そのうち、一人ずつ、木の上から飛び降りる。
　そんなことをしたら、着地の衝撃で膝を傷めないかとドキドキした。
　一人の黒シャツ少年が地面にうつぶせになったまま、なにかに耐えているようだった。

「大丈夫？地面に寝ていたら蟻に刺されるわよ」「大丈夫」
　隣のベンチでは、おじいさんが昼寝をしている。
　そのとき、赤いシャツを着た少年がやってきて、おじいさんの隣に座り
　口を片手でおおい、泣いてるようだった。鼻血がでたのかなと思うと
　口のまわりが血まみれで特大ナポリタンの皿に顔をおしつけたような状態になっていた。

　おじいさんは、ゆっくりと起き上がり、どこかへ出かけて行った。
　黒シャツのターザン少年たちはたちあがり、絶対にママに言う！
　●●泣いてるのか？と赤シャツ少年のまわりに集まる。

　「一度家に帰って水で流したほうがいいよ」「家は遠い。●●町だから」
　どうやら、赤シャツのケチャップ少年だけは遠方から来ているらしい。
　こんなところで医療シアターを見るのは困ったな。
　でも少年から「パパが家を出ていったのは、僕が悪いことをしたからか？」
　と言われるドラマシアターよりましである。

　最高幹部がいうには、世界の指導部はギスギスしているそうです。
　といっても、少年の疑問は解決しないだろう。
　そのうちおじいさんが戻って来て、どこかでウェットティッシュを
　買いにいっていたらしい。

　そのころはケチャップ少年はみんなとサッカーに夢中になっている。
　しかし、口のまわりがケチャップ状態の少年が緑色のボールを追いかけている姿は
　圧巻である。ゾンビが獲物を追って走っているようだ。

　おじいさんは、少年たちのあとを追って、やっと追いつき、
　そこから新品のウェットティッシュの蓋を開けるのに時間がかかっている。
　しばらくして、ケッチャプ少年の叫び声が聞こえてきた。
　口のまわりをふき取ってもらっているのだろう。

　ふと、子どもから高齢者まで動いていると痛みを忘れるが
　制止すると意識が痛みにフォーカスされるといっていた医者の話を思い出した。
　心の傷もそんなものかもしれない。

　ターザン少年は、このことを絶対にママに報告してほしいと思う。

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